日時
平成19年11月2日 (金)  13:00~16:00
場所
神戸大学大学院農学研究科 大会議室
出席者
野上議長 (学長)、堀尾委員、土井委員、中野委員、安藤委員、太田和委員、天野委員、河内委員、谷井委員、新野委員、はま委員、平野委員、水越委員、矢田委員
(オブザーバー) 赤塚監事、枡田監事
欠席者
井戸委員、佐藤委員、薄井委員、太田委員、鈴木委員
議事要録について
第12回経営協議会の議事要録について、11月5日までに意見を頂き、役員会として確認の上、神戸大学のホームページに公表する旨説明があった。
協議事項
[委員からの主な意見等 (○: 意見・質問、→: 回答)]
1. 目的積立金の取り崩しについて

平成19年度大規模改修に伴う教育研究施設改修事業及び平成19年度新保育所新営整備事業のため、 目的積立金を取り崩すことについて説明があり、審議の結果、原案のとおり承認した。

○ 先般、大学病院の赤字の補てんについて、文部科学省の発表があったが、この数字には関係ないのか。

→ 先般示されていた大学病院の赤字というのは、決算書上の損益は黒字になっているが、 減価償却費より借入金の返済の方が多い場合は、その分だけ現金を多く支出しているので、実質上は赤字となるということ。 文部科学省としては、その現金が減った分は、いくら決算書上利益が出ても、目的積立金として認めない。 したがって、赤字の部分は、病院の目的積立金からマイナスしている。

2. 国立大学法人神戸大学の平成18年度に係る業務の実績に関する評価結果について

前回の経営協議会で質問のあった、平成18年度に係る業務の実績に関する評価結果において「期待される」とコメントが付された、 (1) 神戸大学ビジョン2015関係、(2) 総人件費改革関係、(3) 神戸大学情報データベース (KUID) 関係、(4) 研究評価指標関係、 (5) 危機管理マニュアル関係、(6) 病院関係について、大学の考え方を説明し、意見交換を行った。

○ 神戸大学の留学生は増えていると思うが、日本語教育はどのようにしているのか。

→ 留学生センターの教員が中心となり、多彩なプログラムを展開して日本語教育を行っている。

○ 留学生を大量に受入れるためには、受入れ側の体制が整備されているかが非常に大事な問題である。

→ 留学生の受入れ体制について、限られた人員での対応となることが、非常に気になっているところである。

○ 神戸大学のみならず、日本の大学教育の中で留学生をもっと受入れる仕組みにすべきである。 企業の立場からすると、日本語がきちんとできないと話にならないという部分がある。 留学生を受け入れて、日本語がきちんとできて、高度の教育を受けていれば企業は喜んで採用するが、神戸大学ではどのように考えられているのか。 企業が若者を採用する場合、日本語がきちんとできて優秀であれば留学生も採用する。

→ この後の議題「本学の国際戦略について」の中で意見を伺うこととしているが、 神戸大学の留学生に関する基本方針は、大学院生に的を絞って強化策を考え、学部生については十分な日本語能力を持った優秀な者を受入れる方向で考えている。 日本語能力については、来日前から提携大学と連携をして、相当なレベルの日本語能力を育成する一貫の教育プログラムを作る方針である。 また、ヨーロッパ、特に中央ヨーロッパ圏の大学では、日本企業の進出もあり日本語教育のコースが相当充実をしてきているようである。

○ 「期待される」事項の対応をこのとおり行うとしたら、教職員の協力が必要で、その気になってもらえる工夫が一番大事である。

検討の必要な一例として、優れた教育力を持つ教員の待遇、サバティカル、特別昇給、ボーナスアップなどの措置を検討しているが、 大学の教員評価は授業だけでなく、研究、学内外への貢献についても評価しないと問題が出てくる。

これと関連して、教育力評価でGPA制度をどの程度行うのか。 アメリカの場合は、小・中・高等学校で日本のように統一した学習指導要領はなく、各州等で異なっているため大学はカリキュラムを体系化しておかないと、 学生を卒業させることができない。 残念ながら、日本の大学では、体系的な履修指導がなされていないところも一部見受けられるが、 GPA制度を採用するときには相当検討しておかないと学生評価が大変なことになる。

