日時
平成20年9月19日 (金)  13:00~15:20
場所
神戸大学本部 大会議室
出席者
野上議長 (学長)、堀尾委員、土井委員、薄井委員、太田委員、中野委員、安藤委員、太田和委員、鈴木委員、河内委員、佐藤委員、谷井委員、新野委員、平野委員、矢田委員
(オブザーバー) 中村監事、枡田監事、杉村病院長
欠席者
天野委員、井戸委員、濵委員、水越委員
議事要録について
第16回経営協議会の議事要録について、特段の意見はなく、役員会として確認の上、神戸大学のホームページに公表する旨説明があった。
協議事項
[委員からの主な意見等 (○: 意見・質問、→: 回答)]
1. 国立大学法人評価委員会の評価結果 (原案) について

評価結果 (原案) について説明を行い、審議の結果、正確を期すための文言修正を国立大学法人評価委員会に申し入れることとした上で、 評価結果 (原案) を大学として受け入れることを了承した。

なお、文言修正については学長に一任することを併せて承認した。

○ 評価結果 (原案) は、余り内容に触れていないし、形式的なものになっているのではないか。 評価を行うためには、大学として取り組んだ結果、 どのような成果・課題が出てきているか等についてチェックを行う必要があるが、何も触れられていない。 このような評価は問題ではないか。

→ 本件は「平成19事業年度に係るもの」の評価結果 (原案) であるが、今後、法人評価においては、 この平成19事業年度も含めた4年間全体の評価及び中期目標の達成状況に係る評価が行われることになっており、 そこで内容に踏み込んだ評価結果が示されると思われる。また、11月上旬に訪問調査が予定されていることから、今後、 内容に踏み込んだ確認事項が届くものと思われ、最終的にはそれらも踏まえた上で、評価が適正に行われるものと考えている。

→ 国立大学法人評価委員会が、各国立大学法人の第一期中期目標期間における成果をもって、 第二期中期目標期間の資源配分を行うことが表明されているが、 具体的な内容は示されていない。自己評価書についても、いろいろ模索しながら作成している。

○ 遺伝子組換え実験に関連したことであるが、学生の入れ替わりもあり、いろいろな大学で放射線の取り扱いに関してよく問題となっているが、神戸大学は大丈夫なのか。

→ 放射性同位元素等及び放射線発生装置の取扱業務に従事しようとする者についての教育及び訓練のための講習会を毎年2回、教職員及び学生の入れ替わる時期に行っている。また、各放射線施設には、放射線取扱主任者を配置するとともに、必要に応じエックス線作業主任者を配置し、法令に定められた取り扱いが行われているかの確認を行っている。本学では、今回の件を踏まえ、レスポンシブル・ケア活動に取り組むこととし、本年10月をレスポンシブル・ケア月間と位置付け、講演会、複数の研究室による合同講習会等を行うこととしており、先ほどの教育及び訓練のための講習会については、留学生のために英語による講習も行う。

2. 平成21年度事業計画 (概算要求) について

文部科学省から、本年6月閣議決定の「経済財政改革の基本方針2008」を踏まえ、医師不足が深刻な地域や診療科の医師を確保する観点から、 医学部医学科の入学定員の改訂希望がある場合は、今年度に限り、8月21日までに要求書を提出するよう連絡があった。 医学部に意向を確認した上で、要求書を提出した旨説明があり、審議の結果、医学部医学科の入学定員を改訂することについて追認した。

3. 平成21年度概算要求の概要について

平成21年度一般歳出の概算要求基準の考え方、文部科学省から財務省に提出された本学の平成21年度概算要求の概要、施設整備費概算要求事業の評価結果等について報告があった。

○ 自治体では予算の編成に当たって、物価騰貴の影響も見込んで行っているが、国立大学法人の場合はどのような仕組みになっているのか。

→ 国立大学法人の概算要求においては、光熱費を始めとする物価騰貴の影響に関しては考慮されないことになっている。本学における光熱費及び水道料金の合計は、平成19年度実績で14億2千万円 (大学分: 9億円、病院分: 5億2千万円) で、これらは、すべて物件費の中で賄うこととなり、物価の高騰が経営に与える影響は大きい。また、来年度の予算は、前年度より3%の削減を求められており、執行計画が非常に立てにくい状況である。

