環境に関する教育研究とトピックス環境に関する研究

能勢町における農業振興に関する調査研究

経済学研究科 准教授 衣笠 智子

大阪府豊能郡能勢町は、都市近郊に位置しますが、中山間地域であり、農業は主要な産業となっています。中山間地域の農業は、写真の棚田(傾斜地に、階段状に作った田)のように規模が小さいものが多く、効率的な農業経営がしにくいという性質があります。また、農業人口の高齢化もあいまって、耕作放棄地(過去1年以上作物を栽培せず、しかもこの数年の間に再び耕作する考えのない耕地)の増加が問題となっています。耕作放棄地は、国土・環境の保全にとって大きな問題であり、農業の効率性を向上するという観点からも、農業公社のような農地利用集積円滑化団体(農地の規模拡大・集積を促進するために、農地の貸借・農作業の受委託を行う機能を持つ団体)を設立し、農地の集積化を図ることが課題となっています。本研究は、山口三十四名誉教授(神戸大学)・中川雅嗣研究員(神戸大学・近畿農政局)を研究協力者とし、能勢町と共同して行いました。農家アンケート、農業者・他の農地利用集積円滑化団体・農協への聞き取り調査、多くの文献調査を行い、能勢町の農地集積や地域振興について、政策提言をしました。

特に、農家アンケートから、農業経営の縮小や離農で、農作業の委託や農地の貸付が必要な農家が現在でも約2割もあり、高齢化と後継ぎがいない農家が多いことを考えると、近い将来、農地の売買や受委託を行う受け皿が、是が非でも必要になることが示唆されました。農家の期待する理由は、能勢町の公社だと信頼できるという意見が約7割と非常に多く、つづいて、どんな手段でも農地の貸付や農作業委託を希望しているという意見が約2割であることが分かりました。ただ、農地の貸借や農作業の受委託だけでは赤字経営となると考えられるため、道の駅(国土交通省により登録された、休憩施設と地域振興施設が一体となった道路施設のことで、能勢町の道の駅は、新鮮な農産物やその加工品の販売で大変人気です。)も何らかの形で参画し、加えて都市農村交流活動や地域ブランド等の取り組みも具体化していく必要であると提言しました。

本研究は、メンバーが協力し精力的に取り組み、平成23年度だけで、207ページの詳細な報告書をまとめ上げることができました。農業の高齢化や耕作放棄地の問題は、多くの地域で問題になっているはずで、どの地域でも、農地利用集積円滑化団体のニーズはあると予想されます。この研究は、能勢町だけでなく、他の市町村にも参考になると思われるので、積極的に外部にPRを行っています。

関連URL:http://www.econ.kobe-u.ac.jp/~kinugasa/

  • 能勢町の棚田
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