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学長のメッセージ
〜学生と学長が大学の環境について語る〜

インタビューに答える福田学長福田秀樹神戸大学長に神戸大学の環境保全活動への取り組む姿勢を聞くため、「環境報告書を読む会」に参加した学生のうち、火野坂昌也さん ( 経営学部3年 ) 、城殿篤さん ( 経営学部3年 ) 、近藤洋隆さん ( 人間発達環境学研究科博士課程後期課程3年 ) の3名が平成24年7月5日に学長室でインタビューを行いました。


( 火野坂 )
今日は、神戸大学の環境保全活動に関して、学長が考えておられること、また、私たち学生が知りたいことについて、いくつかお伺いいたします。
( 近藤 )
最近、環境や持続可能な発展という言葉が重要なキーワードになっていると思いますが、世界トップクラスを目指す神戸大学の果たすべき役割はどのようなものだとお考えですか。また、 CO2削減などは、具体的にどのような目標を掲げているのでしょうか。
( 福田学長 )
皆さんもご存じのように、神戸大学は、世界最高水準の研究教育拠点として地球環境の保全と持続可能な社会の創造に全力で取り組むことを、環境憲章に謳っています。

環境教育については、分野が非常に幅広いため、広い視野を持っていただくためには、複数の学部を横断した授業が必要と考えています。

環境研究については、個別分野を発展させるとともに融合研究を促進し、その成果を世界に発信したいと考えています。

環境保全活動については、平成22年度に第2期中期計画期間における「環境マネジメントを推進するための基本方針」を定め、3R活動の推進や CO2を15%削減するなどの目標を設定しました。さまざまな取り組みもすぐにすべてが実施できるものではないので、できることから学生、教員、職員が一体となって実施していくことをポリシーとしています。

  • インタビュー風景(左から近藤さん、城殿さん、火野坂さん、福田学長)
    インタビュー風景(左から近藤さん、城殿さん、火野坂さん、福田学長)
( 城殿 )
環境教育や環境研究に関して、複数の学部を横断した授業や複数の融合研究などは、具体的にどのようなものがありますか。
( 福田学長 )
環境教育については、学生に環境学に関心を持ってもらうこと、環境学の領域の広さと深さを実感してもらうことを目的に環境管理センターが教養原論「環境学入門」を開講しています。他に、環境問題を前提とした持続可能な開発のための教育をテーマとして、発達科学部・文学部・経済学部・農学部・国際文化学部・工学部が合同で行っている「 ESD ※サブコース」があります。

環境研究については、自然科学系、社会科学系、生命・医学系、人文・人間科学系の研究融合を促進するため、ポートアイランドに設置された統合研究拠点において、バイオマス資源を原料として燃料、化成品、プラスチックなどを作り出す統合バイオリファイナリー研究プロジェクトや汚泥分離膜による浄水処理、二酸化炭素分離膜による CO2処理などを行う先端膜工学研究プロジェクトなどの環境に関する研究が行われています。

学生の皆さんには、ぜひ自分の研究分野以外にも目を向けて、他の研究分野と融合した新しい研究テーマを見つけてほしいと思います。

※ ESD:Education for Sustainable Development = 持続可能な開発のための教育
( 火野坂 )
環境マネジメントに関する方針を達成するには、仕組み、資金、人材など必要なものが多いと思いますが、どのようにされているのでしょうか。また、今いちばん重要なことは何でしょうか。
( 福田学長 )
2011年度の取り組みをいくつか紹介します。

3R 活動として、リサイクルできるものを確実に分別するため、屋内用ごみ箱を統一することとしました。既存のごみ箱を無駄にしないように老朽劣化等による更新時期に合わせて適宜設置していく予定です。

CO2削減については、やはり設備機器更新の効果が大きいと思います。補助金等の外部資金の確保にも力を入れ、省エネ機器への更新を順次進めています。昨年夏季の節電要請時期には、ピークカット15%を達成した部局や総使用量で20%以上削減した部局もあり、運用面での取り組みも進んでいます。

環境マネジメントとしては、毎年夏季に環境キャラバンを実施するとともに PDCA の Action につなげるため、昨年は環境改善キャラバンを実施し、部局へ改善提案を行いました。

また、2012年4月に安全衛生・環境管理統括室を設置しました。学内の安全衛生管理、環境管理、研究安全管理を円滑に実施するための制度を立案、支援するための部署で、今後環境に関する新しい組織体制や制度を検討していきます。

このように設備面、運用面の改善に合わせて、新しい組織作りなどにも力を入れていますが、効果を発揮するには、やはり大学構成員一人ひとりの力が必要です。現在、一番重要なことは、大学構成員の意識改革ではないかと感じています。