→ 授業力評価及び優れた教育力を持つ教員の待遇については、部局教育担当責任者会議で議論することとしている。

教員評価については、現在、教育、研究、診療、社会での活動及びマネジメントについて、評価の対象として検討しているが、 全員が納得するものでなければいけない。

→ 学生による授業評価は、全学共通授業についてネット環境で無記名で実施している。 本来は記名させて、責任を持った評価をしないと、データとして信憑性がない。 しかしながら記名となると、学生も躊躇し、教員側もいろいろ議論がある。 結論を得るには少し時間を要するが、授業評価及び自由記述に対して、担当教員は必ず答えをWebに載せることとしている。 また、一部の授業では、1学期が終了した時点ではなく、1カ月程度経過した時点で授業評価を行い、学生からの要望を授業に反映させている。

○ 地域連携についてはどこに入っているのか。

→ 今回の評価結果では、地域連携については「期待される」とのコメントが付されていなかったため、項目として上げていないが、 ビジョン2015で設定した50の実施項目内に2項目ではあるが地域連携を取り上げており、そこで具体的な行動計画を検討している。

○ 地域連携を行う場合は、何を目的にするかをはっきりさせておかないといけない。

○ 地域連携を行うに当たって、ボランティア的なものもよいが、やはり総合大学の特色を生かし、 医学、医療、農業問題などプロジェクトを組んで取り組むモデル的なものを作り、 そこで研究費が必要であれば大型プロジェクトに申請し、予算を獲得するなど戦略が必要であると思う。

○ 職員による研究支援実施事業の拡大 (競争型公募研究獲得) は非常に大事なことである。 ただ、単に書類作りや研修だけでなく、情報を収集し提案をするように、事務職員を養成・育成されたら良いと思う。

○ 学校教育法の改正で社会貢献が大学の3番目の役割となった。 社会貢献は良いことであるが、無制限にはできないし、大学の本来の任務は教育研究である。 本当に何が地域にとってメリットがあり、大学にとってのメリットがあるのか、協力関係を検討しないといけない。

地域連携には、各種のプロジェクトや学生のかかわっているボランティアもあるため、一度全体像を調べてはいかがか。 地域も大学に何を期待するのかを十分考えていただかないと長続きしない。

→ 相当膨大な種類・内容の地域連携が行われているので、まずその把握をしたい。

○ 附属病院の経営を良くするために医師の派遣が減少しており、地域医療に影響を与えている。 特に、兵庫県の日本海側の医療に大きな影響を与えている。 神戸大学の医学部は何とかしていただきたいと、それを救えるように、本格的に地域と一緒になって考える必要がある。

→ 医学系研究科長と検討したが、まず本学の医学部と附属病院の経営が成り立ち、初めて日本海側の支援を行える。 今、自立できる経営体制が取れない非常に困難な状況にあり、悩んでいる。

○ 鳥取大学医学部は県の一番西にあり、地域と連携し自立した経営体制ができていると思えないが、但馬地方の病院に医師を派遣している。 兵庫県の中の神戸大学がどれだけ貢献できるのか、もう少し真剣に考えていただきたい。

→ 病院の件については、病院長を中心に頑張っているが、課題もある。 本日は議題とせず、改めて時間をかけて検討いただきたい。

○ 神戸大学の工学部を中心に、企業との産学連携に非常に努力されている。 これは神戸大学だけの問題ではないが、一時産学連携が盛んに言われ、進展が見られたが、今一度、全体的に一度見直す時期に来ていると思う。

相互の連携体制を持った企業は、自社の研究開発や製造の部門が研究機関とうまく連携を取り熱心にプロジェクトを展開し成果を上げているが、 中小企業は、技術、物づくり、商品の開発の問題を大学の何処へどういう形で相談したら良いのか解らない。また、企業側にも遠慮がある。

