受賞者
分子フォトサイエンス研究センター 太田仁 教授
受賞日
2019年9月26日
受賞名
国際ザボイスキー賞
業績名
テラヘルツ強磁場電子スピン共鳴装置開発とその固体物理学研究への応用に関する際立った功績に対して

概要

9月26日にロシア・カザンの市庁舎ホールにおいて、太田教授が国際ザボイスキー賞を授与されました。これは、長年にわたるテラヘルツ電子スピン共鳴装置の開発とその応用の功績が、国際的に高く評価されたものです。

太田教授らのグループは長年、多重極限テラヘルツ電子スピン共鳴装置の開発を進めてきました。ここで多重極限とは、極低温 (最低1.8K)、強磁場 (最大55T)、高圧力 (最大2.5GPa)、マイクロ計測 (10マイクログラム以下) で、これらの複数極限下かつテラヘルツ波領域で、電子スピン共鳴 (ESR, Electron Spin Resonance) 測定するのが多重極限テラヘルツ電子スピン共鳴です。特にテラヘルツ波領域における、高圧下とマイクロ計測による高感度測定は、世界的にもユニークなものです。例えば、太田教授らのグループは高圧下テラヘルツ電子スピン共鳴で、フラストレート磁性体の量子相転移の圧力・磁場制御を実現 したり、マイクロ計測の一つである力検出型ナノメンブレンテラヘルツ電子スピン共鳴によりタンパク質に含まれる金属イオンの電子状態を微量の溶液から分析できる新手法を開発 するなど、顕著な成果を数多くあげてきました。今後、高圧下テラヘルツ電子スピン共鳴は、磁性体に関する基礎研究のさらなる発展に、またナノメンブレンテラヘルツ電子スピン共鳴は、あらゆる物質の高感度微量測定手法として発展し、社会に貢献して行くことが期待されます。

ザボイスキーは1944年、ロシアのカザンにおいて、世界で初めて固体の磁気共鳴 (電子スピン共鳴) の観測に成功しました。これは固体の核磁気共鳴の観測でノーベル賞を受賞した米国のブロッホとパーセル (1946) に先んじるものでした。このザボイスキーの偉業を称えるために、1991年より毎年カザンにおいて、電子スピン共鳴の開発や応用に関して顕著な功績があった研究者に国際ザボイスキー賞が授与されています。特に2019年はザボイスキーの電子スピン共鳴発見75周年の節目の年で、それを記念した国際シンポジウムEPR-75の中のイベントとして授賞式が行われました。現在国際ザボイスキー賞は、ザボイスキー物理工学研究所、カザン連邦大学、タタルスタン共和国政府、シュプリンガー社のサポートを受けて運営されています。

関連リンク