神戸大学

評価・IRシンポジウム「大学に求められるIR機能の実現に向けて」を開催しました

2013年09月03日

開会挨拶
(神戸大学 正司 健一 理事)

8月22日(木)、神戸大学百年記念館六甲ホールにて、神戸大学主催、大学評価コンソーシアム共催で「評価・IRシンポジウム」を開催しました。当日は、大学関係者を中心に、177名 (学外者: 158名、学内者: 19名) の参加があり、活発な議論が交わされました。

今回のシンポジウムは、大学の質保証や情報公開、そして大学間の競争と連携などの観点から近年注目を集めている「IR (インスティテューショナル・リサーチ)」 (大学の諸活動に関する調査データを収集・分析し、経営を支援する機能) に着目し、「大学に求められるIR機能の実現に向けて」をテーマに、講演とパネルディスカッションを行いました。

講演第1部

  • 講演1: 「日本の大学にIRをどのように定着させるか」(当日の報告資料1 (PDF形式))
    講師: 小林 雅之氏 (東京大学 大学総合教育研究センター 教授)
  • 事例1: 「神戸大学における評価を中心としたIR活動」(当日の報告資料2 (PDF形式))
    講師: 浅野 茂氏 (神戸大学 企画評価室 准教授)

講演第2部

  • 事例2: 「京都光華女子大学におけるEMとIRの取り組み」(当日の報告資料3 (PDF形式))
    講師: 阿部 一晴氏 (京都光華女子大学 情報教育センター 准教授)
  • 講演2: 「文部科学省が考える日本の大学におけるIR活動」(当日の報告資料4 (PDF形式))
    講師:
    松坂 浩史氏 (文部科学省 高等教育局 大学振興課 大学改革推進室長)
    秋山 卓也氏 (文部科学省 高等教育局 高等教育企画課 高等教育政策室室長補佐)

パネルディスカッション

  • コメント1: 「大学間連携によるIRの可能性と課題」(当日の報告資料5 (PDF形式))
    講師: 山田 礼子氏 (同志社大学 社会学研究科 教授)
  • コメント2: 「10分でIRを語ろう!」(当日の報告資料6 (PDF形式))
    講師: 本田 寛輔氏 (メイン州立大学オーガスタ校Institutional Research & Planning Analyst)

講演者及びパネリストには、政策立案者である文部科学省関係者、中央教育審議会関係者、また、実際にIR活動に携わっている国内外の大学関係者をお迎えし、IR活動の意義や現在の取組状況、今後の展望・課題等について、それぞれの立場から発表をいただきました。

講演1では、学術的観点からもIRの定義は確立されておらず、実際のアメリカの大学においてもIR業務の範囲は多様で、大学ごとに組織の位置づけや機能も異なることから、一様でないことが指摘されました。一方で、アメリカではIR業務を推進するうえで様々な情報にアクセスする環境が整備されており、情報交換のためのコンソーシアム、中間組織等が充実しており、日本ではこれらの点で大きく後れをとっており、今後、人材育成とともにIRを定着するうえで解決すべき課題として取り上げられました。

事例1では、国立大学における評価を中心としたIR活動の推進状況について報告がありました。法人化以降、多くの国立大学で新設された評価部門は、業務の特性上、IR業務において不可欠となる多様な情報を収集することから、その情報を活用するためのデータベースを構築し、それを活用することでIR業務を推進できている取り組みが紹介されました。また、これらの活動を推進するうえで、責任ある体制の整備、さらには評価業務を推進する際の全学的な方針等の策定も、継続的かつ効果的に評価・IR業務を推進していくうえでの必要条件として示されました。

事例2では、アメリカのIRが最も強みを発揮しているEM (エンロールメント・マネジメント) に先駆的に取り組んでいる私立大学の事例報告がありました。学生情報を中心に、学内で当たり前と思われていることでもデータで裏付けをとることにより、教育の状況を直視することができるとともに、その過程で課題等を把握することができ、教育の改善につながることが報告されました。

講演2では、政策立案を掌る文部科学省がIRをどのように見ているか、大学にどのような活動を期待しているか、国として大学の情報を収集するために整備を進めている大学ポートレート (仮称) 等についての報告がありました。IRについては、文部科学省としても統一見解は持ち得ていないが、昨今の大学を取り巻く環境、なかでも大学評価及び大学経営の高度化において、IRが果たすべき役割が大きい点が指摘されました。

パネルディスカッションに先立ち、コメンテータからは日本の大学でIR活動を推進する上で重要な役割を担う中間組織の現状と課題、アメリカで実際のIR業務を推進する立場から見た日本の現状等について話題提供がありました。その後のパネルディスカッションにおいては、IR担当者に求められる専門性をどのように確保していくか、IR業務を推進するうえで重要となるデータに対する倫理観をどのように醸成していくかなどについて質疑応答がなされました。

最後に、司会・進行役の川嶋 太津夫教授 (神戸大学 大学教育推進機構) より、IRの役割をアンコウの提灯に例え、「IRは、法人化以降の国立大学及び昨今の学生確保に苦しむ私立大学において、今後、各大学が進むべき道筋を示す重要な灯りである」旨の総括があり、今後の大学におけるIR活動の重要性を参加者全員が共有し、本シンポジウムの幕が閉じられました。

パネルディスカッション
【参考】本シンポジウムの参加者アンケートの集計結果 (PDF形式)

(企画部企画課企画評価グループ)