エコノリーガル・スタディーズのすすめ ―社会を見通す法学と経済学の複眼思考

神戸大学法学部・経済学部は、共同企画カリキュラムとして「法経連携専門教育(エコノリーガル・スタディーズ)プログラム」を実施しています。法と経済とが密接にかかわり合う問題が数多く発生しつつある現代社会において,その適切な解決のために、法学・経済学両方の知識と発想を備えた学生を育てようとするのがこのプログラムであり、法学と経済学の問題関心・思考法・分析手法や成果の共通点と相違点をともに理解し、暗黙の前提とされている価値判断の差違にまで立ち戻って、2つの領域・思考を複眼的かつ総合的に行き来することで、複雑な現代社会を見通して問題解決に役立てようとする学問たることを目指しています。

そのような力・視点を学生が身に着けるのは、もちろん容易ではありません(実のところ,教員にとっても、です)。そこで、小人数形式中心の各授業においては法学者と経済学者が一緒に指導にあたり、共通のテーマをめぐって法学の視点と経済学の視点の双方から講義を行い、また,学生の作成する論文に対しても法学の観点と経済学の観点から助言を行っています。それを通じて、学生が――そしてまた教育にあたる研究者自身も――法学と経済学両方の思考法を身に着けることができると考えたわけです。

特に本プログラムの基幹科目の1つである「法経総合概論」という授業では、毎回2〜3名の法学者と経済学者がともに教壇に立ち、学生の前でそれぞれの考え方を示しながらあたかも漫才のように交互にやり取りをする、というスタイルをとっています。授業を通じて、さまざまな問題について法学と経済学の共通点と相違点を提示するとともに、相違点がどこから来るのかを受講生に対してヴィヴィッドに表現するためです。そのような試みの成果をまとめて、広く社会と共有しようとしているのがこの『エコノリーガル・スタディーズのすすめ』であり、したがって本書では全ての章が共著、それも1つの章を除いてはいずれも神大のスタッフを中心としての法学者と経済学者の共著というスタイルをとっています。まさに「神大人の本」と呼んでいただくにふさわしい一冊だろうと自負しています。

全国的に、いや、世界的に見ても先端的であろう神大の取り組みを示す一書として、皆様の手に取っていただければ幸いです(詳細な目次については有斐閣サイトを、また、取り組みの詳細については――この小文と若干重なりますが――有斐閣 書斎の窓を、それぞれご覧ください)。

(社会科学系教育研究府・府長 柳川隆/法学研究科・教授 高橋裕)