コンテストでダンスを披露する上橋勘弥さん (上橋さん提供)

神戸大学は、個性豊かな人材が集うキャンパスを目指し、入学時に多様な選抜方法を取り入れている。その一つが、国際人間科学部発達コミュニティ学科の「表現領域受験」。同学科3年の上橋勘弥さんはダンスを専門的に学ぶため、この受験を選択し、神戸大学生としてのスタートを切った。入学の経緯や大学での学び、将来の夢などを聞いた。

神戸大学は、一般的な入学試験に加え、「志(こころざし)」特別選抜、総合型選抜などさまざまな選抜方法を採用している。発達コミュニティ学科の「表現領域受験」は総合型選抜の一環で、音楽、美術、身体表現の3分野がある。入学後は、それぞれの分野で理論と実践を総合的に学ぶ。

上橋さんは小学校高学年からストリートダンス教室に通い始めた。きっかけは、タップダンスを教える母親の勧めだった。「音楽のリズムと自分の動きが交じり合うことが純粋に楽しかった」と振り返る。中学時代も教室に通い、高校時代は学校のダンス部で活動した。入部当初、男子は1人だけ。そんな状況でもまったく気にならず、部員と一緒にダンスを創り上げていく日々は「青春そのものだった」という。

高校1年の終わりごろからはコロナ禍となった。休校が続いた時期は、毎日のように公園で踊った。「好きなダンサーの真似をしたりしながら、ひたすら踊っていました。今思えばそれが成長につながり、受験にも生きたと思います」

受験の実技試験では、「抗う」をテーマに創作ダンスを披露した。会場にはバレエやジャズダンスなどさまざまな素養を持つ受験者がいたが、自分の表現力を信じて踊った。そして2022年春、神戸大学に入学した。

テーマパークでダンサーを経験。サークルの代表にも

上橋勘弥さん 

大学ではさまざまな分野の授業があるが、やはりダンス関連の科目が楽しい。周囲の学生の表現は十人十色で、多様性に刺激を受ける。サークル活動は、K-POPグループなどのダンスを踊る「Etoile(エトワール)」に所属し、今年から代表を務める。

学外では昨年、テーマパークのダンサーとして踊る経験もした。大勢の観客に囲まれて踊るのは初めてで、自分のダンスを熱心に見てくれる人々の姿に心を動かされた。

「テーマパークで踊ったり、サークルで初心者に教えたりすることで、多くのことを学べていると思います。大学に入ってから、表現の方法も技術も進化したような気がします」。表現者として目指すのは、ジャンルにとらわれないオリジナルのダンスだ。特定の分野を専門的に学ばす、独学で歩んできたからこそ、できるのではないかと感じている。

将来の夢は「ダンサーが夢を持ち、ダンスで生きていける社会をつくること」。才能があっても、生活のために踊ることを断念する人がいる現実を変えたいと願う。夢の実現に向けた土台づくりとして、大学時代に取り組みたいと考えているのが、K-POPのダンスコンテストなどのイベント企画。ダンスに関連するSNSの発信にも力を入れたいという。

最近、福山雅治さんの歌「生きてる生きてく」の一節に共感した。

〈大きな夢をひとつ持ってた/恥ずかしいくらいバカげた夢を/そしたらなぜか小さな夢が/いつのまにか叶(かな)ってた〉

「この歌詞のように、漠然としていても大きな夢を持ち続けたい。そうすれば小さな夢がかなっていく。今までの自分を振り返っても、そうだったように思います」

略歴

うえはし・かんや 2003年、尼崎市出身。尼崎稲園高校を卒業し、2022年、神戸大学国際人間科学部発達コミュニティ学科入学。入学前の神戸大学のイメージは「堅苦しすぎず、キラキラしすぎず、ちょうどいい感じ」で、入学後も変わらないという。尼崎市在住。

 

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