日時
平成20年3月14日 (金)  13:00~16:00
場所
神戸大学大学院国際協力研究科 大会議室
出席者
野上議長 (学長)、堀尾委員、土井委員、 薄井委員、太田委員、 中野委員、安藤委員、太田和委員、鈴木委員、天野委員、井戸委員、河内委員、 谷井委員、新野委員、はま委員、
(オブザーバー) 赤塚監事、枡田監事、杉村病院長
欠席者
佐藤委員、平野委員、水越委員、矢田委員
議事要録について
第14回経営協議会の議事要録について、特段の意見はなく、役員会として確認の上、神戸大学のホームページに公表する旨説明があった。
協議事項
[委員からの主な意見等 (○: 意見・質問、→: 回答)]
1. 平成20年度年度計画について

前回の本会議で重点事項を説明したところであるが、 再度ポイントとなる項目について説明を行い、審議の結果、原案のとおり承認した。

○ 年度計画 (案) の中にある、 工学研究科の情報知能学専攻を中心に新しい研究科を設置することは、 予算の中には入っているのか。

→ 当初21年度を予定をしていたが、 現在は22年度設置と考えているため、今年度の予算には計上されていない。

新研究科の予算措置については、 情報知能学専攻が基になるため、基盤的なものはある。 文部科学省に対しては、国の高等教育プロジェクトということで政策的な支援をいただけるように話を進めている。

2. 平成20年度予算について

「平成20年度予算編成方針 (案)」、 「平成20年度予算配分の考え方」、 「予算配分状況推移」及び「神戸大学医学部附属病院『緊急経営対策』及び 『20年度事業計画』」について説明があり、審議の結果、原案のとおり承認した。

○ 前回もお願いしたことではあるが、 病院は予算が多いためにこのような形で特別に取り上げられたと思うが、 大学全体としては学部、 あるいは研究科ごとに独立の考え方を持って整理をしないといけないということが喫緊の課題である。 研究科ごとの固有、独立会計的な計算の仕方もあり、いろいろな問題もあると思うが、 部局毎にこのような体制を作って検討していただきたい。

→ 前回の意見については、部局長にも伝えている。 2月、3月に病院についての分析を行い、その後に部局ごとの内容について作業を始めたい。 どのような形で進めて行くかは検討したい。

○ 経営学研究科の病院経営専門家から新経営管理手法等について助言を求めることは、 是非実施いただき、もう少し体系的に学内で協力できる体制を構築していただきたい。

○ 最近、病院の経営について、医師不足、 看護師不足といったいろいろな問題が起こっていると聞いている。 そのようなことからいうと、日本の医療全体の問題として、程度の差こそあれ、 全国の病院がすべて赤字なのか、それともいわゆる神戸大学の場合は単に技量だけの問題ではなく、 研究・教育という別な理由により、一般の病院と違って経営的に厳しいのか。 神戸大学の病院としてはこのような理由により資金が不足している、 このようなことをしないといけないということが明確になっているのか。

→ 保険制度上、 公的病院を含めた大病院は基本的に診療報酬上赤字になる体制になっている。 例えば再診料であれば、大きな病院の方が診療所よりも単価が安くなっている。 診療報酬というのは以前、医師会と厚生労働省との協議で決められていた。 医師会の活動の中心は開業医であり、開業医主導で進められてきた。 開業医は個人でやっているため、収益を上げていかなければならない。 公的病院は政策医療が中心であるため、税金を投入するべきだという考え方があり、 税金を投入して収入・収支の均衡をとることが病院の基本であるという考え方になっているため、 現在でも公的病院というのは90%以上が赤字で、税金を投入しても赤字になっている。 そのような状況ではよくないということで、学会等にも我々のところにも診療報酬に対して意見が来ている。 最近、公的病院の方にもある程度考慮したような診療報酬の改正が行われてきている。

○ 私立病院の経営と国公立病院の経営とはどこが違うのか。診療費が違うのか。国公立だから国等から補助があり、安いということか。

→ 私立病院と公的病院では効率が大きく違う。公的病院の方が人件費が高くなっている。これは公務員の場合に、いろいろな形で特色等を出しにくいとか、看護師も年齢の高い人が多く、人件費が高くなるなど、いろいろな面からその様な形になっている。大学附属病院の場合は、特に教育・研究というミッションが加わっているので、基本的にプラスになりにくいというところがある。

