西洋の無数の名画のうちから50点を厳選し、それを簡潔に解説して、それぞれの絵画の基本的な見方や要点を紹介。
西洋では少しでも大きな町に行けば立派な美術館があり、美術鑑賞は人々の生活にすっかり根づいている。学校教育でも美術史は必修であり、普通の大人であれば美術史の基本的な知識が常識として備わっている。わが国では、美術館や展覧会は多くの観客を集めているが、美術を好きな人と関心のない人とが極端に分かれており、好きな人は多くても、知らない人は何も知らないという状態である。
西洋では、美術は単なる装飾ではなく、東洋における文字のような重要な役割を果たしてきた。美術は目を楽しませるだけでなく、豊かなメッセージをもっており、美術が文化の重要な一角を担ってきたのである。美術史教育がなされていない日本では、美術というものは各人の勝手な感性や好き嫌いで見れば十分だと思われているが、それはまちがいである。どんな美術作品にも、その背後にある文化や思想が反映されているため、それに関する知識は鑑賞に不可欠である。
本書は、西洋の無数の名画のうちから50点を厳選し、それを簡潔に解説して、それぞれの絵画の基本的な見方や要点を紹介したものである。あえて、★をつけてその重要性を示した。
本書によって西洋美術の精髄にふれ、その豊かで奥深い世界への目を養っていただければ幸いである。
人文学研究科准教授・宮下規久朗