『リーダーシップ開発ハンドブック』

『リーダーシップ開発ハンドブック』

リーダーシップの育成に関心をもっておられる経営者の方々、経営幹部向けのリーダーシップ開発プログラムに関与しておられる人事・人材開発の方々、ご自分が研修等のインストラクターとしてリーダーシップ育成の一翼を担っている方々の間で、CCL (センター・フォー・クリエイティブ・リーダーシップ) の名前はだいぶ知れ渡ったのではないでしょうか。本書は、リーダーシップ開発をめぐるCCLの成果の集大成のひとつです。

『経験からの教訓』 (Lessons of Experiences, Free Press, 1988 邦訳は残念ながらまだ無し) や、『ハイ・フライヤー−−次世代リーダーの育成法』 (プレジデント社、2002年、原著は、1998年) などで知られるとおり、リーダーシップを育むには、リーダーシップを発揮すべき現場での直接的な経験や薫陶が大事だというのが、CCL (やCCLからスピンオフして生まれたロミンガー社) が長く貫いてきた立場です。CCLのプログラムは、360度フィードバックを含め、木目の細かいフィードバックで名高い。そのフラッグシップ・プログラム (よく知られているプログラム) であるLDP (Leadership Development Program) は、一度日本版が作成されたが、定着はしませんでした。他方で、注目すべきことに、「ルッキンググラス・エクスペリエンス」というリーダーシップにかかわるシミュレーションとフィードバックのプログラムは、その日本版が、日本能率協会マネジメントセンターで開発され、受講生の数を伸ばしていると聞きます。日本版ルッキング・グラスについては、わたしの研究室の大学院生も、かなりの人数、受講させてもらいました (わたしも、その簡易バージョンを、四半世紀前の昔のことですが、MITの組織行動の講義でTA (Teaching Assistant) をしているときに、経験したことがあります)。

リーダーシップの理論そのものでなく、リーダーシップの育成に関与してきたのが、CCLの特徴です。リーダーシップの体系的な育成やそのためのプログラム開発、また、 (いくら、研修等でそのようなプログラムが開発されても) 実際の仕事の場での経験や薫陶がリーダーシップを涵養 (かんよう) するうえで極めて大事であることを強調する一連の研究蓄積を通じて、CCLの存在感は、大きいとわたしは判断しています。

そのCCLには、リーダーシップ、フィードバック、コーチング等について、実に豊かな出版物がありますが、その大半は、残念ながら、まだ日本語で読める状態にはなっていない状態のままです。

かねてから、CCLの『リーダーシップ開発ハンドブック (Handbook of Leadership Development) 』の訳書があればいいなと願っていたのだが、リクルート・マネジメントソリューションズの古野庸一さんの支援のもと、嶋村伸明さんのご尽力のおかげで、460頁を超す大著の邦訳が出ました。チームで翻訳作業を開始しましたが、最後まであきらめずに訳書を仕上げてくれた嶋村さんの健闘をこの場でもあらためて称えさせていただき、かつ、この書籍が、経営者、人材開発部門の専門家、リーダーシップ育成の講師、若いときからリーダーシップを磨きたいと思っている人びとに、広く読まれることを心より希 (ねが) っております。

人材開発部門でリーダーシップ開発に携わるプロの方には、大部ではあっても通読することをしていただきたいものです。他方で、自らリーダーシップの身につけたり、自分の下にいる若手によい経験と薫陶をさせたりしたいと思っておられるライン・マネジャーには、3部構成になっているが、最も関心のある章から、お読みいただければとありがたいことです。

(経営学研究科教授・金井壽宏)