人口の集中と都市化、農水産業による過度の利用、高度経済成長に伴う埋め立て・地形改変や水域の富栄養化などにより、日本の水辺・海辺の環境は大きく傷つけられてきた。これらの環境は、化石燃料の大量消費に伴う地球規模の環境変動による影響とも無関係ではなく、さらなる劣化が危惧される状況にある。一方、化石燃料に替わる新しいバイオマス資源として、水圏に生育する光合成生物(微細藻類や海藻など) が大きな注目を集めており、またこれらの生物の持つ機能を様々なレベルでの環境改善のために利用しようとする試みも多くなされている。太陽エネルギーの利用拡大を考えた場合、地球表面の2/3を占める海面利用拡大が不可欠なのは明らかである。また人類が数千年にわたって利用してきた陸上の植物と比べて、藻類はこれまで極めて限られた研究・開発しか行われてきておらず、今後の利用に大きな可能性を秘めている。これらの目的の実現のためには、我々の藻類に関する理解を深め、様々な技術開発を行う必要がある、その一方で新たな利用・開発が水環境に与える影響も慎重に検討する必要がある。
そこで、水圏の環境や水圏の藻類・植物に関する研究を様々な側面から行っている専門家が集まって、 近畿圏・大阪湾を中心とする陸域・海域の水環境の現況と問題点、これらの環境に生育する水生植物・藻類の特性、藻類の生物工学的な利用に向けた研究の動向や課題などに関するシンポジウムを開催した。
本書はそれぞれのテーマについて、各著者がシンポジウムで報告された内容をもとに加筆したものである。
自然科学系先端融合研究環 内海域環境教育研究センター教授・川井浩史、大学院理学研究科教授・三村徹郎
内海域環境教育研究センター 特命教授
/理学研究科 教授 /理学研究科 教授 /内海域環境教育研究センター 准教授 /総合科学 /環境総合テクノス /自然科学系先端融合研究環 特命助教 /早稲田大学 教授 /農業・食品産業技術総合研究機構 /東京農工大学 教授 /先端バイオ工学研究センター 教授 /科学技術イノベーション研究科 教授 (掲載順)