概説コーパス言語学―手法・理論・実践

本書は、コーパス言語学の概説書として定評の高いTony McEnery & Andrew Hardie著 Corpus Linguistics: Method, Theory, and Practice (Cambridge University Press,2012)の邦訳書である。

コーパス (電子化された大規模言語データベース) の分析を基盤とするコーパス言語学は、狭義の言語学はもちろん、ことばに関わる幅広い研究領域に大きな影響を及ぼすようになっているが、一方、その目指すべき方向や研究の射程については必ずしも意見の一致を見ていないのが実情である。

原著は,コーパス言語学の独自性を強調し、それ自身を一種の理論とみなす「新Firth派」と、コーパス言語学を言語分析の技術・手法とみなす「非新Firth派」をあえて対立的にとらえることで、コーパス言語学の本質とそのあるべき方向性を論じている。著者の主張は明快かつ刺激的で、コーパス言語学の将来のさらなる発展の可能性について説得力ある議論が展開されている。

原著は、社会言語学・認知言語学・対照言語学・文体論など、20世紀以降の各種の言語学派とコーパス言語学の関係を詳細に記述しており、コーパス言語学の入門書のみならず、広く言語学一般の入門書としてもすぐれたものである。
本書は全9章構成 (412ページ) で、第1章:コーパス言語学とはなにか、第2章:コーパスデータの利用と分析、第3章:ウェブの使用における法と倫理、第4章:英語コーパス言語学、第5章:共時的・通時的多様性に対するコーパス準拠型研究、第6章:新Firth派コーパス言語学、第7章:コーパス研究手法と機能主義言語学、第8章:コーパス言語学、心理言語学、機能主義言語学の接近、第9章:結論、の各章からなる。巻末には用語集と詳細な参考文献集が用意されている。

記述的言語研究に興味を持つ多くの皆さんにお読みいただければ幸いである。

(国際コミュニケーションセンター/国際文化学研究科 教授・石川慎一郎)