図1. ゲノム解析に用いたシャジクモS276株。(上)主軸に枝が放射状に輪生し、「車軸」のように見える葉状体。スケールバーは1cm。(下)輪生枝の途中に形成される生殖器官。上が生卵器、下が造精器。スケールバーは100µm。(神戸大学 坂山英俊 提供)

 金沢大学学際科学実験センターの西山智明助教、神戸大学大学院理学研究科の坂山英俊准教授、国立遺伝学研究所の豊田敦特任教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科の鈴木穣教授、ドイツ・マールブルク大学のStefan Rensing教授らの国際共同研究グループは、シャジクモ(※1、図1)の概要ゲノムを解読し、他の藻類および陸上植物との比較により、シャジクモの系統と陸上植物の系統の分岐前後における遺伝子レベルの進化の一端を明らかにしました。

 陸上植物はシャジクモ藻類(※2)の仲間から進化しました。その中でシャジクモ類は最も複雑な体の構造を持つものです。本研究グループは、シャジクモのゲノム(全遺伝子)概要配列を解読し、他の藻類および陸上植物のゲノムと比較することにより、陸上植物が成立する過程においてどのような新規性があったのか、また共通祖先からどのような遺伝子が引き継がれているのかを明らかにしました。

 シャジクモの概要ゲノムは、植物の陸上での生活に重要と考えられる多くの陸上植物的な特徴がシャジクモ藻類にあること、これにより、最古の陸上植物ができる以前にそういった陸上植物的な特徴が獲得されたことを明らかにしました。また、シャジクモと陸上植物の祖先が分岐してから陸上植物が成立するまでに獲得された遺伝子がどれであるか推定できるようになりました。このシャジクモの概要ゲノムは、さらに多くの陸上植物に見られる遺伝子の進化的解析において参照されるとともに、シャジクモでの進化遺伝学的解析の基盤になると期待されます。

 本研究成果は、2018年7月12日午前11時(米国東部標準時間)に米国学術雑誌「Cell」のオンライン版に掲載されるとともに、本研究に関する画像が「Cell」の表紙を飾りました。また、シャジクモのゲノム配列はDDBJ(※3)より公開されました。

 

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研究グループ

 本研究は、金沢大学の西山智明助教、神戸大学の坂山英俊准教授、ドイツ・マールブルク大学のStefan Rensing 教授、国立遺伝学研究所の豊田敦特任教授、藤山秋佐夫特任教授、小原雄治特任教授、鹿児島浩特任研究員、東京大学の鈴木穣教授、菅野純夫教授をはじめ各国計60名40機関の国際共同研究グループによる成果です。

謝辞

 本研究は、以下の科学研究費補助金および各国の助成の支援を受けて実施されました。

 特定領域研究ゲノム4領域「比較ゲノム」「基盤ゲノム」、新学術領域「ゲノム支援」、基盤研究(B), 若手研究(B), 基盤研究(C) 17020008、20017013, 22128008, 24370095 15H04413; 22770083, 24570100, 15K07185 221S0002

 また、解析に、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 遺伝研スーパーコンピュータシステムおよび基礎生物学研究所生物情報解析システムを利用しました。

用語解説

  • ※1 シャジクモ
    シャジクモ(学名:Chara braunii)はシャジクモ類の一種。シャジクモ類は淡水から汽水に生育する大型多細胞藻類である。シャジクモ類の藻体は、主軸に枝が輪生する(この枝を輪生枝という)構造を持つ。「シャジクモ(車軸藻)」という名前は、藻体の主軸から周囲に伸びた輪生枝が車軸のような形をしているところからつけられたものである。
  • ※2 シャジクモ藻類
    緑色藻類の中で、陸上植物と共通する多層構造体型の鞭毛装置を持ち、陸上植物に繋がる系統(ストレプト植物)に属する生物から陸上植物を除いた残りの緑色藻類。シャジクモ藻類には、シャジクモ類、コレオケーテ類、ホシミドロ類、クレブソルミディウム類、クロロキブス類、メソスティグマ類の6グループが含まれると考えられている(図2)。
  • ※3 DDBJ
    DNA Data Bank of Japanの略。国際塩基配列データベースを協同運営する INSDC (International Nucleotide Sequence Database Collaboration) の一員として、塩基配列データを収集している日本の組織。国立遺伝学研究所内で運営される。( DDBJ センターについて | DDBJ センター )

論文情報

・タイトル
The Chara genome: secondary complexity and implications for plant terrestrialization
(シャジクモゲノム: 二次的複雑性と植物の陸上化への示唆)
doi:10.1016/j.cell.2018.06.033

・著者
Tomoaki Nishiyama, Hidetoshi Sakayama, 他, 計60名

・掲載誌
Cell

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