光り輝く瀬戸内の海
自然溢れる六甲の山並み
異国情緒豊かな神戸の街
柔らかな日差しが降り注ぐ4つの感動キャンパス
「学理と実際の調和」の理念
「真摯・自由・協同」の精神

新入生の皆さん、神戸大学へようこそ、そして、ご入学、誠におめでとうございます。動画配信で、ご視聴いただいております、保護者の皆様、ならびに、ご家族の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。神戸大学長として、全構成員とともに、皆様をお迎えすることができ、大変嬉しく思っております。この二年以上にわたり、新型コロナウイルス感染の流行により、通常とは違う環境で、苦難と緊張感を伴いながら受験勉強に励まれ、厳しい入学試験を乗り越えて神戸大学への入学の日を、迎えられたことに対しまして、改めて心より敬意を表します。ただ、残念ながら、新型コロナウイルス感染の、収束の兆しが、いまだ見えず、昨年と同様に学生の方々のみの式場参加とし、感染拡大防止を徹底して、入学式を挙行することになりましたことにご理解を賜りたく存じます

この春、神戸大学には、学部に2,615名、大学院博士課程の前期課程に1,201名、後期課程に300名、法科大学院と経営学専門職学位課程に139名、編入・転入学生として121名の皆さんが、入学されました。また、新型コロナ感染が流行している中ではありますが、海外からも222名、の入学者がありました。

さて、皆さんが入学された神戸大学は、明治35年(1902年)に創立され、本年、創立120周年を迎える歴史と伝統のある、素晴らしい総合研究大学です。開学以来、「学理と実際の調和」という理念を掲げ、普遍的価値を有する「知」を創造するとともに、人間性豊かな指導的人材を養成することを、使命としてきました。

これまでに、本学における、多くの卒業生や教員が、教育、研究、社会貢献などの分野で活躍され、ノーベル生理学医学賞をはじめ数多くの輝かしい業績を残してこられています。また、世界に貢献する次世代の優秀な研究者や教育者が、数多く育成されてきていることは、本学にとって大きな誇りであります。さらに、本学は、企業、行政、医療などにおける、要職にも多くの人材を輩出し、それぞれが多岐にわたる分野で活躍され、社会に多大なる貢献をされてきておられます。

本日も、神戸大学法学部のご卒業で、長年、神戸新聞社でご活躍され、代表取締役社長、会長を歴任されたあと、現在、神戸新聞社相談役、公益社団法人ひょうご観光本部、理事長でいらっしゃいます高士薫(たかしかおる)さまに 『きら星の神大卒業生 あなたも』という題目で、ご講演いただけることになっておりますので、楽しみにしてお待ちください。

本学は、10の学部と15の大学院、法学と経営学の二つの専門職大学院、経済経営研究所、医学部附属病院、さらに多くの教育研究に関わるセンター群と、複数の図書館で、構成されています。

学術領域としては、人文・人間科学系、社会科学系、自然科学系、および生命・医学系の4つに分かれています。そして、キャンパスは、六甲台地区に、人文・人間科学系、社会科学系、および自然科学系の各部局、楠地区に医学研究科、医学部、および附属病院、名谷地区に保健学研究科、そして深江地区には、日本でも数少ない海を科学する海洋政策科学部、海事科学研究科があります。それぞれの領域において優れた特色と強みを持ち、密な連携をしながら、新規性の高い独創的、学際的な教育・研究が行われており、国際的にも高い評価を得ています。また、ポートアイランド地区にも、様々な研究拠点があり、「統合研究拠点」では、バイオ工学をはじめとした先端的な研究や、西隣のスーパーコンピュータ「富岳」とも連携し、コロナウイルスの飛沫エアロゾル拡散モデル構築に関する計算科学等の最先端の研究を推進しています。さらに、医学部附属「国際がん医療・研究センター」では、「神戸医療産業都市」と連携して、神戸未来医療構想を掲げ、様々な先進的医療・医療機器にかかわる研究・開発を進めてきています。

