~光合成生物の進化と多様化を解明する糸口に~

 岡山大学異分野基礎科学研究所の長尾遼特任助教、加藤公児特任准教授、秋田総理准教授、沈建仁教授、大阪大学蛋白質研究所の宮崎直幸助教 (現:筑波大学) らの共同研究グループは、理化学研究所、京都大学、兵庫県立大学、基礎生物学研究所、神戸大学との共同研究により、クライオ電子顕微鏡を用いて、海産性珪藻の光化学系II-集光性色素タンパク質複合体の立体構造解析に成功し、珪藻特有の色素組成とその並び方を明らかにしました。この結果から、水中で太陽光エネルギーを効率よく収集・逸散する仕組みや、光合成生物が多様な環境に応じて集光性色素タンパク質を進化させてきた仕組みが明らかになりました。本研究成果は、日本時間7月30日、英国の科学雑誌「Nature Plants」に掲載されました。

 本研究成果は、なぜ光合成生物は多様な色を持ち、さまざまな場所に生育できるのか?という問いに対する答えを与えるものです。色の違いは光合成生物の生存戦略の一環で、褐色を呈する珪藻が水中で限られた光エネルギーをいかにして利用するのか、その仕組みが明らかになりました。この成果は、光合成生物の進化と多様化の謎をひもとく知見となり、絶えず変動する太陽光エネルギーの効率的・選択的な利用を目指した人工デバイスの創出についても重要な知見を提供するものです。

発表のポイント

  • 光合成生物はなぜ多様な色を持つのか?その問いに答えるために、褐色を呈する海洋珪藻由来の光化学系II-集光性色素タンパク質の立体構造をクライオ電子顕微鏡 (注1) により決定しました。
  • 珪藻の巨大複合体の立体構造は緑色植物由来のものと比較して、色素の組成や集光性タンパク質 (注2) 中での並び方が大きく異なり、多様性を生み出していることがわかりました。
  • 色素の並び方から、水中でエネルギーを効率よく利用する仕組みがわかり、光合成生物が多様な環境に応じて効率よく太陽光エネルギーを利用する仕組みを獲得してきたことが明らかになりました。

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岡山大学プレスリリース

補足・用語説明

  • 注1:クライオ電子顕微鏡
     液体窒素温度でタンパク質粒子を観察する電子顕微鏡のことです。サンプルへの電子線ダメージを軽減するために液体窒素温度での測定を行います。多数のタンパク質粒子の形状を計測して平均化することで、当該タンパク質の立体構造を解析します。2017年にはノーベル化学賞を受賞した技術です。
  • 注2:集光性色素タンパク質
     クロロフィルやカロテノイドなどの色素を結合した、太陽光エネルギーを集める役割を持つタンパク質です。光合成生物の種類に応じて異なる集光性色素タンパク質が存在します。本報告で明らかにした、フコキサンチン-クロロフィル a/c結合タンパク質 (FCP) は珪藻や褐藻に特有であり、その名の通りクロロフィルa、クロロフィルc、フコキサンチンを結合しています。

研究資金

 本研究は、日本学術振興会・科学研究費補助金「基盤研究C」(課題番号:JP17K0744)、「新学術領域研究(研究領域提案型)」(課題番号:JP17H06433、JP16H06553)、科学技術振興機構 (JST) 戦略的創造研究推進事業 個人型研究 (さきがけ)(課題番号:JPMJPR16P1)、先端的低炭素化技術開発 (ALCA)(課題番号:JPMJAL1105)、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 (AMED) 創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業 (BINDS)「創薬等ライフサイエンス研究のための相関構造解析プラットフォームによる支援と高度化」(課題番号:JP18am0101072)、基礎生物学研究所共同利用研究 (課題番号:18-451) の支援を受け実施しました。

論文情報

・タイトル
Structural basis for energy harvesting and dissipation in a diatom PSII-FCPII supercomplex”(珪藻光化学系II-FCPのエネルギー収集と散逸の構造基盤)
DOI:10.1038/s41477-019-0477-x

・著者
Ryo Nagao, Koji Kato, Takehiro Suzuki, Kentaro Ifuku, Ikuo Uchiyama, Yasuhiro Kashino, Naoshi Dohmae, Seiji Akimoto, Jian-Ren Shen, Naoyuki Miyazaki and Fusamichi Akita

・掲載誌
Nature Plants

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