人生を変えるMBA―「神戸方式」で学ぶ最先端の経営学―

本書は、神戸大学MBAプログラム創設25周年を記念して編集、出版されたものです。神戸大学MBAは我が国のMBAの草分けとも言える存在で1989年に創設され、2003年に専門職大学院に移行しました。1980年代の米国のMBA留学ブームの後、日本の産業界の実情に合った、日本のビジネスパーソンのための教育を、設立者自身たちが考え、実践してきたその独自の教育方式は「神戸方式」と呼ばれ、全国的に高く評価されています。
神戸大学MBAは「働きながら学ぶ」「研究に基礎をおく教育」「プロジェクト方式」という教育の基本方針により特徴づけられています。これら3つの柱により、ビジネスの最前線にいて、現実に直面する実務の問題をより普遍的な経営上の問題へと捉え直すこと、速習的なスキルではなく、真に応用力のある問題解決能力を育成すること、それらを基に世界に通用するビジネスリーダーを育てることを目指しています。
本書は3部構成となっており、第1部と2部は教授陣による執筆で、神戸大学MBAの教育方針と内容についての紹介およびエッセイに始まり、教育の基礎となる、最先端の経営学の解説論文集の第2部へと続き、さらに第3部では、卒業生インタビューや現役生によるプロジェクト研究の内容が詳細に紹介されています。インタビュー中に語られている言葉、「MBAとは判断に迷うときや現状の課題に直面した際に、戻る原点のようなもの」に凝縮されるように、MBA生がここで何を学び、何を得てきたかを多面的に執筆することにより、まさにMBAが「人生を変える」ことを示す書籍となっています。自分の視座を高めたいビジネスパーソンに読んでほしい、また教育と社会とのつながりを考える人たちにも手にとってほしいと願っています。
目次
- 第Ⅰ部 日本型MBAプログラム
- 第1章 日本型MBA教育と「神戸方式」[黄 磷]
- 第2章 神戸大学MBAの設計思想[小川 進]
- 第3章 「働きながら学ぶ」意義と効用[加護野忠男]
- 第4章 MBAで考えることを学ぶ[高嶋克義]
- 第5章 経営トップを輩出するためのMBAプログラム[三品和広]
- 第6章 大学における経営のグローバル人材養成[松尾博文]
- 第Ⅱ部 MBAプログラムで学ぶ最先端の経営学
- 第7章 戦略コントロールとバランスト・スコアカード[梶原武久]
- 第8章 人材マネジメント型企業変革リーダー[平野光俊]
- 第9章 コミットメント経営[鈴木竜太]
- 第10章 「社会の枠組み」のなかでのイノベーション[松嶋 登]
- 第11章 サービス・イノベーション[伊藤宗彦]
- 第12章 グローバル市場で成功するための六つの視点[黄 磷]
- 第13章 ステイクホルダー理論をめぐる諸論点[堀口真司]
- 第14章 国際会計基準適用会社の事例分析[音川和久]
- 第15章 航空産業分析─―日本の新規航空会社の競争パターンと参入効果[村上英樹]
- 第16章 公的・非営利組織のマネジメント・コントロールシステム[松尾貴巳]
- 第Ⅲ部 MBAでの学習の社会への還元
- 第17章 神戸大学MBAの実際[黄 磷]
- 第18章 神戸大学MBAの原点[田村正紀]
- Column 神戸大学経営学部のルーツ[加護野忠男]
- 第19章 MBAで論文をいかに書くか[國部克彦]
- 第20章 経営とMBA──戻る原点と進化[株式会社フェリシモ代表取締役社長 矢崎和彦×インタビュアー 南知惠子]
- 第21章 プロフェッショナルの仕事術[神戸大学MBA卒業生]
- 第22章 ケースプロジェクトを振り返って[神戸大学MBA在学生]
- 第23章 テーマプロジェクトを振り返って[神戸大学MBA在学生]
- 第24章 修了生のネットワークの重要性[MBA Cafe(神戸大学MBA同窓会組組織理事]
- 第25章 現代経営学研究所(RIAM)について[三矢 裕]
(経営学研究科・教授 南知惠子)