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第三者意見

今回、神戸大学の6冊目となる「環境報告書2011」を読ませていただきました。

レポートの内容は年々充実してきており、環境パフォーマンスのグラフや表も見やすく改善されていると思います。また6年目を迎えて、第2期中期計画期間における環境マネジメント方針が策定され、第1期での準備段階から実践段階へと大きく前進されようとしていることが分かります。これからは、より実効力が伴う形で環境保全活動を推進し、その結果を広くステークホルダーにアピールしていくことが求められると思われます。

そのような視点から、レポートにおいて気付いた点を以下に述べさせていただきます。

環境マネジメントの浸透

環境保全活動の推進組織については、年々充実が図られているのが分かります。

今回、「環境マネジメントに関する方針」が示され、全構成員による3Rの推進、より進んだ CO2 削減目標の設定、環境マネジメントサイクルの実施と継続、といったことが謳われたのは、環境保全活動の充実に向けた大きな前進です。

現状では環境キャラバンによる活動が、各部局への環境方針の伝達に大きな役割を果たしていると思われますが、現在の組織体制からは、教員・職員・学生の各構成員が積極的に係わるような体制になっているのかどうかが見えにくいところがあります。

平成23年度より始まる携帯ポイントシステムは学生を取り込むための興味深い取り組みといえます。このような取り組みを継続的に推進し、環境マネジメント方針の実効性を高めるためにも、さらなる組織体制の充実を期待したいと思います。

成果が見えるレポート

今回は主要な読み手として想定されている学生、教職員を対象に「環境報告書を読む会」が開催され、その意見を反映するという形でのレポート作りがなされています。また、学長のメッセージが対話形式で記載されており、学長の環境への思いが直接伝わる形になっています。さらに、教育研究での先進的な取り組みや環境マネジメント活動などが具体的に示され、特に CO2の削減に関しては、成果が分かりやすく示されています。

ところで、全体として今年は去年より前進しているのだろうか?目標に近づいているのだろうか?と考えたところ、それを評価するのは難しいと感じました。

レポートの構成面もありますが、環境憲章の基本方針を具体化した目標が見えないためだと思われます。特に、1.環境意識の高い人材の育成と支援、2.地球環境を維持し創造するための研究の促進、といった項目は数値目標では表しにくいとは思いますが、具体的な取り組み内容を目標として明らかにすることで、活動の成果を分かりやすく示すことができると思います。

また、環境憲章からは国際社会と地域社会との関係を重視していることがうかがえますが、人材育成や研究活動に関しても、その二つの切り口でまとめてみる、といった事も一つの方法ではないかと思います。

現在は読み手として学内の構成員を対象にされていますが、今後は地域社会も含めた学外の読み手を意識したレポート作りを期待したいと思います。

レポートの精度を高めることは、活動内容の見直しにもつながります。環境マネジメントの浸透と両輪で進めることで、世界最高水準の研究教育拠点としての神戸大学が、環境面においても先端大学としてその地位を築かれることを期待したいと思います。

兵庫県立大学大学院会計研究科 准教授:牟禮恵美子
氏名
牟禮恵美子( むれいえみこ )
現職
兵庫県立大学大学院会計研究科 准教授
公認会計士
プロフィール
神戸大学経営学部会計学科卒業。経営学士。大手監査法人にて法定監査業務に従事した後、環境報告書・環境会計の保証・コンサルティング業務に従事。平成19年より兵庫県立大学特任准教授。平成21年より現職。
現在、日本公認会計士協会近畿会、学校・CSR委員会委員、会計大学院協会FD委員会委員長。
論文「環境報告の発展と環境会計の役割」(兵庫県立大学経済経営研究所「研究資料」)。

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