Kobe University

アベノミクスを再考 浜田宏一・内閣官房参与を招きシンポジウムを開催しました

2017年08月10日

浜田宏一 内閣官房参与
・イェール大学名誉教授

神戸大学経済経営研究所と社会システムイノベーションセンターは8日、内閣官房参与でイェール大学名誉教授の浜田宏一氏を招いて公開シンポジウム「アベノミクス再考:グローバル日本の金融・財政政策」を出光佐三記念六甲台講堂で開きました。

アベノミクスの理論的支柱である浜田氏の見解を聞こうと、学内外から多数の聴衆が詰めかけました。

高橋亘 大阪経済大学教授

浜田氏と元日銀金融研究所長の高橋亘・大阪経済大学教授が講演した後、上東貴志・経済経営研究所長の司会で討論しました。

浜田氏は雇用情勢・企業収益の改善、政府の歳入増加を指摘し、「アベノミクスはうまく行っている」と、全体として安倍晋三政権の経済政策が順調に進んでいると主張しました。ただ、雇用情勢の改善から「取り残されている人がいる。 (失業率低下などの) 数字の割にユーフォリア、高揚感がない」と個人の実感とデータの乖離を認めました。

高橋教授は、アベノミクスの数値目標である「経済成長率2%、インフレ率2%の持続的実現」が未達であることから、「アベノミクスは成功しているのか?」と疑問を投げかけました。特に潜在成長率の回復が遅れ、成長力向上に確信が持てないことが、企業や個人の節約志向・縮み志向を招き、経済停滞の原因になっていると指摘しました。2%のインフレ目標が達成されていないことについて、高橋教授は「製品の性能が向上しても価格が同じなら、統計上は物価が下落したことになる。2%のインフレを目指すのではなく、縮み志向から成長志向への変化を目指すべきだ」と訴えました。これに対し、浜田氏は「雇用が確保されていれば、インフレ率は低い方が良い。インフレ目標は達成しなくても良いと思っている」と2%のインフレ目標にこだわらない考えを表明し、日銀の金融政策についても「金利が効かないので、量的緩和で行くことにしたが、だんだん限度が近づいている」と認めました。

また、浜田氏は子どもの貧困問題などから「今、分配が不平等になっていて、それが米国でトランプ政権が誕生し、日本でアベノミクスに高揚感がない理由だ」と指摘しました。その克服のために「教育がこれから重要になる。日本経済の成長も、労働力の質が良くならないと難しい」と訴えました。

(総務部広報課)