神戸大学大学院工学研究科の南秀人教授、鈴木登代子助教らと、積水化成品工業株式会社(本社:大阪市北区西天満2-4-4代表取締役社長:柏原正人)は、共同研究によりポリイミドをシェルにした中空微粒子の量産が可能な製法を世界で初めて見出し「テクポリマー®ポリイミド中空微粒子」の商業化技術を開発しました。今後、5G(第5世代移動通信システム)において、高速伝送回路の伝送損失抑制が見込める高耐熱な低誘電素材として期待されます。
この研究成果は、第72回高分子学会年次大会、IPCG2023(International Polymer Colloids Group Conference、June18-23、2023)にて発表されました。
ポイント
- 世界初のポリイミド中空粒子の作製法
- 量産化可能な技術の開発
研究の背景
ポリイミドは、高耐熱性に加えて機械強度・化学安定性・絶縁性に優れ、電気・電子材料や宇宙航空といった幅広い分野で応用されています。粒子内部に空気層を持つポリイミド中空微粒子は、その構造から、絶縁性や軽量性、低密度、低屈折率などの特徴を有し、「高速大容量」「低遅延」「多数接続」を特徴とする5G(第5世代移動通信システム)において、高速伝送回路の伝送損失抑制が見込める高耐熱な低誘電素材として期待されています。しかし、ポリイミドは高耐熱であるがゆえに加工性に乏しく、特に中空粒子の作成報告例はこれまでほとんどありませんでした。
研究の内容
中空ポリマー微粒子は、液晶ディスプレイの光拡散材や化粧品の添加剤、塗料の艶消し剤など、さまざまな用途で使用されています。この度、積水化成品工業との共同研究においてポリイミドをシェルにした中空微粒子の量産化技術を世界で初めて見出し、絶縁性・耐熱性に優れ、球状のポリイミド中空微粒子を開発しました。
今後の展開
上記の様に、ポリイミド中空微粒子は絶縁性や軽量性、低密度、低屈折率などの特徴を有し、第5世代移動通信システムにおいて、低誘電素材として有望視されています。また化学的、機械的に安定であり、高耐熱性である特徴から、これまで中空粒子が使用不可能であった分野においても応用可能であると期待されます。
用語解説
- ポリイミド
- 米国デュポン社が開発したスーパー・エンジニアリング・プラスチックで、他の高分子材料と比べて極めて高い耐熱性を誇り、優れた絶縁性や化学薬品に対する耐性を有する特筆すべき性能を持っています。
学会発表情報
- タイトル
- “化学イミド化法によるポリイミド中空粒子の作製”
- 発表者
- 簑島 奈生・道浦 健・松野 晋弥・大内 卓太・鈴木 登代子・南 秀人
- 発表学会
- 第72回高分子学会年次大会