これまでそれなりに演劇や音楽に親しんできたけれど、「創作」となると途端に縁遠くなっている、という人はいないでしょうか。そのような大学生に向けた芸術創作の授業を、二人のアーティスト(西尾佳織さん、野口桃江さん)を招いて東京大学で実施しました。この本はその記録です。自分で何かを創作したい人のために、そんな人に向けて場をつくりたい人のために、ワークショップの具体的なプロセス、課題・作品例、受講生の声を、ライブ感たっぷりにまとめています。読むことによって創作までのプロセスを追体験してもらえるように、実際に「何か作ってみたいな、チャレンジしてみようかな」と思っている初心者の受講者の立場に合わせて書きました。
ですが同時に、授業やワークショップを提供する著者の試行錯誤の記録でもあることから、学校・大学の教師やアーティストといったファシリテーションをする側の人にも、読んで参考になる内容がきっとあるかと思います。その場合であっても、演劇と音楽の両方に精通している人はおそらく少数でしょうから、まずはまっさらな状態で、つくる側として参加するつもりで読んでいただくのをお勧めします。ぜひこの本を手元に置いて、まずは体を動かしてみる・誰かと話してみる・耳を澄ませてみる・目を見開いてみる、といったところから始めてみましょう。(国際文化学研究科・岡本佳子)