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環境に関する教育・研究と地域連携

環境に関する研究

アクションリサーチと ESD

経済学研究科教授石川雅紀

通常の科学的方法論では、観察対象に対して、第三者的な立場から客観的に観察します。出来うる限り、観察対象に影響を与えないよう、干渉しないように注意します。人間や社会を対象とする人文社会科学では非常に重要な点です。一方で、アクションリサーチでは、対象に入り込んで観察します。もちろん、科学者が自らの学説や信念を観察対象者に押しつけたり、説得したりするという意味ではありません。観察対象者と対等の立場で一定の関わりを持ち、その行為を通じて対象者の視点・考え方を理解するという意味です。

私は、参加型手法に興味を持ち研究しています。過去に、名古屋の循環型社会像と移行するパスを選択するプロジェクトに参加しました。循環型社会といっても、市民が今以上に徹底的に分別するような社会もありますし、反対に排出時にはまとめて排出して、分別プラントの機械システムで徹底的に分別する社会も考えられます。どちらも徹底的にやれば循環型社会を実現できるでしょう。科学的にどちらが良いと言えるわけではなく、これは選択の問題です。私の役割は、市民がよく理解した上で選択するためにこれらの選択肢を判りやすく描くことでした。

無数に考えられる選択肢の中で、どれを選んでシナリオとして示すか、シナリオでは何に重点を置くか、大変悩みました。シナリオの作成過程と、それに基づいた市民の議論を通じて、気づいたことがありました。市民がこの問題を視る視点と私が専門家としてこの問題を見る視点が全く違っていたのです。私は専門家として、名古屋という社会とその構成員を客観的に眺める視点からシナリオを考えました。それぞれのシナリオで資源消費量、廃棄物排出量、環境負荷物質の排出量などのどれが重要なのだろうか、市民はどれが重要と考えているのだろうかと悩んでいたのです。

実際には、市民はそのような定量的なフローにはあまり興味を示しませんでした。市民が関心を持ち議論したのは、それぞれのシナリオに描かれた社会の中で構成員が衡平な役割分担となっているか、自分の役割は何かといった事でした。これは社会の中に視点をおいた見方です。気が付いてみれば当然のことですが、専門家として訓練を受ければ受けるほどこのことに気が付かなくなります。

発達科学部、文学部、経済学部は連携してアクションリサーチによる ESD カリキュラムの開発に取り組んでいます。これは、学生をまず大学の外のフィールドに出し、そこで実社会の課題に取り組むことと、大学での座学を循環的に繰り返すことにより問題を解決しようとする意欲と能力を兼ね備え、持続可能な社会に向かうリーダーとなれるような教育をしようとするものです。テーマは、多種多様なものがありますから、個々の説明は省きます。 

ESD:Education for Sustainable Development
「持続可能な開発のための教育」

バーベキューの様子
ESD アクションリサーチフィールドワーク
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