環境に関する教育
深江キャンパス内の港における海洋・気象観測実習
深江キャンパスは大学院海事科学研究科/海事科学部の本拠地であり、国立大学で唯一、港を持つキャンパスです。ここには、練習船「深江丸」を始め多くの船舶が係留されており、また海事・海洋関連の実習やクラブ活動などが活発に行われています。
この、キャンパス内に港があるという利点を生かして、「海洋観測」をテーマにしたゼミを開講しています。これは海事科学部2年生通年の必修科目として開講している「総合科目2」で、教員が掲げたテーマに沿って行う少人数制のゼミです。「海洋観測」ゼミでは深江キャンパスの港で、海水の流れ、水温や塩分などの物理項目、溶存酸素濃度や栄養塩濃度などの化学項目、さらに植物プランクトン濃度や濁度などの生物項目の観測を、一般気象要素と共に毎月1回実施しています。そして観測データを一時処理して各項目の鉛直分布図や水平分布図、また季節変動図を描き、これを元に港の環境について考察を行います。つまりゼミ生は、海洋環境研究に必要な観測〜データ解析〜考察という一連の基本的なプロセスを、大学2年生で体験・習得できるのです。ゼミ開始時点で、ゼミ生は海洋学や気象学についての知識はほとんどありません。また観測には様々な専門機器を用いますが、どれも初めて使う観測機器です。さらにデータ処理に用いるコンピュータ・ソフトウェアーの使い方も知らない所から始まります。しかし1年間繰り返し作業を行い、併せて海洋学の理論的な勉強を行うことで、海洋環境研究の基礎を身につけていきます。ゼミの様子は、毎週交替でブログで紹介していますので、是非ご覧下さい( http://blog.canpan.info/airsea-obs/ )。
この他にも、3年生の実験で「気象・海象観測」を実施しています。また学外教育にも港を利用しています。例えば、大阪府立千里高等学校と共にサイエンス・パートナーシップ・プログラムとして毎年実施している2時間程度の模擬ゼミでは、水温と塩分の鉛直分布測定を行い、これを元に密度を計算して、これらを作図すると共に海水の安定度について考察を行う、という内容を実施しています。理科教育に重点を置く高校にとって、科学への興味を促進するいい機会として好評を得ています。
深江キャンパスの港は、春先から晩秋まで全面で赤潮が発生しますし、外から流入したゴミの溜まり場になるなど、決してきれいとは言えません。しかし、この様な状況を日常の中に港があることで目の当たりにすることはある意味、生きた環境教育であると言えます。