○ 国が悪いとは言わないけれども、我々もできる範囲の努力を続けているが、 限られた結果しか出てこないため、当然、赤字が出るのはやむを得ないとこういうことになる。 全国の公的病院がすべて赤字なのか。

→ 22年度以降、運営費交付金が措置されれば黒字になるということでこの計画表を出している。黒字の病院はニュースになるぐらいである。

○ 黒字の病院と同等の経営ができるということは無理なのか。

→ 赤字となるもう一つの大きな理由として、 大学病院とか公的病院は患者さんを選ぶことができないということが非常に大きい。 例えば胃がんの患者さんの中でも1期、あるは2期の患者さんが私立病院に行く。 神戸でいうとそれ以外の患者さんが神戸中央市民病院と本学に運ばれてくる。 神戸大学の場合、非常に重い患者さん、 採算性が得られにくい患者さんを受け入れなければならない。 このようなことも公的病院の経営圧迫の原因となっている。

○ そのようなお話を聞くと、 外部コンサルタントの導入とか、 病院長を支援するスタッフ体制の強化等の改革というものに意味がないのでないかと思える。 基本の考え方というものをはっきりしないと。 企業ではいつもこんな話をしているが、 我々の場合、誰も助けてくれないため、ちょっと事情は違うと思うが、 少なくとも良くしようということであれば、自らの意思によって、 できるということにおいて可能性がある。そうすると外部の力で、 我々の力ではどうにもできないということであれば、国の方で理解されるか分からないが、 むしろそういうことを訴えていく必要がある。東京も、大阪も、 京都も含めて、医療という大事なことについて、 公的な経営を理解していただけるか分からないが、国に訴える方が先で、 無論大学の努力によって、より内部を良くしようということは必要だと思うが、 根本的な問題というものを一方で置きながら、 これとどうもつながらないなという気がするので、 その辺りの考え方というものをはっきりしないといけないのではないか。

○ 国も理解していただかないといけないと思うが、 だからといって直ぐに分かったとはならない。

神戸大学病院として最大の努力もしないと、国の理解だけを待っているわけには行かない。 企業経営を取り入れて黒字にするとか、社会的な責任なり、教育、 研究も含めて配慮しないといけないという公的立場から、 この程度の赤字は神戸大学としては5年なら5年辛抱するとか、 これからの事業計画を立てる際には、一つの考え方というものを出すべきである。 事業である以上黒字を出すということが基本であるが、黒字を出さないということであれば、 大学として来年はこのような実態であるから、この範囲で事業を行うとか、 大学としての一定の方針を出す必要がある。その方針に基づいて、担当理事、 病院長は病院の責任者として事業を実施していくものである。 改革には、痛みはつきものである。 それに対してトップがその痛みに対する一つの強い決意というものを持たない改革はあり得ない。 そういう考えの下に外部のコンサルタントを入れるとか、改革のために優秀なスタッフを配置するとか。 そうしないと、外部のコンサルタントを入れたから、優秀なスタッフを配置したからといっても上手くいかない。 この難局に対して神戸大学として一つの決意を行い、その意思に基づいて、 コンサルタントへの調査及び意見や分析を求めないといけない。

→ 法人化前はいろいろな制約があり、 例えば、事務職員1人雇うこともできない状況で、非常に苦しい状況が続いていた。 平成16年度の国立大学法人化に伴い、7対1看護を確保するための看護師を4年間で35%増やし、 収入が150億から210億まで上がってきている。 また、これまで設備投資は難しかったが、 法人になった際の期限切れ設備が約80億円相当を順次整備計画に入れ、 できれば機械等の設備投資を行いたい。 第一期中期計画の間をインフラ整備の時期としたいが、 病院の赤字が全学的に影響する問題でもあるため、 全学の理解が得られるように進めたい。

