ウイルスは生きている

ウイルスというと、インフルエンザウイルスやエボラウイルス等、人の病原体のイメージが強いですが、ウイルスの中には宿主と共生しているものも存在します。実際、私たちの遺伝子の中にはウイルスやその関連因子に由来する配列が多数存在しており、それらを利用して、私たちはヒトへと進化してきたのです。

今回、上梓した拙著『ウイルスは生きている』では、そういった災厄を招くばかりではない「役に立つ」ウイルス達や、近年明らかになった驚くようなウイルス達の様々な姿を紹介しています。
 そんなウイルス達は、生命にとって一体、どのような存在なのか?
 それを考えて行くことで、古くからある「ウイルスは生物か、無生物か」という命題にもアプローチできたらと思っています。

本書は、生物系の学生向けに書かれたものですが、読み物としての要素が強く、文系の学生さんにも楽しんで頂けるのではないかと思います。

 

目次

まえがき
序章 「モンスター」の憂い
一九一八年の「モンスター」
七十二歳の情熱
モンスターの正体とオーストラリアのウサギ
第1章 生命を持った感染性の液体
マルティヌス・ベイエリンク─枠を突き抜けた純度を持つ男
生命を持った感染性の液体
結晶化する「生命体?」
第2章 丸刈りのパラドクス
丸刈りのパラドクス
細胞とウイルス
ウイルスの基本的な構造
ウイルスのゲノム核酸
ウイルスの境界領域その1─転移因子
ウイルスの境界領域その2─キャプシドを持たないウイルス
第3章 宿主と共生するウイルスたち
エイリアン
ポリドナウイルス
不思議に満ちたポリドナウイルスの起源
聖アントニウスの火
第4章 伽藍とバザール
伽藍とバザール
胎盤形成
V(D)J再構成
遺伝子制御モジュール
空飛び、海泳ぐ遺伝子
遺伝子を運ぶ「オルガネラ」?
第5章 ウイルスから生命を考える
手足のイドラ
「移ろいゆく現象」としての生命
ウイルスと代謝
生命の鼓動
終章 新しいウイルス観と生命の輪
開かれた「パンドラ」の箱
生物に限りなく近い巨大ウイルスたち
そして生命の輪

 

(農学研究科・教授 中屋敷 均)