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第三者意見

2004年5月に環境配慮促進法が成立して、今年が特定事業者に該当する国立大学法人神戸大学としての第3回目の環境報告書の発行になります。その内容は、『環境報告書の記載事項等の手引き ( 第2版 ) 』における7項目を参照しながら、環境憲章、環境保全のための組織体制、環境に関する教育・研究と地域連携、環境パフォーマンス、環境活動という構成からなっています。とくに大学という教育・研究機関としての特質から、環境に関する教育・研究と地域連携に多くのページが割かれており、環境パフォーマンスとともに充実した内容になっています。この環境報告書は、環境保全に関する教育・研究ならびに環境活動に対する神戸大学としての姿勢を明らかにするものとして評価することができます。

過去2年に引き続いて、環境という複合的な学問領域を反映して、理系・文系学部におけるそれぞれの環境に関する教育内容、研究内容、地域貢献活動が紹介されています。また、本年を「神戸大学環境年2008」と位置づけられ、企画された一連の取り組みの一覧がトピックスとして掲載され、その中の一部が紹介されています。これは社会に対して大学としての熱いメッセージを伝えるものです。息の長い活動であることを期待しています。

環境パフォーマンスでは、電気使用量、ガス使用量、重油使用量、温室効果ガス排出量が記載されていますが、重油使用量をのぞいて増加しており、残念ながら前年比1%削減という目標は達成されていません ( 京都議定書におけるわが国の温室効果ガスの削減義務は1990年度比で6%です ) 。原因は説明されていますが、セグメントでみるとどうしても医学部・附属病院、理系学部が集約している地区の使用・排出割合が多くなっています。教育・研究上やむをえない部分はありますが、それをどのように環境パフォーマンスの改善に結びつけていくかが課題だと思います。

最後に、大学のホームページから環境報告書へのアクセスが少しわかりにくい気がします。また、この環境報告書は主たる読者として誰を意識しているのだろうかという疑問がふと浮かびました。民間企業では内部の従業員という調査結果もあり、大学外部の関係者のみならず、大学の全構成員に対する環境意識向上のためにも大いに利用されることと思います。今後も、地球環境保全に向けた先進的な研究のみならず、環境意識の高いバランスの取れた各界のリーダーとなるべき人材育成に期待しています。

大阪市立大学大学院経営学研究科教授:向山敦夫
氏名
向山敦夫( むこやまあつお )
現職
大阪市立大学大学院経営学研究科教授
プロフィール
大阪市立大学大学院経営学研究科修了。博士 ( 経営学 ) 。愛媛大学、岡山大学助教授、大阪市立大学助教授等を経て現職。

日本社会関連会計学会理事、大阪府水道部経営・事業等評価委員などを務める。主著に、『社会環境会計論 −社会と地球環境への会計アプローチ−』 ( 白桃書房、2003年 ) などがある。

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