第三者意見

日本の代表的な総合大学の環境報告書として、地球規模の環境問題の改善のための最先端や学際融合の科学技術研究、人材育成など研究・教育面で環境活動の社会貢献を強調した優れた内容となっています。学生に対し、教育プログラム「環境学入門」、「ESD」などを通じて、地球環境問題を視野に入れたグローバルな知識を身につけさせるだけでなく、「環境報告書を読む会」の開催や「神戸大学環境学生調査隊」の結成などにより、将来的にはグローバル社会で活躍できる人材育成の努力をされていることは評価できます。学生の意見を環境報告書の作成や環境保全活動に取り入れ、工夫・改善していることは、特色ある取組みといえます。今後は、環境管理の実施体制や環境目標・環境計画などを明確に記載し、その達成度などを学内外の利害関係者(ステークホルダー)にアピールしていくことが求められます。

以下に気づいたことを記しておきますので、参考にしていただければ幸いです。

  1. 環境に関わる様々な法律が大学にも適用されています。神戸大学に適用されているエネルギー、水、大気、廃棄物などの環境関連法規、大学内での役割分担及び法律の順守状況について、環境報告書に掲載する必要があると思います。その上で環境パフォーマンスについて説明されると理解しやすくなり、積極的な環境負荷低減、環境改善活動につながると考えます。
  2. 環境パフォーマンスの中で、エネルギーについては、「二酸化炭素削減量は平成16年度を基準とし、全学的取組により第2期中期目標期間中に原単位で15%削減」と記述されていますが、その算定の根拠が明確ではありません。省エネ法など法律による削減義務や実現するための計画を提示する必要があると思います。積極的に温室効果ガス削減を技術革新により達成しようとされている神戸大学ですから、目標実現のための先進的かつ具体的なエネルギー管理計画の提示を期待します。廃棄物など他の項目についても、より具体的な取組み、目標設定を期待します。
  3. 「環境目標・環境計画の達成度」の項目を設け、エネルギーやそれ以外の項目の数値目標と達成度を一覧表などで明記し、進捗状況を定量的に把握できるようにすることが望まれます。
  4. 「環境に関する教育研究とトピックス」で研究例などが紹介されていますが、神戸大学では多くの環境関連研究が実施されていると思います。これらの環境関連研究について、研究課題一覧表をまとめて報告書に掲載されれば、大学の研究活動の社会への積極的な情報発信になると考えます。
  5. 内外のコミュニケーションも重要です。特に地域住民など外部のステークホルダーとの活動や発生する環境関連情報についての対処も記した方がよいと思います。
岡山大学環境管理センター 准教授:竹内文章
氏名
山田 悦 (やまだ えつ)
現職
京都工芸繊維大学環境科学センター 教授
プロフィール
京都大学理学部化学科卒業、同大学院理学研究科修士課程、同博士後期課程を経て、1993年より京都工芸繊維大学工芸学部講師、1998年同助教授。2006年1月より現職。
また、1993年より京都工芸繊維大学環境科学センター次長兼任。
現在、大学等環境安全協議会会長、京都府環境審議会委員など京都府、京都市、兵庫県の環境関連委員会委員。
琵琶湖など閉鎖性水域における難分解性有機物増加の原因解明、大気汚染物質の越境汚染などの動態解析、処理困難廃棄物の分析と処理などを研究テーマとしている。
京都大学理学博士。
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