神戸大学の学術研究に係る行動規範

平成18年10月26日制定

学術研究は、研究者の内発的な知的好奇心を源とするものであり、その成果は、世界の平和、人類の進歩及び地球環境の保全に貢献するものである。この意味において崇高な営みである学術研究を持続的に進展させるためには、研究者に対し学術研究の自由と研究者の自治が保障される必要があるが、同時に、研究者自身による倫理的な自律が要求される。

学術研究にあっては、その基礎となる数値等のデータが公開され、追試を通じたその成果の再現可能性が確認されてはじめて、その成果の独創性を誇ることができるのであって、架空のデータに依拠することがあってはならない。また、学術研究とは、自己の所説と先行業績との差異や優位性を明らかにする行為であるから、先行業績の盗用は排斥されなければならない。更に、学術研究の成果について特許権等を取得する場合には、技術を社会に公開する代償として権利が与えられるという特許制度の趣旨に鑑て、不正な出願を行うことは許されない。

国立大学法人における学術研究は国費である運営費交付金や外部資金等によって支えられていることから、研究資金の不適正な使用は、国民の負託を裏切り、大学の社会的信用を失墜させる結果となるため、研究者には不正の誹りを招くことのない姿勢が求められる。

研究者も、そしてその研究者に学術研究の場を提供している大学も、社会の一員であり、社会に対し法的、道義的な責任を負う存在である。とりわけ、大学における学術研究は、一度その管理を過てば社会に対し深刻な被害を与えるおそれがある素材及び事象も扱っていることを、研究者は自覚しなければならない。

学術研究の過程において、研究者が他人の個人情報に触れる機会は多い。例えば、医学における臨床研究では、ヒトの病状などの個人情報を扱うこととなる。また、大学は教育機関であるから、学生の個人情報も扱うこととなる。したがって、大学において学術研究に携わる者は、個人情報の管理に万全の注意を払うことが求められる。

大学における学術研究は、多数の、そして国籍、性別、年齢等において多様な研究者の共同作業によって支えられている。研究者の業績評価等に際して、国籍、性別、年齢等による差別があってはならないし、共同作業の過程において、権限の濫用によるハラスメントもあってはならない。

国立大学の法人化以降、研究者たる教員が企業等の役員を兼ね、弁護士や弁理士等として登録するなどその活動範囲が更に広がっている。これにより、教員が利益相反の事態を招来させる危険性もある。

これらのことから今般、神戸大学において「神戸大学の学術研究に係る行動規範」を定めるものである。神戸大学において学術研究に携わるすべての者は、法令を遵守すべきことはもちろんのこと、以下に定められた行動規範の遵守についても、今まで以上に厳しい自律が要請されていることを、強く自覚すべきである。

1.学術研究における不正行為の防止

研究者は、自らの研究活動のあらゆる局面において、捏造、改ざん、盗用などの不正行為 (ミスコンダクト) を行わないことはもとより、研究データ・資料の適切な取扱いと管理・保存を徹底し、不正行為の発生を未然に防止するよう研究・教育環境の整備に努めなければならない。

2.研究成果の発表の在り方

研究者は、発表する研究データの信頼性の確保に向けて最善の努力を払うとともに、他の研究者の研究成果やオリジナリティーを尊重して公正かつ適切な引用を行うことを基本姿勢としなければならない。また、学術論文等の発表に際しては、オーサーシップや既発表類似データの再利用などについて、各研究組織・研究分野・学術誌ごとにある固有の慣例・ルールに則って細心の注意を払い、著者全員の十分な了解のもとに行うものとする。

3.研究費の適正な使用

研究者は、研究の実施、外部資金を含む研究費の使用に当たっては、研究助成 (補助、委託) 目的等を最大限に尊重するとともに、各研究費ごとに定められた助成 (補助、委託) 条件や使用ルール等を遵守しなければならない。

4.環境・安全への配慮、生命倫理の尊重

研究者は、研究実施上、環境・安全に対して有害となる可能性のあるもの (放射線、放射性同位元素、遺伝子組換え生物、外来生物、核燃料物質、劇毒物、環境汚染物質等) を取り扱う場合には、関連する法令、本学規則、関連省庁や学会等の指針 (ガイドライン) 等を遵守し、必要に応じて学内外の委員会での承認を受けるとともに、特に、ヒトや動物を対象とした研究においては生命倫理を最大限に尊重しなければならない。

5.研究成果・研究材料の共有、守秘義務の遵守、個人情報の保護

研究者は、自らの公表済みの研究成果並びに研究材料を広く研究者コミュニティーに開放し、他の研究者が必要に応じて利用できるよう努めなければならない。一方で、協力研究契約や知的財産権に係るものに関しては、所定の守秘義務を遵守するとともに、他の研究者の未発表研究成果、特に論文や研究費の審査の過程で知り得たものについては、守秘義務を厳密に遵守しなければならない。さらに、研究の過程で入手した他者の個人情報の保護に努め適正な取扱いを行うものとする。

6.差別やハラスメントの排除

研究者は、研究活動のあらゆる局面において、各個人の人格と自由を尊重し、属性や思想信条による差別を行わない。また、研究上の優位な立場や権限を利用して、その指示・指導等を受けるものに不利益を与えるような言動をとらない。

7.利益相反の適切なマネジメント

研究者は、自らの研究行動に当たって、利益相反や責務相反の発生に十分な注意を払い、かかる状況が発生する場合には、情報公開を行って適切なマネジメントを行うものとする。

8.研究指導者の責務

研究指導者は、研究グループ内における研究データ・資料の適切な取扱いと管理・保存を責任をもって行うとともに、研究グループ内の研究者が各自の能力を十分に発揮できるような研究環境の整備に努め、各研究者の貢献度の客観的評価を通じて公正なグループ運営を行うものとする。また、研究グループ内の研究者全員に本行動規範の内容を周知徹底し、規範を逸脱することのないように最善の配慮を払わなければならない。