学長のメッセージ

21世紀での環境問題解決の必要性は、学長1987年に開催されたブルントラント世界委員会の報告書『Our Common Future』で指摘され、『21世紀は環境の世紀』だと謳われました。21世紀となってすでに14年が経過し、地球環境問題の解決がいよいよ切迫したものとなってきています。地球温暖化や頻発する異常気象、難題ばかりですが、さらにこれらが原因となって、資源、エネルギー、食糧などの国際的な紛争にまで発展しつつあります。

これらの問題を包括的に解決するため国連が主体となって、2005年『ESD(Education for Sustainable Development)』、すなわち『持続可能な開発実現のために実践する人材の教育』を公表しました。日本政府も『国連持続可能な開発のための教育の10年』実施計画を推進してきました。

神戸大学においてはすでにこの『ESD』活動を先取りして、世界の環境問題の解決を目指し、『世界最高水準の研究教育拠点として、地球環境の保全と持続可能な社会の創造に全力で取り組む』ことを環境憲章に謳いました。これにより、神戸大学の目指す姿として、世界の環境先進大学、すなわち“Kobe Smart University”となることを明確にしました。

本学では、これら地球規模の課題を積極的に解決し持続可能な開発を実現するため、人材の育成に力を注いでいます。学際融合による研究促進を行うとともに7学部合同で実施しているESD授業等を含め、グローバル社会において持続可能な問題解決のために発想し、実際に行動できる人材を世に送り出すことに注力しています。

地球環境を維持し未来へと連なる環境を創造するための世界最高水準の研究加速

本学の環境研究において、統合バイオリファイナリー研究プロジェクトや先端膜工学研究プロジェクトなどが近年注目を浴びています。先端膜工学研究は、世界最高水準の機能を有する分離膜の開発を目指した研究分野であり、放射性物質の処理にも寄与できることから、先端膜工学研究拠点施設を建設し、研究を促進しています。

そのほか新たな環境研究として、省エネに革新的な効果を発揮するパワーエレクトロ二クスの研究のほか、海洋科学として風力シミュレーション技術と精密制御機械技術による世界最先端の空中風力発電に着手しています。原子や分子を用いた有機半導体エレクトロニクスやGFPシグナルのバイオの研究、高効率エンジンやロボッティクス、さらには太陽系の起源からカイパーベルトまで、幅広い世界最高水準の研究を融合させ、地球環境を維持し創造する研究を加速させています。

環境意識の高いグローバル人材の育成と支援

地球環境問題の解決には、非常に幅広い知識と視野が大切です。特に欧州を中心として環境規制や法律を制定する欧州環境議会の動向やISOモノづくりに密接に関係する『Eco Design』の進展は、時々刻々と変化し、グローバルでの環境意識を自らの“Common Sense”とすることが必要です。本学では、複数の研究科の連携によるグローバル教育のプログラムや海外の大学と協定を締結して学生を海外に派遣するプログラムなどがあります。これらの教育プログラムの他、全学共通授業の教養原論『環境学入門』やESD授業等を通じて、グローバルな知識を身に付け、多くの人材が環境関連世界のリーダーとなっていくことを目指しています。2020年オリンピックイヤーには、神戸で環境の国際会議を主催し、本学環境先端研究を世界に発信すると同時に、環境意識の高い本学学生のグローバル人材育成の実証の場としていければと考えています。

率先垂範として一人ひとりの環境保全活動の協力推進

昨年度までの全学の環境保全活動は、『環境管理センター』が中心となって推進していました。本年度からはさらなる環境保全活動推進のために、『環境保全推進センター』が全学的な活動推進の母体として新設されました。新センターにより、省エネルギー、省資源を含めた全学の環境保全活動がさらに推進加速されるものと考えています。あわせて一昨年、環境レポーティングWGの取り組みである「環境報告書を読む会」に参加した学生が、「神戸大学環境学生調査隊」を結成し、本学の公認団体となって活動を開始しました。学生目線での環境活動のあり方に、率直な提言を報告しています。環境保全推進センターによる全学的な環境保全活動と、草の根的な神戸大学環境学生調査隊が協力し合いエコ・ウェーブを生み出し、学内のみならず、地域社会へも波及する大きなエコ・ウェーブへと発展していくことを期待しています。

神戸大学長秀樹