この度、神戸大学都市安全研究センターの大石哲教授が、戦略的イノベーション創造プログラム (SIP)*1第3期課題「スマート防災ネットワークの構築」*2のサブ課題E防災デジタルツインの構築の研究開発責任者として選定されました。本事業では、都市丸ごとのシミュレーション技術研究組合*3、横浜国立大学、大成建設株式会社と共同して、最長で令和9年度まで、各々の研究領域において、科学技術・イノベーションによる「レジリエントで安全・安心な社会」の実現を目指します。

ポイント

  • 仮想空間に現実と「うり二つ」の都市「デジタルツイン」を構築し、巨大化・複雑化・多様化する災害への対応力向上の実現を目指します。
  • デジタルツインによる高精度なシミュレーションにより、被害軽減への期待が高まります。

研究の内容

日本は、南海トラフ巨大地震や首都直下地震、首都圏広域氾濫と3大港湾高潮氾濫などの多くの自然災害ハザードポテンシャルを抱えていますが、被害想定において、都市全体に設計・照査で用いる物理シミュレーションを適用することは難しく、過去の被害経験の統計解析に基づいて被害を評価しなければなりません。

この従来の被害想定の限界を突破し、より科学的な被害想定を可能とするため、都市全体での設計・照査の物理シミュレーションを行うための防災デジタルツインを構築します。

物理シミュレーションを実行するための各種解析プログラムを利用するためには、実際の構造物群を適切な解像度・詳細度で表現した解析モデルの作成を徹底的に自動化することが必要となります。本研究では、このデジタルツインの自動構築システムの開発を目的とします。

それぞれの機関が担当する研究題目は以下の通りです。

機関名主たる研究担当者研究題目
神戸大学都市安全研究センター
教授 大石 哲
防災デジタルツイン自動構築システムの設計と神戸市デジタルツインの構築
都市丸ごとのシミュレーション技術研究組合神戸大学 工学研究科
教授 竹山 智英
地盤・建物・港湾・橋梁デジタルツインと地震・高潮・マルチハザード被害シミュレーションおよび都市への実装
大成建設株式会社原子力本部
次長 鈴木 俊一
設計に関わる高度なデジタル情報を取り込む高詳細デジタルツインの自動構築
横浜国立大学都市イノベーション研究院
教授 細田 暁
横浜市における複数被災シナリオを統合した緊急輸送路閉塞リスク評価マップの提案
図1 防災デジタルツイン構築のイメージ

今後の展開

デジタルツインを用いて円滑な情報共有を行い、それをもとにした精密なシミュレーションをまちづくりや防災に関する施策に役立てることで、災害に強い未来のまちづくりに貢献します。

用語解説

*1 戦略的イノベーション創造プログラム (SIP)
内閣府総合科学技術・イノベーション会議が司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより、科学技術イノベーション実現のために創設した国家プロジェクトです。国民にとって真に必要な社会的課題や、日本経済再生に寄与できるような世界を先導する課題に取り組みます。平成26年度からの5年間を第1期として11課題、平成30年度からの5年間を2期として12課題に取り組んできた成果も踏まえ、令和5年度からの5年間を第3期として14課題を推進します。各課題を強力にリードするプログラムディレクター (PD) を中心に産学官連携を図り、基礎研究から実用化・事業化、すなわち出口までを見据えて一気通貫で研究開発を推進します。 (SIPパンフレットから抜粋、一部加筆)
*2 SIP第3期課題「スマート防災ネットワークの構築」
「スマート防災ネットワークの構築」は、以下の5つのサブ課題で構成され、現実空間とサイバー空間 (仮想空間) を高度に融合させ、先端ICT、AI等を活用した「災害対応を支える情報収集・把握のさらなる高度化」と「情報分析結果に基づいた個人・自治体・企業による災害への対応力の強化」に取り組みます。
  • サブ課題A:災害情報の広域かつ瞬時把握・共有
  • サブ課題B:リスク情報による防災行動の促進
  • サブ課題C:災害実動機関における組織横断の情報共有・活用
  • サブ課題D:流域内の貯留機能を最大限活用した被害軽減の実現
  • サブ課題E:防災デジタルツインの構築
*3 都市丸ごとのシミュレーション技術研究組合
国土交通データプラットフォームを活用したデジタルツインの構築により、防災・減災、国土強靭化に資する技術開発、ならびに人財育成を目的として結成された研究組合。

参画団体:神戸大学、東京大学、海洋研究開発機構、(株) アサノ大成基礎エンジニアリング、(株) 安藤・間、鹿島建設 (株)、(一財) 首都高速道路技術センター、東電設計 (株) 、みずほリサーチ&テクノロジーズ (株)、(株) 大林組、(株) 奥村組、(株) コムスエンジニアリング、五洋建設 (株)、東洋建設 (株) 、中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京 (株)、(株) NIX JAPAN、(株) ニュージェック、(一財) 阪神高速先進技術研究所、(株) フジタ、富士通 (株)、前田建設工業 (株)、三井住友信託銀行 (株)、理化学研究所 (印はサブ課題E防災デジタルツインの構築の研究開発に参画する団体)

研究者

SDGs

  • SDGs11