日時
平成18年2月23日(木)
場所
神戸大学大学院国際協力研究科 大会議室
出席者
野上議長 (学長)、鈴木委員、北村委員、守殿委員、西田委員、眞山委員、西島委員、 坂本委員、高さき委員、 天野委員、井戸委員、佐藤委員、谷井委員、新野委員、 はま委員、矢田委員
(オブザーバー) 中野学長補佐、冨田学長補佐
欠席者
井上委員、河内委員、水越委員
議事要録について
第6回の経営協議会の議事要録について、各委員に事前にお送りし確認をいただき、役員会として了承の上、神戸大学のホームページに公表している旨報告された。
議事に入る前に、神戸大学の現在の改革推進状況についての以下の学長報告があった。
  1. 神戸大学の目標について
  2. 教育環境の整備について
  3. 教育支援体制の整備について
  4. 研究環境の整備について
  5. 学術研究成果を神戸大学から発信することについて
  6. 社会連携について
  7. 施設整備について
議題
  1. 中期目標、中期計画の変更について

    ○ 学長及び担当理事から、中期目標、中期計画の変更について、次のとおり説明があった。

    政府レベルの「電子政府構築計画」や「行政改革」等の諸施策に基づき、 国立大学法人を含む独立行政法人等の業務システム最適化実現方策が決定されている。 本学としては、投資効果を適切に判断しながら業務の情報化を推進していくことが必要と考え、 中期目標、中期計画の変更案に関係の記述を入れている。 また、これに関連し、情報化統括責任者と情報化統括責任者補佐官を設置することとした。

    平成17年12月24日に閣議決定された行政改革の重要方針において 「国家公務員の純減目標として、今後5年間で5%以上定員を純減させる」こと及び 「国立大学法人は、各法人ごとに国家公務員に準じ、人件費削減の取組を行うことを中期目標において示す」が定められている。 実施時期は、平成18年度から22年度までの5年間が対象である。 (国立大学法人の中期目標期間は、平成16年度から21年度で、1年間のタイムラグがある。) 人件費削減のベースは、平成17年度人件費予算相当額となる見込みで、対象となる人件費は、役員報酬と常勤職員の給与である。

    平成17年度の人事院勧告を踏まえた給与構造改革を実施するとしてもなお、平成22年度の所要額見込み推計額に対して不足が生じる。 一方、事務職員については、団塊の世代がこれから相当数定年退職となるが、 60歳で定年退職した者の後任に20歳台の職員を雇用するとしてその新陳代謝分を考慮しても、なお不足が生じる。

    教員人件費の削減計画は教育、研究、診療を担う大学教員の数は減じないという基本方針の下で行うこととし、 学長裁量枠の内、効率化係数相当分は補充することなく人件費削減に充てることとしている。

    また、その他の職員についても人件費削減目標を達成することとしている。

    ○ 学外委員から、「学長裁量枠は、教育研究の充実のために使う必要があるのではないか」との指摘があり、 学長から「効率化係数相当分以外の学長裁量枠は、21世紀COEへの定員の充当や学内で新しい拠点をつくるために教員を配置するなど、 教育研究の推進のために使っている。アクティブな教育研究活動を展開するための学長裁量枠は是非守りたい」旨回答した。

    ○ 学長から、「神戸大学の将来構想のため、ビジョン・政策策定プロジェクト、業務改善プロジェクトを興している」旨の説明の後、 学外委員から「神戸大学を特色ある大学にするために、しっかりしたビジョンをつくるべきである」との意見があった。

    ○ 以上の報告・討論の後、中期目標・中期計画の変更が了承された。

2. 平成18年度の年度計画について

○ 学長から、平成18年度の年度計画の重点事項について、次のとおり説明があった。

ビジョン・政策策定プロジェクトについては、この時期に神戸大学はどのような目標を持ち、 何をやらねばならないのかを構成員が理解し、具体のアクションを起こす必要があるので立ち上げた。 これは、各学部構成員、学生諸君、本学のOB、本学に関係する重要な立場の方々等の意見等をいただきながら、策定するものである。

研究については、学長裁量枠を活用し、学内発「卓越した研究プロジェクト」を推進できるような体制作りを行っている。 教育の分野においても、政策的な経費で新たなチャレンジを支援する。

国際交流については、(1)国際的な共同研究は、EUIJ関西 (EUインスティテュート関西) の枠組みを適切に活用する。 (2)先端的研究の国際展開は、しかるべき拠点大学のセレクションをかけており、国際共同研究を実施し推進する。 現在のところ具体的には、ワシントン大学との交流協定、特にマネジメントスタッフの交流について合意している。 (3)優秀な留学生の獲得については、アジア地域の重点大学を設定し、留学生センターのプログラム等も組み合わせながら継続して獲得する。

