1月は、透き通った出汁の光るおでん、2月は寒鰤(ぶり)を刺身やしゃぶしゃぶで。3月はボタンエビ、4月は筍と桜鯛、5月は鮪、6月は穴子と鰻、7月には鱧(はも)を、どう調理しましょう。大阪生まれのマグマ学者(著者)と東京出身の姪と一緒に、一風変わったグルメ散歩はいかがですか。8月のぐじと鯖、9月の蕎麦と鮑(あわび)、10月の松茸と栗を、どう食べるかはお楽しみ。11月には芋焼酎とワインを飲み比べ、締めくくりの12月は河豚(ふぐ)。12カ月かけて、主に関西で和食を食べ歩きます。
よくあるグルメ旅と一線を画すのが蘊蓄の深さ。マグマやそれが冷え固まった石のつぶやきに耳を傾け、地球がどのようにして今の姿になったのか、日本列島はなぜ火山や地震が多いのかなどを調べるマグマ学者ならでは。和食を美味しくいただける秘密が、文系女子の姪にもわかるように披瀝されます。
わたしたち日本人は、地震や火山噴火などの試練を日本列島から与えられてきました。これからも与えられ続ける運命にあります。しかし同時に数えきれないほどの恩恵も授かっており、その一つが「和食」であることを、地球史を背景に語ります。四季折々の日本の料理や酒を嗜むときに、それらを育む日本列島の地勢や自然の成り立ちを知っておくことは、味わいを豊かにします。
「食べものって、その背景にある自然の営みを知ると、ずっと深く味わえるのね!」姪御さんも得心したようです。彼女の素朴な疑問に刺激を受けながら、ときにユーモラスなたとえ話も飛び出し軽快なテンポで話が展開します。また、随所に施された飯箸薫さんのイラストが、イマジネーションを広げるのを大いに助けます。
2013年、和食がユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されました。そんな今こそ、旬の食材と日本列島を食べつくすようなグルメ散歩をご一緒にどうぞ!
(岩波書店サイト:「和食はなぜ美味しい—日本列島の贈りもの」編集部からのメッセージより許可を得て転載)
理学研究科・教授 巽 好幸