実験経済学入門

昔経済学者は「需要と供給」という言葉を繰り返すオウムだと言われた。需要と供給の関係、あるいは需要曲線と供給曲線の基礎理論は中学でも教えられているので、大学生は当然知っていることとされている。だがこの理論は実験で確かめられるのだろうか。もし確かめられるのであれば、どうすればよいのか。本書では、需要と供給の関係の検証手法である「ダブルオークション」の実験の仕方を、筆者の経験を踏まえてできるだけ丁寧に解説したつもりである。需要と供給の関係で商品の価格が決まることが、どのようなときにどのような意味で「良い」とされるのか、あるいはどのようなときにどのような意味で「良くない」とされるのかも理論に基づいて書かれているが、理論より実験の方法を知りたい読者は飛ばし読みして頂いて構わない。本書ではまた2015年の大学入試センター試験で「現代社会」と「政治経済」の2科目で需要曲線と供給曲線の基礎理論が出題されたことを例に挙げ、大学教員の読者に対し、経済学の授業中にダブルオークションの実験を実施することで学生に需要と供給の世界を体験させることも奨励している。

 

目次

序章 なぜ「理論ある実験」か
1 完全競争の基礎理論:経済実験の原点
1.1 完全競争市場とは
1.2 部分均衡モデルと余剰分析:展望と基本概念
1.3 部分均衡モデルと余剰分析:2財モデルの構築
附録 一般均衡モデルの中での部分均衡モデル(市場開始前)
2 完全競争の部分均衡
2.1 資産,市場,価格
2.2 価格決定のしくみ
2.3 完全競争均衡
附録 一般均衡モデルの中での部分均衡モデル(市場開始後)
3 ダブルオークションによる実験
3.1 「神の見えざる手」をめぐって
3.2 ダブルオークションの解説
3.3 実験の手順
3.4 実験経済学を生んだ2つの実験
附録 インストラクションと記録用紙
4 経済モデルと実験結果
4.1 実験の背景
4.2 結果発表
4.3 実験のおきて
5 ダブルオークションによる再実験
5.1 実験の改造:スケーリング
5.2 再実験の結果発表
5.3 部分均衡モデルを少し越えて
6 外部性:完全競争市場の中で
6.1 村のおきて
6.2 悪影響と好影響
6.3 外部性とは
6.4 外部性経済の競争均衡:非課税の場合
7 外部性:調整過程とピグー税
7.1 マラソンと相撲
7.2 企業間の外部性
7.3 外部性経済の競争均衡の安定性
7.4 ピグー税によるパレート最適達成
附録 ポイント1,2,3,4の証明
8 外部性:コースの定理とその向う側
8.1 定理の鉄人
8.2 コースの定理とピグー税
8.3 実験結果の紹介
8.4 おわりに
終章 経済実験を教育現場に

 

(経済経営研究所・教授 下村 研一)