大学も企業を集めた説明会やホームページで公開されているが、それをもう一歩企業と結び付ける役割のできる機能や人が必要ではないか。

→ 連携創造本部がその役割を担っているが、その機能を一度見直したい。

3. 本学の国際戦略について

前回の経営協議会で頂いた意見を基に検討を加えた本学の国際戦略について、教育に関しては、 (1) バランスの取れた交流の促進、(2) 外国人留学生の受入れ、(3) 短期サマープログラムの開発、(4) 「プレミアムコース」による日本人学生の派遣、 (5) ダブルディグリー制度の開発、(6) 認定留学制による留学の増、(7) インターンシップの充実、(8) 国際部の機能強化、 (9) 大学間協定の検討、(10) 海外拠点オフィスの設置、(11) 宿舎の整備について、 研究に関しては、(1) ノーベル賞受賞のきっかけが作れる研究環境の整備、(2) 国際的研究人材の育成、(3) 海外拠点の形成、 (4) 国際戦略2015実現のためのモデルについて、及び国際戦略2015 (予算) について説明があり、意見交換を行った。。

○ 留学生は卒業後、日本で多くの人が働き、日本を好きになってもらうことが非常に大事である。

○ 優秀な教員の下には人が集まるので、教員として優秀な人材を集めることが基本である。

→ 優秀な教員に来ていただくため、特別な給与体系を検討している。優秀な研究者であれば、研究資金は自ら獲得できる。 優秀な研究者に来ていただける環境を整備することが重要であり、その一つとして宿舎の整備も考えている。

○ 学生の派遣を増やすのは大賛成である。 そのためには、学部段階で語学教育を含めた教育の基盤的部分を充実させないといけない。 プレミアムコースは良いことだと思うが、人数が少ない。 抜本的に語学教育の在り方を検討し、神戸大学の学生は語学力が高いと評価されるようになって初めて国際化の話になる。

優秀な留学生を受入れるためには、優秀な教員がいれば集まるのは確かであるが、 他大学では授業料無償などますます良い条件を提示してきており、よほど頑張らないと優秀な人は来ない。 奨学金制度等、優秀な人を惹き付ける方法を考えないといけない。

→ 奨学金については、本学の場合、自らの財源で措置することは不可能で、企業の奨学金を得る仕組みを考えている。 留学生獲得について、本学にはEUIJ関西があり、ヨーロッパとの関係が強いので、東欧、中欧の学生等にも焦点を当てることを検討している。

○ BRICS や VISTA といった新興国ということになると、ODA を活用して留学生を招くような仕組みを考えてはどうか。

研究設備について、近隣の理化学研究所、E-ディフェンス (兵庫耐震工学研究センター) の設備が活用できれば強力な武器になるので、 連携していくことを考えてはどうか。

→ 現在構想中のグローバルCOEには、理研の研究者にも相当数参加していただくことを検討している。 また、兵庫県下にある高度先端研究施設とそこの研究者との共同研究も検討している。

○ 理研の若手研究者は契約制であり、神戸大学に来てテニュアトラックを得ることは非常に魅力的であると思う。

→ プロジェクト終了後のポジショニング設定が課題であると認識しており、 本学の正規の教授で採用できる枠組みがどれだけ作れるか、非常に厳しいのが現実である。

定年まで保障するというのは非常に厳しいが、例えば10年間で制度設計できないか検討している。

○ 2015年に1,500人を派遣するというのであれば、どのようなバックアップができるのか。 前回の会議で「全額親の負担での留学が必要か」という意見があったが、どのように考慮し、対策を考えているか。

また、神戸大学の国際戦略は他大学と比べ、どこに特徴があって、どのような実現可能性があるのか。 主要大学は、ユニークな新しい研究分野を開発したり、優秀な研究者をスカウトしているが、特に、神戸大学の自然科学系では、どの程度影響が出ているか。 さらに、その影響を補うだけの優秀な研究者を集められる可能性はどの程度あるか。

→ 全額親の負担の問題は非常に難しい問題と思っている。 国としての制度が作られることを期待しており、制度ができた時に神戸大学は速やかに対応し、いつでも派遣できる状況にしたい。

優秀な研究者の採用については、グローバルCOEを狙う拠点等に学長裁量枠を措置して戦略的に対応している。 また、御発言のとおり、本学においても、研究者をスカウトされることはある。

○ スカウトされるということは、優秀な研究者がいるということで、それを余り気にすることはない。 学内が研究を行いやすい環境で周りに多くの高度先端研究施設あるという魅力を活かして優秀な研究者を集めることは難しいことではないと思う。

→ 良い環境を是非作りたい。