業務改善については、総人件費改革の実行計画と関連して、現在、業務改善プロジェクトを進めているが、 平成18年度については、業務量を見直し、学生サービス、教育研究支援サービス等を充実させる方針の下に更にプロジェクトを進める。

○ 担当理事から平成18年度の年度計画のうち病院分について、次のとおり説明があった。

病院は、平成18年度においても更なる病院経営の効率化を目指して、医療実績の分析等多方面から、医療人の教育も含む事業計画、予算等を立てている。 平成17年度については、医師、看護師の増員並びに待遇改善を行った結果、当初計画の病床稼働率、医業収益の目標を達成できる目処が立った。 この環境整備により、スタッフの士気向上と信頼関係等も強くなったことが要因で目的を達せられたと評価しているが、 この種の投資は、運営費交付金2%の削減を補完するためにも必要である。

平成18年度以降は、医師の大学病院離れ、麻酔医の不足、看護師の更なる補充、 並びに診療報酬や薬価の改定等の問題とともに、平成17年度の決算見込みを踏まえ、特別事業等を計画した。 主な点は、看護師の増員、特定助手、特命教授の雇用、医員及び研修医手当の改定、麻酔医の待遇改善費用等である。

また、月次決算会計の準備ができたことから、本年4月からは、別の予算及び決算を把握することにより運営していくが、 このことにより、予算に基づき執行を管理していくという体制を採りたいと思っている。

なお、優れた医療人の育成のため、 クリニシャン・エデュケーターの養成及びチーム医療の実践の場として総合病床を本年3月から設ける予定であるが、 総合病床での教育プログラムが文部科学省の平成18年度の教育プログラムに採用されたこともあり、より実践に強い医師を養成する計画である。

○ 学外委員から、「月次決算会計の制度化は高く評価できる」との意見のほか、 「平成18年度の年度計画は前より良くなっているが、平成17年度の実績は見込みより悪いのではないか」との指摘があり、 担当理事から「平成17年度は多くの投資を行ったためであり、このことが平成18年度以降に良い影響をもたらすこととなる」旨回答した。 また、「ベッドの稼働率を当初計画より上げようとすると、相当の工夫が要るのではないか」、 「国から交付される運営費交付金の内、病院運営費交付金が平成21年度にはゼロになり、急激に減るが、このことを見通しているのか。 病院は相当大変になるが国立大学病院全体として、何か言わなければ大変なことになると思う」との指摘があり、 担当理事から、「ベッドの稼働率を上げるため、医療スタッフが頑張って医療に取り組むというかたちで運営費交付金の減に対処したい。 また、平成22年度以降、長期借入金の償還金額が減ることから、更なる余剰資金が生じ病棟設備の大規模な更新にも対応できるものと考えている」旨回答した。

○ 担当理事から予算編成方針について、次のとおり説明があった。

収入見込については、運営交付金及び退職金の残額などで約245億円、授業料・入学金及び検定料が約100億円、 附属病院収入が約194億円、雑収入が約3億円である。 また、科学研究費補助金等を除く産学連携等研究収入及び寄付金、共同研究、受託研究が約28億円である。 なお、平成16年度の剰余金4億2,800万円が、目的積立金として承認されているが、このうち2億円を取り崩して予算に入れている。

支出については、業務費、教育研究関係、診療関係、一般管理費が約510億円、 施設整備費は年度によって変わるが、現在、決定しているもので約24億円である。 また、産学連携経費は約28億円がそのまま支出される。病院の長期借入金の償還費は、約35億円である。

平成18年度の予算配分のポイントは、法人移行時の将来計画委員会の財務部会で策定された方針に沿っているが、 (1)目的積立金として、4億2,800万円の剰余金の繰越しが昨年12月20日に認められたことについて、 (2)総人件費を5年間で5%減らす必要があり、本学としては、毎年約1%ずつ減らしていく方針であることについて、 それぞれ加筆したほか、固定資産の購入について検討する必要があることなどから予備費を5億円計上した計画としている。

また、平成18年度予算配分の主なものとして、ビジョン・政策策定プロジェクト、 スマトラ沖の地震の調査、若手研究員の支援等が挙げられる。 特に、国際交流に関して、東アジアウィークを開催するほか、施設環境については、研究・教育に係る営繕事業を重点的に行うこととしている。

本日配付している平成16年度決算における大規模10大学の財務分析資料の中で、 本学の経常利益がマイナスになっているが、これは長期借入金で取得した固定資産の減価償却費が大きいことから、 単年度では少し赤字になっているもので、平成17年度以降は改善される見込みである。 また、教員1人当たりの研究費、学生1人当たりの教育費、学生1人当たりのコストについて、 データだけを見れば効率がいいと思われるが、低く抑えられているとも言える。 さらに、受託研究の実績は各大学とも徐々に増えており、本学も増えている。 なお、教員1人当たりの共同研究の実績は、東大、京大、阪大が本学より少し上位になっているが、 他の大学とはそれほど変わらない状況となっている。