○ 神戸市も震災までは不測の事態に備えて調整財源を用意していたが、震災後は累積赤字が膨らみ、現在、必死になって赤字を解消している状態である。神戸大学においても不測の事態に備えた調整財源が必要ではないか。

→ 国立大学は法人化後、自己収入の増や費用の節減などにより当期総利益 (剰余金) が生じた場合には、文部科学大臣の承認を得て、目的積立金として積み立てることが可能となっている。調整財源に相当するものとしては、この目的積立金だけであり、現在、約15億円あるが、病院の経営が非常に厳しいことから、余り手を付けられない状況である。

○ 話を聞いていると、厳しいという言葉がよく出てくるが、世間も厳しいので、国立大学だけが厳しいということではない。厳しいとばかり言っていると、段々と意気消沈してくるので、事実は事実として対策を講じていくべきである。分からないことを心配していたら、何もできなくなり、そういうことが全体に蔓延し、神戸大学の素晴らしい研究・教育が足を引っ張られたりしたら大変なことになる。我々も、サブプライム問題の影響を受けて非常に厳しい状況にある。ものは考えようで、国から運営費交付金が措置されるだけまだ良い方だと、そういう見方をして、限られた範囲の中で知恵を絞って、頑張っていく方法を考えていただきたい。

4. 神戸大学卒業生ネットワークについて

大学と卒業生との生涯にわたる連携を実現するため、卒業生情報管理システムによる卒業生ネットワークを構築し、運用を開始することについて報告があった。

5. 神戸大学基金について

本年8月末現在における神戸大学基金の募金実績と今後の見込みについて報告があった。

○ 社会情勢が厳しい中、ここまで頑張ってこられたことに敬意を表したい。今後も卒業生の全面的なバックアップを得て成果を上げられるようにお願いしたい。

6. 平成20年度神戸大学行事予定について

平成20年度神戸大学行事予定のうち、9月27日に開催を予定しているホームカミングデイ及び11月3日に開催を予定している北京神戸大学デーの概要について報告があった。

7. その他

(1) はしか (麻疹) の流行と対策について

本学で、6月末にはしか (麻疹) の患者 (疑いを含む。) が発生し、学内で二次感染が起こっている状況であったことから、感染防止のため経済学部生を7月7日から18日まで自宅待機、授業を休講とした旨報告があった。また、現在行っている感染拡大防御策及び再発防止策についても報告があった。

○ はしかとは違うが、新型インフルエンザに対して大学はどのような対策を考えているのか。

→ はしか等に関しては、既に感染症対応マニュアル (全学編) を作成して、ホームページ等で公開しているが、新型インフルエンザに関しては、はしかとはかなり対応が異なるため、現在、具体案を作成しているところである。この具体案の作成に当たっては、附属病院のある楠地区とそれ以外の地区に分けること、また、本学だけでは対応できないこともあることから、神戸市に連携をお願いしている。

(2) 平成20年人事院勧告について

本学教職員の給与は、国家公務員に準拠することとしていることから、平成20年人事院勧告の給与及び勤務時間に関する勧告の骨子について報告があった。

(3) 中長期的な大学教育の在り方について

中長期的な大学教育の在り方について、 9月11日に文部科学大臣が中央教育審議会に諮問をした内容を説明の後、 諮問内容を踏まえた本学の在り方等について、以下のとおり意見をいただいた。

○ 他の分野で評価の仕事をしているが、どうしても数字になりやすいことが目標になっており、 評価のための評価になってしまっている。評価委員の中でも、本当にそれで意味があるのかという意見も出始めている。 第二期中期目標・中期計画の策定においては、同じような目標の立て方ではなく、中身に関わるような、 評価がしづらいがあえてそこに踏み込んだ方がいいのではないか。与えられたものに対して答えを出していくのではなく、向かっていくことが大事ではないかと感じている。

