受賞者
理学研究科 大西洋 教授
受賞日
2019年5月18日
受賞名
(公社) 日本表面真空学会 第23回学会賞
業績名
金属酸化物単結晶表面の原子レベル観察とその触媒作用に関するパイオニア研究

概要

長期間にわたって高い水準の研究業績を挙げることにより表面・真空科学に顕著に貢献した功績が認められて、大西教授が日本表面真空学会から第23回学会賞を授与されました。

大西教授は東京大学在職中(1994年)に酸化チタン(TiO2)単結晶表面を超高真空走査トンネル顕微鏡で観察して原子分解能像を世界に先駆けて取得し、正電荷をもつチタンカチオンに選択的に吸着する有機分子アニオンをマーカーに利用して、ひとつひとつのチタンカチオンを識別しました。走査トンネル顕微鏡を用いた金属酸化物表面研究の黎明期に達成された原子レベル化学分析の代表例として、25年を経た現在でも頻繁に引用される研究成果です。

1999年に神奈川科学技術アカデミーに研究室長として異動した大西教授は、酸化チタン表面に吸着した有機分子が光触媒反応によって分解する過程を走査トンネル顕微鏡で観察しました。また、伝導性に乏しい金属酸化物を原子分解能で観察できる周波数変調型の原子間力顕微鏡を用いて酸化チタン表面に混合吸着した二種類の分子アニオン(HCOOとCH3COO)の大きさの違いを明確に識別しました。

本学着任(2004年)を契機として顕微鏡計測の環境を液体中にまで広げることを決意した大西教授は、水あるいは有機溶媒に浸漬した固体の表面形状と、固体に接する液体の局所密度分布を分子スケールの位置分解能で断面計測する研究を系統的に展開してきました。炭酸カルシウム結晶や親水性単分子膜などに接する液体の密度分布を比較して、ギブズ自由エネルギー分布をもとに界面液体の密度分布を統一的に解釈する考え方を提唱しました。

2004年以降に大西教授が発表した査読つき原著論文98報のうち41報は国内共同研究の成果であり16報は海外研究者との共著論文です。ひとつの専門分野に籠もるのではなく、広く研究分野をまたいでエキスパートを集めた研究チームを組織し、多面的アプローチの結果を統合して、表面界面が発揮する機能の発現メカニズムをできるだけ平易に説明するスタイルが大西教授による研究の特徴です。科学研究費基盤研究(A)・国際共同研究強化(B)・挑戦的研究(萌芽)などの支援のもとで、大西教授が現在展開している人工光合成光触媒反応と潤滑油界面の研究がさらに大きく発展することを期待します。

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