今後は、さらに多様な分野の枠を超えた異分野共創型の、先端的卓越研究教育グローバル拠点として、新しい価値を創造し、応用・具現化できる『知』を創る、有能な『人材』を創る、秀でた『環境』を創るの「3創」を実現し、世界トップクラスの、研究総合大学を目指して、社会に貢献して参ります。

神戸は、古くから世界に開かれた国際色豊かな港町であり、開港後150年以上の歴史があります。阪神大震災からすでに27年がたちましたが、今、神戸のウォーターフロントや三宮駅周辺では、新たなまちづくりが始まっており、皆さんにとってワクワクするようなお洒落な素晴らしい国際都市神戸として、さらに発展していくものと思っています。本学は、このような国際色豊かな神戸に位置し、創立当初から、ボーダーレスに国際社会に対応できるよう研究教育において、国際展開力の強化に取り組むとともに、多様な学生が、学びやすく、すべての人に優しく、そしてジェンダー平等を推進する、社会に開かれた研究教育環境を目指してグローバル&インクルーシブキャンパスを整備してきています。すでに、海外の約180の大学・研究機関との連携協定を結び、共同研究・教育を推進し、国際的な交流を深めています。また、皆さんが、国際的な交流を積極的に図れるよう、欧米、アジア、およびオセアニアに、海外オフィスを設立するとともに、海外同窓会などの海外交流ネットワークを、13カ国にわたって構築しています。つい最近までは、コロナ感染のため海外留学や留学生の受け入れに制限がありましたが、ようやく学生の海外派遣や海外からの留学生の受け入れが進み始めており、キャンパスにもグローバルな活気が戻ってくると思っています。

昨今、世界中で、サイバー空間での情報共有や、デジタル化が進んでいくなか、皆さんが今後、学んでいかれるあらゆる学問分野においても、デジタルリテラシーの涵養が重要になってきています。本学においては、データサイエンス、計算社会科学に関する教育、研究基盤を強化し、今回、入学された皆さんから全員にデータサイエンス教育を施すとともに、AI、IT、情報科学等の技術開発に向けた先端研究・教育を推進して、デジタル社会で活躍できる多様な人材を、育成して参ります。今、世界中で、若い世代の方々がIT・情報・デジタル技術を活かした起業により、社会の構造を変えるようなイノベーションを創出していますが、これからの時代は、情報科学・分析科学に基づく知恵や技術を様々な分野に活かし、新しい価値を見つけ、それを社会実装していくデザイン能力が必要でしょう。大学としてもVスクールにおける価値創造教育、アントレプレナーシップセンターでの起業教育体制などを充実させ、柔軟性豊かな若い皆さんが多様な分野で潜在的な自由な発想を生み出し、それを具現化し、社会に挑戦していく創造的実践力を涵養していきたいと思います。

今回のコロナ感染危機を契機に、大学における教育のデジタル化が急速に進んできましたが、ポストコロナ時代に向けて、我々は、ネット世代の皆さん、デジタルネイティブの皆さんのニーズに合った教育体制、すなわち対面、オンライン、オンデマンド授業を組み合わせたハイブリッド教育や、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)を利用した次世代の教育システムの導入により、より一層、質の高い、柔軟なデジタル教育に向けての取り組みを進めており、新たな魅力的な学習・実習機会を提供していきたいと思っています。そして、コミュニティ形成を基盤とした従来の対面教育と、バーチャルなデジタル教育、それぞれの価値をしっかり考えながら、時空間に制約のない、すなわち時空を超える理想的なハイブリッドキャンパスを目指して、大学におけるデジタル教育改革に、取り組んで参ります。さらに、大学として皆さんの就学環境が、効果的な、かつ利便性の高い快適なものになるよう、そして活動範囲が容易に拡大し、世界がより身近なものとなるよう、グローバルな教育研究環境を整え、教育の質を保証し、皆さんとともに歩んで参りたいと思います。

