私は独立行政法人・経済産業研究所(RIETI)のファカルティ・フェローとして、2023年12月に地域金融機関の支店長を対象とする全国アンケート調査(回答者数2,516人)を実施しました。本書はその調査結果を基盤とし、2017年・2019年の調査との比較を通じて、地域金融の現場における事業性評価や企業支援の実態とその変化を明らかにしています。
分析の結果、資金繰り支援にとどまらず、経営課題に寄り添う幅広い支援を実現するための挑戦が地域金融機関で着実に進んでいることが確認されました。さらに、制度や方針だけでは見えない現場の実態――職員のやりがい、人材育成の難しさ、非金融支援の広がり、経営者保証に依存しない融資姿勢の強まり、税理士等との連携の深化――についても多くの示唆が得られています。
さらに、本書では研究プロジェクト外の先生方にも論考を寄稿いただき、調査結果を多角的な視点から検討できる構成としました。
本書が、地域金融のあるべき姿を考えるうえで、金融実務者・政策担当者・研究者にとって有益な指針となることを願っています。
経済経営研究所 教授 家森信善