○ 各大学の財務分析について、学外委員から、 「国立大学の業務実施コスト、学生一人当たりのコスト等の資料から、何を読んだらいいのか。保護者としては学生にお金をかけてほしいと思うだろう」、 「国の立場から見たら、大学への支出は、どういう評価をして見なくてはいけないのかということが大きな課題になるのではないか」等の意見があった。

また、各理事からも「これは文部科学省としても重視している数字である。本学は、学生1人当たりのコストが非常に少ない。 企業的視点で見れば非常に効率のいい経営をやっているということになるのだが、それが予算とか査定には全く反映されていない」、 「神戸大学と旧帝大と比べると、研究所の数や教員の数が全然違う。 学生の教育に基本的にはタッチしていない教員の数を除いた数で割らないと正しい比較にはならないと思う」、 「効率が良いから良い大学、悪いから悪い大学とは言えない。 ただし、この数値には、各大学の設立からの歴史的な経過が反映されていることは事実である」等の意見があった。

※国立大学法人等業務実施コスト計算書

「大学を運営する上で、納税者である国民の目から見ていくらのコストをかけたか」ということを示すもので、 損益計算書における費用相当額から自己収入等の収益を控除した業務費用や、損益外減価償却相当額、引当外退職給付増加見積額、 さらに国立大学であるがゆえに免除・軽減されている賃料等や、国立大学法人への出資額を市場で運用したならば得られるであろう金額等を計算したもの。

○ 財務諸表について、学外委員から、「もう少し分かりやすいものにしてほしい」、 「国から要求されている報告の項目と、実際に経営協議会で必要な報告の項目に差がある。 だから、実際に必要な項目に統一するように国に問いかける道はないのか」、 「この財務諸表分析から、現実に競争の中で生き残っていくためには、どうしなくてはいけないのかということについて、 各人がわかるようにしなくてはならない。そのためには、みんながこれではいけないということがわかる指標のつくり方を工夫する必要がある」との意見があり、 学長から、「財務諸表を含めて、もう少しわかりやすい形に作り直し、数値的にデータを把握・分析することを通して、 次のステップをどの方向にどのように踏み出すか検討することを平成18年度の課題にさせていただきたい」旨回答した。

○ また、学外委員から、「各部局が一体何をやって、どれだけのお金を使っているかは一切報告されていない。 しかし、そこがなければ大学の経営実態はわからない。学部の運営をどうやっているかについて、 部局長自身が大学経営を担っているのだという自覚を持ってもらわないと大学は運営できない。 そういう点からも、予算の問題を考えていただきたい。ただ、部局の独立性が強いと、全体として動いていく方向が確立しにくいという問題がある。 その辺を部局の先生方にも危機感を持っていただいて、大学全体として、何をしたらいいのかということをお考えいただくとすばらしい大学になるのではないか」、 「学部別のコスト、収益の説明が必要である。私学の場合は、文系、社会科学系が人数が多く、コストが低い。 そういう学部が他の学部の費用を負担しているのではないか。そこで対立が起こってくる。 そういう問題をいかに処理するかが、大学経営の中で非常に大事なことになる」、 「大学経営の問題点が構成員に把握できるような財務諸表を作り、構成員が課題を把握した上でビジョンを構築しなければならない。 ビジョンだけ初めに出して、実現するにはどうしたらいいかということになると、財務的な後付けとか、体系が何もないという危険性が出てくる」、 「戦略を考える時には、例えば、学部も今のままでよいかどうかも含め全部見直すことも必要である」、 「ビジョンの中で、神戸大学が持っている強み、いろいろな研究・教育の面での高い評価の部門は大事にしないといけない」との意見があった。

○ 以上の報告・討論の後、平成18年度年度計画が了承された。

3. 神戸大学基金創設について

○ 学長から、神戸大学基金の創設について、次のとおり説明があった。

大学として自立的な経営を行うためには、今後、一定量の基金を備えることが不可欠であることから、 神戸大学基金を創設し、第1期中期計画の最終年度である平成22年(2010年)3月までの4年間に基金創設キャンペーンを実行したい。 そのため、平成18年度早期には基金プロジェクトを発足させて、具体的なアクションを起こしたい。

4. 学外委員の再任・交代等について

○ 学長から、学外委員が本年度末で任期満了となること、 井上委員の後任として財団法人科学技術広報財団理事長の平野拓也氏に就任いただく内諾をいただいていること、 他の学外委員の方々は再任ということで各々内諾をいただいていることについて報告があり、了承された。

また、学長選考会議の学外委員も本年度末で任期満了となるが、 学長から、引き続き学長選考会議委員就任の要請があり、了承された。

なお、学長から、財務に関する支援をいただくため、神戸大学特別顧問として土井亨氏に就任いただいた旨の報告があった。