2022年12月25日

本日は、年の瀬、ご多用中にもかかわらず、また、新型コロナウイルス感染が流行しているさなか、神戸大学創立120周年記念式典に、文部科学大臣永岡桂子様をはじめ、兵庫県副知事、服部洋平様、神戸市長久元喜造様、株式会社三井住友銀行取締役副会長、関西経済同友会代表幹事 角元敬冶様、国立大学協会長 永田恭介様、地元国会議員ならびに市会議員の皆様、各国総領事館、大学等教育研究機関、企業・財団、報道機関等の皆様、そして本学をご支援してくださっている卒業生など、多数の皆様にご来臨を賜り心より厚く御礼申し上げます。

また、経済産業大臣 西村康稔様、ブリュッセル自由大学学長 ヤン・ダンカールトゥ様、ワシントン大学副学長 マリ・オステンドルフ様、清華大学党委書記 邱 勇様から、記念式典に対して お祝いのビデオメッセージを賜り、心から感謝を申し上げる次第です。

神戸大学は、1902年、明治35年に、兵庫県下で最初の高等教育機関として、「神戸高等商業学校」が設置されて以来、本年で120周年を迎えました。

戦後、昭和24年には、経済、経営、文理、教育、法学、工学の6学部からなる新制総合大学として新たなスタートを切り、後に医学部と農学部が、そして、平成15年に、神戸商船大学との統合により海事科学部が、設置されました。平成28年には、文理の枠を超えた科学技術イノベーション研究科、さらに、国際人間科学部を設置するなど、学内の様々な教育研究施設の再編統合が、なされました。また、平成29年には、神戸大学の第二の附属病院である国際がん医療研究センターが、ポートアイランドに開設され、来春には実践的医工融合人材を育成する大学院医療創成工学専攻が設置されます。現在は、10の学部、15の大学院研究科、1研究所、および各種センター等を擁する、全国有数の総合大学に発展して参りました。

神戸大学は、開学以来、「学理と実際の調和」という理念の下、開放的で国際性に富む固有の文化を有し、「真摯・自由・協同」の精神を発揮して、人類社会に貢献するため、 普遍的価値を生み出す「知」を創造するとともに、人間性豊かな指導的人材を、育成し、これまでに、多くの卒業生や教員が、教育、研究、そして社会の様々な分野で活躍しており、ノーベル生理学医学賞をはじめ、数多くの輝かしい業績を残してきています。

さて、今日、世界においては、新型コロナウイルスパンデミックをはじめ、災害、気候変動、環境・エネルギー、貧困、ジェンダー平等、国際紛争、健康、福祉問題など、我々が取り組むべき課題は、枚挙にいとまがなく、地球と人類の持続可能性において、深刻さが増してきています。それゆえ、常に、世界の最新情報や最先端技術を基に、現在の地球規模的難題についてあらゆる世代、多様な価値観の人々が一緒に考え、問題意識を高め、人類が協調して、その解決策を見いだし、SDGsの達成も視野にいれて、10年後20年後の未来社会を切り拓いていかなければなりません。また、Society 5.0の時代を迎え、社会構造が大きく変化してきていますが、私たちは、従来の人間社会における潜在的な普遍的価値を大切にし、人ならではの感性と技をいかし、人にしかできないこだわり、気付き、そして温かみのある人間中心の未来社会を考えていくことを忘れてはなりません。

このような時代において、大学は、知的活動や創造力によって、真理を探求する基礎科学研究、あるいは地域社会と共創する応用科学研究と、卓越した教育を基本軸として、普遍的な知の創造と多様な人材の育成を主眼とし、未来社会に貢献していくことが、大きな使命であると考えています。また、社会の価値軸が、複雑化、流動化するなか、次世代を見据え、危機意識を絶えず持ち、社会との対話・共創を重視して、その要請に応えていかなければなりません。そのためには、大学として研究教育機能の不断の向上、産官学連携の推進、運営・経営の抜本的改革に取り組み、有機的な先端的異分野共創研究教育基盤を強化するとともに、イノベーションエコシステムを確立して、教育力、研究力、社会実装力、国際競争力、経営力を高め、強靭でサステナブルな、『知と人を創る、異分野共創研究教育グローバル拠点』を構築して参ります。

