『評価のモダリティ―現代日本語における記述的研究―』

『評価のモダリティ―現代日本語における記述的研究―』

本書が取り上げるのは、たとえば、次のような形式である。

A 「あ、お米がない。買いに行かなきゃ

B 「こんな雨の中を出かけることもないんじゃない? 
今夜はパンを食べてもいいし」

A 「いや、買いに行ったほうがいいよ。 明日も困るから」

B 「昨日のうちに買っておけばよかったね」

本書では、これらの形式を、ある事態が実現することに対する、 必要だ、必要でない、許容される、許容されないといった「評価」を表していると考える。 そして、この「評価」を、モダリティ(文の述べ方についての話し手の態度を表し分ける文法カテゴリー)の一種として「評価のモダリティ」と呼ぶ。

事態には、自分の行為、他人の行為、それ以外の出来事など、 さまざまなものがある。人は、自分が行おうとする行為について、それが必要かどうかを考える。 また、自分の行為が他人や世間から許容されるかどうかを考える。 自分の行為について満足したり、後悔したりする。 また、他人に対して行為の必要性を述べたり、他人の行為に不満をもったりする。 まだ起こっていない出来事についてその実現を望んだり、危ぶんだりする。 そのような心の働きを事態に対する「評価」と呼ぶならば、人は、 生きている限り絶え間なく事態を「評価」し続けている存在だと言えるだろう。評価のモダリティは、言語表現において、そのように重要な意味を担うものだと言える。

本書は、評価のモダリティ形式の意味・用法を詳細に記述し、 その体系を明らかにすることと、 モダリティの体系における評価のモダリティの位置づけを提示することを目指すものである。

(留学生センター准教授・高梨信乃)