江戸時代以来、大阪(大坂)は「天下の台所」「商都」として高度な市場経済を発展させ、明治維新期以降は「東洋のマンチェスター」「工都」としての性格を持つようになり、実に日中戦争期までは日本最大の工業都市であった。繊維工業をはじめとする多様な産業発展は、原材料の輸入や製品輸出を拡大させ、神戸港を国際貿易港たらしめ、そして関西経済がアジアと深く結びつくようになった。
本書を構成するのは、関西経済とアジアとの繋がりを執筆者の各テーマから考察した歴史研究である。金融から貿易、総合商社、知的財産までテーマが広がっていることは、関西経済の成長を理解するためには多くの視点が必要であること、また、そこには多くの学術的な問や課題が埋まっていることを示している。本書をきっかけに、大阪や神戸の歴史研究が前進することを著者一同、期待している。