第三者意見

第三者意見

神戸大学環境報告書2019の第三者意見報告の機会を頂き、ありがとうございます。私自身、大学がどのように環境に配慮すべきかを学ぶよい機会を得ました。

本報告書に加え、過去の報告書も拝見しました。神戸大学では、2006年度より毎年、環境報告書の作成とWeb公開を行い、今回がその14回目となります。このためには、毎年、多量なデータを収集・整理することが必要で、神戸大学がいかに環境フレンドリーな大学を目指して真摯に取り組んでいるかを理解できました。同じ事業を継続することは困難な時代となり、得てして規模縮小や中止となりがちですが、10年を超える長期にわたり、丁寧に情報収集・整理を継続されていることに敬意を表します。また、廃棄物や地球温暖化ガスなどの排出削減動向を大学全体でまとめるだけでなく、「環境に関する教育研究とトピックス」で紹介される「廃棄物の発生抑制に取り組む神大発「ごみじゃぱん」の誕生から継承へ」、「環境報告書を利用した環境教育」、「酪農場におけるバイオガスユニットを用いた資源循環の実証試験」など、様々なレベルでの取り組みがあり、大学全体で環境問題が重視されていると感じました。一方、環境パフォーマンスによると、CO2排出量などの項目で、多数が2014~2018年度の過去5年間で着実に低減傾向にあることが読みとれます。とりわけ、廃棄物量、水使用量、単位面積あたり電気使用量において5年間で5-10%の明確な削減がされたのは、神戸大学の様々な活動の成果と読み取りました。

このように、多くの面で環境負荷削減の成果を上げられていますが、「比較」の観点を取り入れていただけると、その成果をより強調でき、さらにいい取り組みが可能になるのではないかと感じました。例えば、ゴミ発生量等、綿密な数値が示されていますが、その値がどの程度低いかは、私自身には理解困難です。その値をその他の値と比較して説明いただけるとその活動の意義・効果が明確となります。比較の仕方としては、学外(他の事業所や他大学)もありますし、過去との比較もあります。幸い、環境報告書は2006年度から発行されていますので、最初のデータと比較して図化していただくと、現在がどのような状況になったのかがよく理解できると思います。実際、廃棄物は大凡2006年の1600トンが2018年には1000トンと37%も削減されており、最近のデータだけでは見えない点が分かります。また、生協とセブンイレブンのように類似の事業の場合、学内でも比較が可能で、それぞれのグッドプラクティスを相互検証していただければと思います。例えば、空き缶等の回収が生協では記載されていますが、セブンイレブンでは記載がなく、どうなっているかが気になります。さらに、水道使用量や廃棄物発生量などの公共団体が関わる情報は比較的得やすいので、それを学内の値と比較していただければ、時々の影響(猛暑、エネルギー危機等)が把握でき、神戸大学における活動の成果が明確になると思います。

私も大学人として、現在の大学を取り囲む経済状況の中で、環境問題に焦点を当てることがいかに大変かは理解していますが、上記のコメントをご参照いただきつつ、今後も継続的に進められることを期待しています。

氏名
藤井 滋穂
現職
京都大学 地球環境学堂 地球親和技術学廊 教授
プロフィール
京都大学工学研究科衛生工学専攻修士課程修了、工学博士
アジア工科大学助教授(1991~1993)
立命館大学理工学部助教授(1993~1998)
IWA(国際水学会)フェロー、AIT(アジア工科大学)学外特別教授
専門分野
 水環境管理(流域汚濁機構解明、汚濁制御)、水環境衛生
主な委員等
 土木学会環境工学委員会委員長(2017.4-2019.3)
 環境技術学会副会長(2012.8-)
主な著書
 自然の浄化機構(技報堂出版、分担執筆、1990)
 琵琶湖-その環境と水質形成-(技報堂出版、分担執筆、2000)
 実用 水の処理・活用大辞典(産業調査会 事典出版センター、分担執筆、2014)