○ 19年度に比べて20年度は15億強の収益増が見込まれている。 その後の収益増が10億とか5億とかが計上されているが、 これは今のところは人員増によって対応できると考えているのか。

→ 毎年の収益予測と大きな変動はない。 特に、20年度の収益増の理由は、19年度から7対1看護を行うこととしたが、 いろいろな要因もあり、年度途中で稼働率を落とす状況もあったが、 20年度は看護師を実質130名増員することができ、 稼働率が92%にまで上がっても7対1看護を確保できる状態になってきた。 これらを根拠に16億の増収を計画している。

その他は、国の医療費の伸びとほぼ一致させ、2%ずつの増収予測としている。

○ 一般的に看護師の勤務年数が非常に短くなっている。 看護師が永く勤務する病院ほど営業成績は上がり、 そうでないところはだめになっていくというような話があるが、 神戸大学の附属病院の場合はどれぐらいの勤務年数になっているのか。

→ 今までは在職年数が非常に短く、 昨年までは3年目までの看護師が全体の54%、 20年度は新しい人を雇うため58%ぐらいになる。 若い人の比率が非常に多いというのは、退職者が多いということである。 本学は全員が正看護師であり、大学卒の職員は、大学院に進学するとか、 大学院修了の職員は、保健師に進んだり、あるいは企業に行くなどでかなり辞めている。 また、結婚退職がかなり多い。

○ 今の問題に関連して、看護師を確保しようとしたら、 看護師の勤務条件を良くしたり、給与を上げていかないといけない。 そのために経費が増大するという、 特に7対1看護体制を維持することは大変な問題だと他の病院経営者から話を聞いている。 そういう意味でこの病院収益を確保していこうとするための諸条件というのをきちんと整理した上で、 看護師の勤務条件を保障していくのではないかと思う。 国の在り方として医療体制について根本的にメスを入れないと、 これは現在の大学の附属病院の問題だけでは済まない問題を含んでいるということは間違いない。

○ 国大協で言われているように、返済額の問題も含めて、 附属病院の在り方について、 あるいは医学部の運営の仕方について根本的な問題があるということを文科省にアピールするだけではなく、 財務省にもはっきり説明するなどの努力をしていただきたい。

○ 法人化された際に、全国の国立大学が倒壊することは明らかだった。 それが今に至り、どうしようもない状況になってきている。 前から言っているように全国の大学から声を上げていかなければ、自滅してしまう。 もう一つ気になることは、現在の大学病院の状態がどうこうということだけではなく、 日本の医療体制なり教育体制をどうするかという視点を大学としてはっきり打ち出していく必要がある段階に来ている。

○ 経営という立場からすると、二つに分けられる。 一つは、基本的に一大学だけの問題ではなく、 神戸大学として他の大学と強力に連携を図りながら進めないといけない。

もう一つは、出された計画についていろいろ課題もあると思うが、 現場の意欲をそがないように注意をしないといけない。 現場は現場で、努力の余地は必ずあると思う。 これが100点ではないと思うので、引き続き頑張っていただきたい。

→ 大学としても支えていくつもりであるが、 この一、二年の間に国の制度がすぐ変わるわけではない。 病院に対しても、全力で行ってくださいということは当然言わないといけない。

○ 丹波、但馬は本当に医師不足で厳しい状況に置かれており、 本県での医師確保が必要な地域の対策については、 神戸大学と兵庫医科大学の協力なしには本県の医療確保はできない状況で、 特に但馬は具体的に病院のネットワークを作り、資源の重点化を行った。 その中で、例えば寄附講座を開設して、神戸大学の協力で医師2名の派遣をいただいた。 あるいは、県立病院と神戸大学との交流を実施する際に、待遇に差が出たりすると、 なかなか交流が実施できにくいということもあるため、処遇の見直しを20年度から実施し、 過疎地については初任給調整を見直したい。 また、技術研修制度をもっと高めようという意味での交流を促進するという仕組みを取り入れる。 さらに県との関係では密接な協力をいただくように環境整備に努めていきたいと考えている。

県立病院ベースからいうと、医師が1人欠けると、 売り上げベースで1億円から3億円ぐらい収入が減るということになり、経営が非常に苦しくなる。 医師の確保ができるかできないかは病院経営の基盤であるため、是非、 医師の派遣について協力をお願いしたい。