( 城殿 )
大学で最大の構成員は学生です。取り組みの中には、学生の自主性に任せるところも多いと思いますが、学生の意識改革をするために、「見える化」の推進や、バイク通学の規制など検討していることはありますか。
( 福田学長 )
「見える化」は、意識を高めていくために普及させていくべきだと思います。電力の「見える化」については、一部ですが実施していますし、太陽光発電を設置している施設には、モニターを設置して発電量が一目で分かるようにしているところもあります。その他の取り組みについても、学生の皆さんに分かりやすいように数値化するなど、検討していきます。

通学については、公共交通機関を利用してもらうのが、 CO2削減に効果が高いと思います。学生のバイク通学に限らず、教職員の車通勤も CO2削減に向けて検討すべき内容ですね。

( 火野坂 )
大学として、学生に意識を持ってもらい、取り組みへ参画してもらうために考えておられることはありますか。また、学生に求めることは何でしょう。
( 福田学長 )
大学の構成員である教員、職員、学生が一体となって取り組める仕組みを考えています。昨年度からは、環境レポーティングWGの活動で、「環境報告書を読む会」を開催して学生と教職員の意見交換を行い、WGにも学生に参加していただいています。少しずつですが、学生参加の機会を増やし、学生の意見を反映させた取り組みや学生の取り組みへのサポートもできると思います。

私たち教職員と一体となって活動ができる全学的な学生組織があれば、取り組みに、さらに拍車をかけることができるでしょう。

学生の皆さんは、具体的にどのような取り組みをしたいと考えていますか。

( 火野坂 )
環境報告書を読んで、先生方の目線と学生の目線の違いを感じました。学生の意識を高めるには、学生の目線で作った環境報告書があってもよいのではないでしょうか。専門的な表現を学生や一般の方に分かりやすく噛み砕いた表現にして、それを学生に配布すれば、意識の低い学生も環境に目を向けてくれるのではないかと思います。今回、福田学長へ直接インタビューさせていただいたように、教職員の方にインタビューに答えてもらうのもよいと思います。
  • インタビュー風景(左から近藤さん、城殿さん、火野坂さん、福田学長)
    インタビュー風景(左から近藤さん、城殿さん、火野坂さん、福田学長)
( 福田学長 )
学生からすると専門的な部分があり、分かりにくいところがあるかもしれません。研究者に分かりやすく解説してもらうために直接聞きに行く方法もあろうかと思います。学生の目線で学生が環境報告書を作ることについて、できればサポートしたいですね。
( 近藤 )
大学側からのサポートがあることを知れば、環境に関して新しい提案をする学生が増えるかもしれません。学生がしたいことを伝えられる窓口はあるのでしょうか。
( 福田学長 )
環境に関する提案を受け付ける窓口として明確なものはないので、環境報告書を読む会で学生から直接意見を聞く以外に、何か考えてみましょう。
( 城殿 )
エネルギーの無駄だと思うのが、空いている教室を少人数で使用して、照明をすべて点けてエアコンを使用していることです。教職員が空き教室の鍵を閉めてしまうことや学生の組織を作って照明やエアコンを止めて回るなどを考えているのですが、いかがでしょうか。
( 福田学長 )
大学側から規制するというよりも学生一人ひとりに自覚してもらいたいですね。学生の組織を作って活動することもいいかもしれませんが、自分の家では自然に必要のない照明やエアコンのスイッチを切っていると思いますので、大学生活の中でもそれが当たり前のようになってほしいです。
( 近藤 )
最後に、環境問題に加え、東日本大震災によって日本はさまざまな面で変わらなければならない節目を迎えていますが、福田学長は神戸大学に関わる学生にこれからの時代、どのように行動してほしいと考えているかお聞かせください。
( 福田学長 )
環境も含めて、グローバルな視点で物事を見てほしいです。省エネに関して言うと、日本は個々の技術レベルが高く、世界に負けていないと思います。しかし、他の技術との融合やそれを普及させる手段について遅れているのではないでしょうか。それが進めば日本は、世界で問題となっている環境、エネルギー、食料問題などを解決することができるはずです。

もう一つ、本物を見分けて価値が判断できる力を身につけてほしいです。情報化が進み、あらゆる情報が手に入れられる時代です。しかし、現場に行って自分の目で本物を確かめないとその本当の価値は分かりませんし、感動もしません。特に学生の皆さんは、すばらしい研究があると知れば、ぜひその研究者の話を聞きに行ってください。本物を見分け、価値を判断できる人になって人類に貢献してほしいと願っています。

学生の参加者

  • 火野坂昌也さん
    火野坂 昌也さん
    ( 経営学部3年 )
  • 城殿 篤さん
    城殿 篤さん
    ( 経営学部3年 )
  • 近藤 洋隆さん
    近藤 洋隆さん
    ( 人間発達環境学研究科博士課程後期課程3年 )

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