さて、皆さんは、これからの学生生活に期待や夢を膨らませていることと思いますが、すべての物事は、いつ何時も順風満帆に進んでいくものではありません。そのために、是非、胆力を鍛えてください。胆力の胆は、心の強さ、勇気という意味です。学生生活や勉学で、何か問題がおきても、物事に動じない精神力、何かを失敗して焦ってパニックになるような場面でも冷静に分析し、どうするべきかをじっくり考えて判断し、行動することができる精神力、失敗を恐れずに何度も取り組んでいくことができる勇気と忍耐力を鍛えてください。

また、予測が難しいこれからの将来に対して自ら備えをし、メガトレンドを読み取り、未来を創っていける鋭い感性と、自主的、創造的な思考能力を高めてください。そのためには、学生生活において、できる限り、様々な環境に身を置き、活動し、自分とは異なる価値観を持った人々と出会い、なじみのない考え方や行動に触れながら積極的に交流することが大切であると思います。人は、多様な背景や経験を持つ人々の集団のなかで、様々な人と交流することにより、成長していけるものであると思っています。授業以外においても、課外活動や地域での社会活動などに積極的に取り組み、異なる視点を持つ人との繋がりを作り、異なるレンズを通して物を見たり、幅広い視点から様々なアプローチをしたりできるよう、自分の頭の引き出しを増やしてください。自分の視点が多様化すればするほど未来に向けての思考力、創造力にも幅が出てくると思います。

さらに、皆さんはこれから大学において、自らが選んだ自己の専門分野の学びを深め、究めていかれることと思いますが、決して狭い領域だけにこだわらず、多岐にわたる先端研究や教育に触れる機会を持ち、広い視野と豊富な知識で物事を俯瞰して、自分の研究を深め、社会に役立つ崇高な新しい技術や価値を、創造していってほしいと思います。人類史上の進歩のほとんどは、不可能を不可能として受け入れなかった人々によって達成されており、是非、皆さんには、従来の枠組みにこだわらず、それを飛び越えていける人、立ちはだかる壁を不変のもの、破壊不可能なものと考えない人、異なる分野間の橋渡しが上手にできる人、になって頂き、大きな目標に向かって最後まで諦めることなく挑戦していってほしいと思います。

また、大学は、学び、研究を究める場であるとともに、多くの新しい偶然の出会いにより、貴重な経験やこれまでにない発見がある魅力的な感動の場であります。日常の生活において、出会いを大切にし、多様な人とのコミュニケーション能力をしっかりと養い、信頼し、信頼される人間関係を構築し、それを積み重ねながら豊かな感性と人間力を磨いてください。そして、これからの学生生活で得た多くの友や先輩、教員との様々な交流を、一生、大切にして頂きたいと思います。

最後に、今日、入学された皆さんが神戸大学生として、自信、誇り、そして自らの情熱をもって、堅忍不抜の大きな志と夢を抱いて、これからの激動のデジタル社会のなかで活躍し、日本のみならず、世界の未来を切り拓いていける、人間性豊かな卓越グローバル人材になっていかれることを心から期待しています。

我々、すべての教職員は、みなさんの可能性を、最大限に伸ばすことができるよう教育、研究の質を高め、皆さんひとりひとりに寄り添い、皆さんとともに未来を創ります。大学が、愛情と優しさをもって人を育てる一方で、皆さんに愛校心と誇りをもち続けて頂くことにより、大学の発展の原動力となる双方における好循環が高まることを、切に願っています。近いうちに、神戸大学の在校生、教職員、卒業生、保護者の方々などのステークホルダーが、それぞれの領域の垣根を越えて交流し結束を高め、一丸となって神戸大学や皆さんの成長を相互に支援していく全学的組織として、神戸大学校友会を設立いたします。神戸大学の発展には、今日、入学された皆さんを含めこれまでの多くの卒業生の方々の結束が大きな力となることを、どうか心にとめておいてください。

皆さんの未来は、希望に満ち溢れています。この恵まれた教育・研究環境を備えた、素晴らしい神戸大学で、健康に留意し、有意義な、悔いのない充実した学生生活を送られることを、そして、一日も早いコロナ感染の収束を祈念して、私のお祝いの式辞とさせていただきます。

令和4年4月5日
神戸大学長 藤澤 正人