神戸大学は、六甲台、深江、楠、名谷地区の4つの主なキャンパス、附属学校に加えて、近年、ポートアイランドの神戸医療産業都市地区にも統合研究拠点、神戸バイオテクノロジー研究・人材育成センター、国際がん医療研究センター、バイオリソースセンター、神戸大学発のベンチャー企業など、大学の研究開発拠点が集積し、『デジタルバイオ&ライフサイエンス・リサーチパーク』として、神戸大学の新しい科学技術革新基盤を形成しています。神戸大学として強みのある、バイオ工学、膜工学、医工学、健康科学、社会科学において持続可能で傑出した異分野共創研究領域を創出し、世界に誇れる最先端技術の研究・開発とともに、新しい技術の価値を創造し社会実装に取り組み、未来を拓くスタートアップの育成にも努めて参ります。また、兵庫県、神戸市をはじめとする地元自治体、スーパーコンピュータ「富岳」、Spring8, ニュースバルなどの先端研究機関、さらには、国内外の多くの大学、医療機関との連携を密にして俯瞰的、かつ長期的な視野に立って研究開発を推進し、デジタル未来社会に生きる世界の人々の豊かで幸せなくらしの向上に貢献して参ります。

また、神戸大学は、神戸、兵庫、関西の地域に根差した役割も重要であると考えています。阪神淡路大震災の経験知を活かした先進的な防災・減災対策や、水素などの環境エネルギー対策の研究拠点づくり、附属病院を中心とした兵庫県下の地域医療の充実、健康福祉の向上など、地域の様々な社会的課題の解決に努めて参ります。さらに、社会・地域との多角的な連携基盤である関西SDGsプラットフォーム、ひょうご神戸・大学コンソーシアム、神戸地域連携プラットフォームなどを核に、産官学金連携を密にするとともに、地域の人々と共存し、既存の価値観にとらわれることなく魅力的な地域社会の創造に向けて経済、文化、生命、環境、人間活動を活性化し、地方創生に貢献して参ります。

 

 

 

さて、今回のコロナ感染危機を契機に、大学における教育体制も大きく変化し、デジタル化が進んできています。ポストコロナ時代を見据えて、私たちは、デジタルネイティブ世代のニーズに合ったAR、VR、メタバースなどを利用した次世代のハイブリッド教育システムの導入により、より一層、質の高い、柔軟なデジタル教育に向けての取り組みを進め、魅力的な学習・実習機会を提供して、時空間を超える理想的なハイブリッドキャンパスを目指して参ります。

また、現代社会においては情報科学・分析科学に基づく知識や技術を活かし、様々な領域を繋いで無形の新しい価値を創造し、未知の世界をデザインして、課題解決する能力が、ますます重要になってきており、基礎教養としての数理的情報基礎学力を重視するとともに、文理の枠を超え、科学、技術、人のネットワークを形成して、より一層、総合的、複合的な思考力、創造力を養うために異分野共創型教育を推進して参ります。

さらに、AI・デジタル、ロボット化の加速により、産業構造の変化、労働移動が差し迫っている中、大学は、その研究教育資源を活用し、地域社会や企業と連携してリスキリング教育を推し進め、時代の流れ、社会のニーズに合ったスキル、最新知識を生涯にわたり学べるよう、その役割を果たしていかねばなりません。

そして、すべての世代、国内外の多様な学生、社会人が、自由に学びやすい、人に優しい、そして、ジェンダー平等を重視した、研究教育環境を目指し、多様な価値を持つ人同士が、お互いを包容・理解して、ひとりひとりが自らの希望や適性に応じて活躍でき、その能力を最大限に発揮できるグローバル&インクルーシブキャンパスを教職協働で作って参ります。

今回、この120周年を機に、神戸大学は、全学の同窓会組織である神戸大学校友会を設立しました。今後、より一層、様々なステイクホルダーの皆様との垣根を越えた交流を深め、神戸大学への愛着と思いやりのある皆様とともに協働し、ONE KOBE FAMILY、一丸となり、『グローバル社会と共創し、輝く未来に躍動する知の拠点』として、世界に誇れる先端研究大学を、全構成員で目指していく覚悟です。

最後になりましたが、改めまして年の瀬、お忙しいなかご参加いただきました皆様方に、お礼を申し上げるとともに、引き続き大所高所から神戸大学に対するご支援、ご指導、ご鞭撻をお願い申し上げるとともに、皆様方のご健勝を祈念して、私の式辞とさせていただきます。


 

令和4年12月25日
神戸大学長 藤澤 正人