3. 平成20年度教育研究活性化支援経費の暫定配分について

平成20年度教育研究活性化支援経費の収入見込み、 配分方針に基づき暫定配分を組む旨説明を行い、審議の結果、原案のとおり承認した。

○ 今、これだけお金が必要というときに、 間接経費で人件費を支出することになっている。 研究室の整備に経費が必要だということは分かるが、 事務職員は全体の業務を把握した上で適正に配置されているのではないのか。 その中で、何人かを、この仕事に充てればよいのではないか。

→ 事務職員の業務調査を行い、 業務の省略及びアウトソーシングできるものについては実施している。 その中で、事務職員も減ってきており、一人当たりの業務量は返って増えてきており、 外部資金に関係する職員を間接経費で雇用している。 特に、公的研究費の適正な管理が求められてきており、各部局で物品納入の際には、 現物確認を行う必要もあることから、そのための人件費を計上した。

○ 本来、新しい仕事が増えると、業務の見直しを絶えず行い、 人員配置も連動させる必要がある。 単に外部からの収入があるから雇用するための経費を確保するという考え方になっているのではないか。 それだけではなく、全体の在り方、全体を考え直す工夫をしないといけない。

→ 事務業務の改善については、 業務改善プロジェクトにおいて提案のあった施策をベースに進めているが、 国立大学時代に比べると法人化により膨大な業務量が発生しており、 大変厳しい環境になってきている。 特に、学生に対するサービスは、きめ細かく行う必要もあることから、 重点配置を行っている。 安易に外部資金だからということで人件費の確保を図っているものではない。

○ 最近、正規職員と非正規職員とが同じ業務を行っていると賃金を同じにしなくてはいけないとか、 色々な制約が出てきている。 それらを全部考え、仕事に対する人の配置を工夫していかなければならない。 既存の業務についての適正な配置を考えていただきたい。

→ 全体を把握した上で、適正な配置ができているかというとそうはなっていない。 その理由の一つは、17年末から18年度にかけてコンサルタントを入れて整理を行ったが、 重点配置予定の人員の大部分が総人件費改革の対応にまわってしまったことにある。

また、新規業務が増えてきたということなどがあり、十分な整理ができていない。 早急に実施したいと考えている。特に事務業務のICT戦略を立て、 それを軸にして人数を合理的に割り振ることがまず先である。 今年度から団塊の世代が退職することにより再雇用職員が急速に増えてきており、 配置をどう行うのかということを全体としてまだ整理できていないことから、 今年度中から来年度にかけてきちっと整理していきたい。

4. 中国公費派遣留学生の授業料免除等について

中国公費派遣留学生の受け入れに伴い、 本学における取扱について説明を行い、審議の結果、原案のとおり承認した。

5. 平成20年度に係る就業規則等の改正等について

平成20年度から「次世代育成支援のための短時間勤務」、 「育児又は介護を行う職員を支援するための早出遅出勤務」等の制度化等を行い、 そのことに伴う職員就業規則等の一部改正等について説明を行い、審議の結果、 原案のとおり承認した。

6. 学則等の一部改正について

組織の変更等に伴い、学則等の一部改正及び制定について説明を行い、審議の結果、原案のとおり承認した。

7. 神戸大学基金について

神戸大学基金創設記念期間の延長について説明を行い、 審議の結果、原案のとおり承認した。

8. その他

○ 神戸大学への期待として、グローバルCOEへの採択率を上げるため、 積極的に取り組んでいただきたい。

また、次世代スーパーコンピュータが神戸に設置されることに伴い、県立大学でも新研究科を設置することも考えている。 是非、神戸大学と連携を取り、例えば共同大学院というのも一つの方向ではないかと考えているので、 相談をさせていただきたい。 併せて、次世代スーパーコンピュータの活用についても非常に重要であることから、協力をお願いしたい。

→ スパコンについては、県立大学とも相談させていただいており、今後、文部科学省との対応が見えてきた時点で、連携の在り方について相談したいと考えている。