第三者意見

第三者意見

今回、神戸大学環境報告書2018を拝見する機会を頂き、ありがとうございます。神戸大学が、環境憲章に掲げる3つの基本方針を変わらぬ使命と位置づけ、文理双方の強みを有する大学の伝統と特色を生かしつつ、地球環境の保全と持続可能な社会の実現に継続して取り組まれる進取の気概を、改めて認識致しました。

特に、環境に関する教育研究トピックスが際立っていると感じました。これまでの第三者意見でも述べられているように、毎年の環境報告書を利用した環境教育が継続され、学生意見が今後の活動に反映されていることに、まず感銘を受けました。環境に関する講演会は私の所属する大学でも実施していますが、神戸大学で継続実施されている実験廃液・排水に関する環境教育や学部横断でのオムニバス環境学入門などは意義深く、層の厚い環境教育の実践が特徴的です。また、中高一貫の附属中等教育学校における継続的な取り組みが、持続可能な開発のための教育(ESD)の表彰を受けられた記事などは、まさに学長メッセージに示された“息の長い努力”の表れの1つではないでしょうか。さらに、学生主体のNPO法人ごみじゃぱんによる「減装(へらそう)ショッピング」(2017年度グリーン購入大賞受賞)などは大変ユニークであり、持続可能な開発目標(SDGs)における優先的な課題の1つである食品ロス削減を鑑みて時宜を得た活動です。学術面では、洋上風力発電の計画に必要な洋上風況シミュレーションや、分散志向のバイオガス小型ユニット、災害廃棄物の発生量推計など、重要な環境課題に関する先導的な研究が数多く紹介されており、興味深く拝見しました。

環境パフォーマンスに関しては、今回、新たに神戸大学全体のマテリアルバランスが示されたことに注目しました。学内の学生や教員等による様々な活動を支えるために、事業活動に投入される資源・エネルギーのインプットと環境負荷のアウトプットの総量が示されており、神戸大学における活動規模全体の大きさを数字で改めて認識しうる、有用な情報です。重油ボイラー設備を廃止して電気式ヒートポンプに切り替えるなどの具体的な省エネ活動の推進が実を結び、新たな研究教育機能や高度先進医療の推進等に関する活動や施設整備を支えながらも全体のCO2排出量は着実に削減されていて、事業活動と環境保全とをバランスよく両立している様子が伺われます。

本年6月に改訂された環境省の環境報告ガイドライン2018では、SDGsやパリ協定など持続可能な社会への移行を促進する国際的な枠組みが確立されつつあることをふまえ、今後はこれまでの環境マネジメント情報だけでなく、事業者が中長期にわたって重要な環境課題にどう取り組み、社会や環境にどう貢献しようとするのかという、事業者の組織体制の健全性や経営の方向性などの将来志向的な情報が、環境報告書における当該事業者の持続可能性を説明する重要な要素の1つになることが述べられています。大学においても、役員会等の大学のガバナンス主体が環境管理に関する情報をどう総括し重要な環境課題への対応に活用しているかなど、環境やリスク管理における、大学のガバナンス主体における役割の明確化が今後、さらに求められてくるでしょう。第5次環境基本計画に掲げる「環境・生命文明社会」構築へ向けて、神戸大学がさらなる先導的な役割を担いゆくことを期待します。