Kobe University

京都・大阪・神戸 3大学シンポジウムを開催しました

2020年11月27日

京都・大阪・神戸の3国立大学法人の総長・学長が経済界と討論する3大学シンポジウム (日本経済新聞社、日本経済研究センター主催) が11月13日、大阪市内で開かれました。テーマは「関西から創る未来社会~コロナが問う変革」。

医療機器メーカーのシスメックス (本社・神戸市) の家次恒会長兼社長、地図情報サービスのStroly (本社・京都市) の高橋真知社長が参加し、湊長博・京都大学総長、西尾章治郎・大阪大学総長、武田廣・神戸大学長が、新型コロナウイルス感染症の流行が続く中で、大学や企業の役割と課題を討議しました。

コロナ克服を追究

最初に、コロナ禍を克服するための研究について、話し合いました。湊・京大総長は「ワクチン開発は欧米が先行しているので、重症化した患者の治療法にフォーカスして、阪大、神大の研究者にも加わってもらって研究に取り組んでいる」とし、西尾・阪大総長は感染症総合研究開発拠点を設置し学内外が連携して新興感染症対策の研究に取り組んでいることを紹介しました。本学の武田学長は、新型コロナウイルス関連の研究テーマを学内公募したところ50件の応募があり、「兵庫県や神戸市からの資金援助も受けて研究プロジェクトを進めている」と説明しました。

文理融合を評価

(左から) 湊長博・京都大学総長、
西尾章治郎・大阪大学総長、武田廣・神戸大学長

コロナ禍だけでなく、地球温暖化など、社会の多くのステークホルダーの合意が必要な課題の解決には、自然科学だけでなく、人文科学、社会科学の知見が重要であることが話し合われました。湊・京大総長は「意思決定のプロセスが重要になっている。科学のピアコミュニティーを広げ、利害を持っている人を入れないといけない」と主張し、西尾・阪大総長は「データ主導のイノベーションでは、プライバシーを含むデータは誰のものか、が問題になる。人文系をコアに、自然科学系を巻き込んだ研究が必要だ」と述べました。

武田学長は、2020年4月に設置したバリュー・スクールで「コロナ禍の下で、“価値”について根っこから考えていこう」と、定員30人を大きく上回る66人の学生・院生が価値創造について探求していることを説明しました。また、「コロナ禍でも物流は動かさないといけない」と、2021年春に設置する海洋政策科学部で文理融合型の人材育成に取り組むことや、新練習船をフェラーリのデザインで知られる著名デザイナーに依頼したことを紹介しました。

対面講義の重要性を強調

学生教育については、オンライン講義の長所と短所について話し合いました。湊・京大総長、武田学長は学生に対するアンケート調査などから、「よく勉強できる」などオンライン講義を歓迎する声が多かったことを紹介しましたが、「本来の対面講義にはやっぱり及ばない」 (湊総長)、「大学とは人と人との交流の場を提供するもの」(武田学長) と、対面講義の価値を強調しました。西尾・阪大総長は「新入生、特に一人暮らししている学生の孤独感が心配された」と、対面の新入生歓迎イベントを6月に開催したことを紹介しました。

イノベーションの担い手に博士人材を

家次、高橋両氏からは新たなアイデア、インスピレーションを生み出すためには、ダイバーシティー (多様性) が重要であるとの問題意識が語られ、「新しいことにチャレンジする人材を (企業に) 送り込んでほしい」(家次氏) と大学への期待が示されました。

これに対し、西尾・阪大総長が「産業構造が知識集約型へとドラスチックに変化する中、修士、博士課程で知識を身につけないと対応できない」と大学院の重要性を指摘しました。武田学長は文理融合の大学院科学技術イノベーション研究科からバイオベンチャー企業6社が誕生するなどの成果を紹介し、「修士の学生は (企業の) 評判がいいが、博士課程の学生をなかなか採用してもらえない」と企業の意識改革を求めました。また、「京都、大阪、神戸はそれぞれ特徴ある文化がある。連携して、関西からスタートアップ企業を出していきたい」と、期待を語りました。

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(総務部広報課)