○ 神戸大学としての戦略をどう考えるかが問題ではないか。 国家全体を考えて、どの分野にどういう人材が必要で、教育に何が欠けているのかについて、構成員で議論した上で、 戦略的に神戸大学らしい教育研究方針を立てるべきではないか。総合大学の利点を活かし、分野をまたがる人材を育成し、 広い意味での行政に役立つ人材を送り出すための教育を行うことも考えられる。神戸大学は、伝統的、地域的な強み、 他の総合大学にはない海事科学の分野もあり、特色の多い大学である。第二期中期目標・中期計画の策定に当たっては、その特色を活かしたものとすべきである。

○ 神戸で進めている医療産業都市構想ひとつにしても、イノベーションという観点から物事を少し掘り下げていく必要があるのではないかとよく言われており、 これが今までの制度や仕組みをそのまま引きずっていてはだめだというところから発していると考えたら、 新しい創造的なものをどのように創っていくのかというところに目を向けながら、そして端的にそこのところの連携をとるということも必要ではないかと考えている。 神戸大学が、EU と連携する分野を広げれば、神戸市においても仕組みを変えて広げることに繋がることから、EU との連携及び他にも中国、 アメリカなどとの連携をどのように展開するのかというところに注目している。

○ 大学の会議に出席したり、私立大学のたくさんのリーダーと会う機会があると同時に、人事採用の責任者として若い学生達と多く接しているが、 学生、大学の方も志ということを語るのに非常にパワーがないと感じている。私立大学では、建学の精神を強く打ち出すことによって、 学生、あるいは大学の志を具現化するツールがあるような気がする。神戸大学においても、「真摯・自由・協同」の精神、 その根本となる熱き心を持った学生をこれから育てるためにどのようにすべきか考える必要がある。

○ 世の中の変化が激しい時代であるが、時代に遅れないようにしなければいけない。国立大学の法人化も大きな変化であるが、 それに対して私立大学のトップは危機感を持っていると同時に少子化の中、競争社会の中でどう生き残っていくか必死である。 このような状況の中で神戸大学として、内部の見直しを行った上で、神戸大学の特徴を発揮することを考える時期に来ている。

○ 文部科学大臣から中央教育審議会への諮問には、非常に重要な内容が含まれており、経営協議会委員の意見を聞くだけではなく、 学内で根本的に各項目についての考えを整理して対応する必要がある。一例ではあるが、天野委員の書かれた本には一つの問題が提起されており、 この問題に対して神戸大学がどのように考えて実行していけばよいのかについて検討していただきたい。それがまとまると、 中央教育審議会への諮問に対するある種の課題について、神戸大学としてどう考えるかについて言えるようになる。

日本の大学教育、大学の政策は、世界の流れの中で非常に大きなずれが生じており、世界あるいは人類が要望している高等教育の在り方に対して、 我が国で何が欠けているのか、日本の大学が世界の中で生き残れるのかという問題を提起しながら、あるいは自覚しながら、 神戸大学の在り方をチェックしていく必要がある。その上で、神戸大学が生き残るためには、どこに特色があって、どこを伸ばせば特色を活かせるか、 また、どの点を補えばよいかについて、構成員全員の理解が必要である。

志がないのは、大学や学生だけではなく、政治家も財界もないように感じている。 これから、本当に志を持った人材を養成するための教育と大学の在り方について考えていく上で、何が必要かを神戸大学から提案できるようにしていただきたい。

神戸大学が、単に国立大学の中で生き残るのではなく、世界の中で生き残るために、どのようにすべきかについては、学内で十分に議論すべきである。

○ 企業に入ってくる学生達を見聞きしていると、学生達が弱くなっている感じがして、このままでは社会で対応できないのではないかと危惧している。 学生達に、本当に生きる力を養うための場を大学はどのように作っていけばよいのか。 大学がこれからどうあるべきかの議論に学生を参画させるのも一つの手段ではないか。 これからの神戸大学について、教員だけで考えるのではなく、 学生を巻き込んで新しい神戸大学を創っていってほしい。

→ いただいた意見は、第二期中期目標・中期計画に向けて本学の方向性を見出す上で参考とさせていただきたい。