神戸大学

神戸オックスフォード日本学プログラム シンポジウム・記念コンサート

2013年10月22日

10月15日、神戸オックスフォード大学日本学プログラム (KOJSP) 第2期開始を記念するシンポジウムとコンサートが瀧川学術交流記念会館で開催されました。今月初め来日したオックスフォード大学東洋学部日本学専攻2年生12人が2期生として、来年7月末まで文学部で学ぶことになります。

午後3時からのシンポジウムでは、学校法人城西大学理事長で比較文学研究者・詩人でもある水田宗子氏の講演「記憶・沈黙・ジェンダー-新たな日本研究の構築に向けて-」があり、それを受けた人文学研究科の濱田麻矢・准教授 (中国文学) と奥村沙矢香・准教授 (英文学) による指定討論および会場との質疑応答が行われました。水田氏は、文学表現の核心部には尊厳を傷つけられた者の「沈黙」の痕跡が刻印されており、文化の構造の再生産を担うと同時にその輪を破る力をも持っていること、日本文化は豊かな文学的資源を有している反面、これまでの国内的な日本文学研究においては「他者 (外国人、女性等) との遭遇という表現の原点への視点」が欠けがちであったこと等を指摘されました。また、新たな日本研究のテーマとして、海外移民が形成したコミュニティの解体・消滅とその痕跡をめぐる問題、外地からの引揚者による出来事の記憶と語りの問題、出来事の体験を持たない世代による記憶の継承の可能性 (ポスト・メモリー) 等についても言及されました。

指定討論では、濱田准教授から東アジア1940年代の女性テクストと戦後の書き換えの問題、また奥村准教授からヴァージニア・ウルフのテクストにおけるマイノリティの記憶と語りの問題が提起され、さらに水田氏の応答がありました。質疑応答も含め、これまでの一国文学研究の枠を破った、いわば世界文学的な視点から、出来事の記憶と語りについての共同研究を進めていく可能性について、確かな手ごたえを感じ取ることができるシンポジウムでした (水田氏は、来日した12人の本国における指導教員であるLinda Flores先生の恩師にあたる方です)。

午後5時からは記念コンサート《ジョン・ダウランドの世界》が開かれました。オックスフォード出身で世界的なソプラノ歌手のEmma Kirkbyさんと、リュート奏者のつのだたかし氏により、ルネッサンス後期イギリスの作曲家ジョン・ダウランドのリュート歌曲とリュート独奏曲が演奏されました。“Flow my tears”や“Come again”、“Time stands still”等、静謐な空間を「天使のような」と形容されるKirkbyさんの深く透き通る歌声が染み透っていく様は感動的でした。演奏後にはフロアとの対話もあり、オックスフォードで学位を取ったダウランドの政治的側面や彼の音楽のもつメランコリーの意味等が語られました。

コンサート終了後のパーティでは、来日した12人の留学生が日本語で挨拶しました。神戸大学とオックスフォード大学との協力関係が、研究・教育の双方において一層の発展を遂げることが期待される1日でした。

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(人文学研究科)