Kobe University

シンポジウム「阪神・淡路大震災から25年~私たちは何を学び、どこへ向かうのか~」を開催しました

2020年01月30日

1月22日、震災復興支援・災害科学研究推進室は、シンポジウム「阪神・淡路大震災から25年~私たちは何を学び、どこへ向かうのか~」を開催しました。

本学では、平成24年にこの推進室を設置し、震災復興支援活動や災害科学研究を行う学内のグループへの支援活動を行ってまいりました。また、それらの活動や研究の成果をもとに、例年、東北大学、岩手大学及び国立大学協会と共催でシンポジウムを行っており、8回目となる今回は、学内外から約200名が参加しました。

シンポジウムの開会挨拶にて、武田学長は「阪神・淡路大震災から25年の節目を機に、震災から我々が学んだことや、これまでの研究成果について講演いたします。本シンポジウムが、今後の安全・安心な社会のあり方を考える機会となればと思います」と述べました。

続いて、来賓の国立大学協会・山本健慈専務理事より、「国立大学は予算的に大変厳しい中、社会的使命を果たしております。このような公開シンポジウムをきっかけに、研究成果のみならず、国立大学の状況を広く一般の皆様にも共有させていただき、さらなるご支援をお願いしたく思います」と挨拶がありました。


始めに、都市安全研究センターの長尾毅教授より、「地震動と土木構造物~兵庫県南部地震がもたらしたもの~」と題して講演がありました。長尾教授は、阪神・淡路大震災を機にそれまでの耐震設計が根本から見直されたことを紹介し、この大震災がどのような地震だったのか、現在の耐震設計の考え方や手法がどのようになっているのかを解説。現状では、耐震設計をする際に設定する「設計地震動」に、地点ごとの地震動の増幅特性が十分に考慮されていない点などに課題が残っており、研究をさらに進めて合理化していく必要があると話しました。

都市安全研究センターの北後明彦教授は、「生活復興過程と事前の備え」と題して、阪神・淡路大震災の被害状況と、震災後の様相を決定づけた要因について、多くの研究から得られた知見を紹介。そこから指摘された課題や、それらに備えるためのポイントを解説し、様々な課題に配慮した都市空間のデザインを考えていくために、神戸大学に「減災デザインセンター」を立ち上げたことを話しました。

神戸新聞社報道部デスクの畑野士朗氏は、「メディアから見た震災と復興」と題し、自らも被災した新聞社として、神戸新聞社が震災直後から現在までに、どのような目線で報道を展開してきたのかを紹介。震災から四半世紀が経過し、世代の転換も意識される中、若い世代へ被災者の「生の言葉」を伝えることで、次の災害への備えに繋げていくことが使命であると話しました。

医学研究科の曽良一郎教授は、「災害時のこころのケア」と題し、災害時のこころの変化や、PTSD(心的外傷後ストレス障害)がどのようなものであるかを解説。中長期の対応だけでなく、早期のケアの重要性も認められて災害派遣精神医療チーム「DPAT」が設立されたことを紹介し、災害時のこころのケアの留意点や、平時から精神保健体制を準備しておくことの重要性などについて話しました。

人文学研究科の奥村弘教授は、「大震災の記憶を歴史として引き継ぐために」と題し、地域歴史遺産と災害資料の保存について、阪神・淡路大震災から25年の間に様々な活動が行われ、担い手となる組織の全国展開や新たな研究手法の開発など、一定の成果が出ていることを紹介。大規模災害や社会構造の変化により、地域の歴史文化の継承が困難になっていることを解説し、そのような中での地域歴史資料を取り巻く専門家と市民の関係の変化や、神戸大学の取り組み、国際的な取り組みの広がりについて話しました。

都市安全研究センターの飯塚敦教授は、「将来のレジリエントな都市に向けた取り組み」と題し、全学横断組織である「未来世紀都市学研究ユニット」の活動のひとつとして、京コンピューターに地図情報や地盤情報、資産台帳などの膨大なデータを取り込んで神戸の街をモデル化した「都市まるごとシミュレーション」を紹介。災害時のシミュレーションを行ってリスクを定量化することで、防災・減災を投資対象ととらえ直し、民間の経済活動が災害リスクの低減を担うようなレジリエント(しなやか)な社会に繋げていきたいと話しました。


また、シンポジウムに先立ち、推進室が支援している17件の復興支援・研究活動について、各事業の代表者が活動内容を紹介するプレイベントが開催されました。各事業のポスター展示も行われ、シンポジウムの休憩時間には、参加者らが展示会場を訪れ、事業代表者による説明に熱心に聞き入りました。

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(研究推進課、広報課)