Kobe University

シンポジウム『データサイエンスの現状と未来』を開催しました

2017年05月19日

2017年5月15日、出光佐三記念六甲台講堂にて、「データサイエンスの現状と未来」というテーマでシンポジウムを開催しました。当日は、学内外から150名を超える参加者があり、この分野への関心の高さが伺えました。

シンポジウムの発起人である齋藤政彦副学長 (共通教育・数理データサイエンス担当) が司会進行を務め、昨今のビッグデータや人工知能の技術的発展を受け、本学においても、データサイエンスの教育・研究を進めていくため、本シンポジウムを開催した旨の挨拶がありました。その後、藤田誠一理事・副学長 (教育担当) から、神戸大学が、総合大学である点を活かした文理融合の研究を推進していることや、その研究内容を活かした臨場感のある教育に取り組んでいることを紹介するとともに、本シンポジウムのテーマであるデータサイエンスが、理系のみならず、今後は、社会科学系など様々な分野に可能性があることに期待している旨の挨拶を行いました。

続いて、第一部では、NEC・森永聡・主席研究員及びNTT・上田修功・機械学習・データ科学センタ代表にそれぞれ基調講演を行っていただきました。

森永聡氏には、「人工知能ビジネス活用の四つの波」と題して、西暦2000年頃からビジネスの場で利活用されている人工知能についてご講演いただきました。四つの波には、これまでの①人が処理できない大規模なデータを処理させたり (大規模データ見える化システム)、②将来どうなるかといったことを予測させたりすること (大規模予測システム) に加え、今後は、③複雑な計画や戦略を立てさせたり (大規模意思決定システム)、④人工知能同士に交渉・調整させたりすること (人工知能間の交渉・協調・連携) に利用される可能性が出てきていることについて、人の顔認証・商品の適正価格予測などを例にお話いただきました。

上田修功氏には、「自然科学、社会科学における人工知能研究」と題して、「人工知能」とは何かといった点をスタートに、医療の効率化・宇宙撮像データへの機械学習の活用について、実際の比較・分析データや画像処理データを提示しながらご講演いただきました。また、時空間統計解析というホットな話題も取り上げられ、ニコニコ超会議での混雑状況の可視化や2020年東京オリンピックに向けて渋滞回避のための誘導方策のシミュレーションなどに活用されていることをお話いただきました。さらに、副センター長を務める理化学研究所革新知能統合研究センターで行っている研究についても、その一端をご紹介いただきました。

第二部では、産総研・本村陽一・確率モデリング研究チーム長による基調講演、コープこうべ・藤岡浩二・商品政策総括による講演を行っていただいた後、齋藤政彦副学長による新センター設立に向けての講演を行いました。

本村陽一氏には、「次世代人工知能技術研究開発と社会実装の課題~人と相互理解できるAIに向けて~」と題して、社会実装の観点から、社会・産業とのパートナーシップが重要であるため、産業技術総合研究所の中に人工知能技術コンソーシアム (AITC) を設置し、日々研究やワークショップを行っていることついてご講演いただきました。買い物や予防医療を事例にしたお話では、人の行動パターンから得られるデータを収集することによって、様々な面から私たちの生活を捉えて、よりよい生活を送るための研究に活かされていることが分かりました。

藤岡浩二氏には、「コープこうべの取り組み」と題して、小売・流通業での購買データの活用についてご講演いただきました。地域に根ざしたコープこうべの活動について、ビール・発泡酒の販売や商品の同時購入のデータといった顧客の購入動向に基づき、日々様々な戦略を立てて、商品開発や商品陳列を行っていることについてお話いただき、参加者も消費者の1人として興味深く聞いていました。

齋藤政彦副学長の講演「神戸大学数理・データサイエンス教育研究センター (仮称) の設立に向けて」では、現在の計画について紹介がありました。

また、第一部及び第二部で行われたパネルディスカッションでは、さらに学外から、日本総研・西口健二・理事、コープこうべ・本木時久・執行役員、Code for Japan・関治之・代表 (神戸市CINO)、日本総研・國澤勇人・次長をお迎えし、学内からシステム情報学研究科・大川剛直・教授、経済経営研究所・上東貴志・所長が加わり、第一部「人工知能の現状と未来」、第二部「データサイエンスにおける社会実装、産学・地域連携、人材育成の可能性」と題して、各方面からの意見交換が行われました。

最後に、小川真人理事・副学長 (研究・産学連携担当) から、ご講演・パネリストとしてご登壇いただいた方々へのお礼とともに、人工知能やデータサイエンスの発展により、よりよい未来が拓けることを祈念する旨の挨拶があり、盛会のうちに終了しました。

講師及びパネリストの所属等は以下のとおり。

講師紹介 (ポスター掲載順)
  • 森永 聡  NEC中央研究所データサイエンス研究所主席研究員
  • 上田 修功  NTTコミュニケーション科学基礎研究所上田特別研究室長 (NTTフェロー)、機械学習・データ科学センタ代表、理研革新知能統合センター副センター長
  • 本村 陽一  産総研人工知能研究センター首席研究員、確率モデリング研究チーム長
  • 藤岡 浩二  生協コープこうべ企画政策部商品政策統括
パネリスト (講師以外、ポスター掲載順)
  • 大川 剛直  神戸大学システム情報学研究科教授
  • 西口 健二  日本総研理事
  • 上東 貴志  神戸大学経済経営研究所長
  • 本木 時久  生協合コープこうべ執行役員
  • 関 治之  神戸市チーフ・イノベーション・オフィーサー、Code for Japan 代表
  • 國澤 勇人  日本総研人材育成部次長

関連リンク

(学務部教育推進課)