環境に関する研究
ヒートアイランド化に伴う熱帯水草、
樹木等の日本の都市への定着
近年、地球温暖化や園芸やアクアリウムなど趣味の多様化によって熱帯性の外来水草が温帯の都市部にまで侵入してきています。代表的なものにサトイモ科の浮草であるボタンウキクサがあります。環境省はボタンウキクサが急速に繁茂し、水生生物に悪影響を及ぼすおそれがあるとして警戒しており、特定外来生物に指定して監視しています。
私たちは熱帯原産のボタンウキクサが大繁殖している大阪府の淀川城北ワンド内でボタンウキクサの種皮のついた実生をみつけました ( 2007年7月31日 ) 。また、採集した株から得られた種子の発芽率が約80%と高かったこと、城北ワンドから持ち帰った底質から、埋土種子由来の実生が確認できたことなどにより、ボタンウキクサは淀川の水温で生活環を全うしていることを知りました。さらにその安定した生育地が工場の温排水のため、冬季でも青々として水温が15℃以上もある支流に起源していることも分かってきました。
熱帯産の水草にはこの他にも、オオサンショウモ、ナガエツルノゲイトウ、ブラジルチドメグサ、オオアカウキクサの仲間など気をつけねばならないものがたくさんあります。
一方、陸上に目を移すとランタナ ( シチヘンゲ ) 、シュロ、トウネズミモチなど亜熱帯や熱帯からの木本性侵入種も多数あります。始めは珍しがって植えたものがいつのまにか手に負えなくなって都市公園、緑地、都市の社寺林、放棄地などで問題化しています。もちろん、侵入種には農耕地のイチビ、河川敷のアレチウリ、高速道路の法面のタカサゴユリなど都市部に限ったことではありません。生物多様性維持として、絶滅が危惧されるオミナエシやキキョウなど在来種の保全と侵入種の駆除は一体的な環境問題です。個人の趣味の問題ではありません。資源生命科学コース応用植物学講座ではこれら侵入種の日本の都市における越冬条件と温排水や都市のヒートアイランド化の関係を明らかにし、侵入防止を考えています。

