第三者意見

神戸大学環境報告書2016を読ませていただき、神戸大学が、日本を代表する総合大学として世界規模での環境問題に対して確固たるスタンスの基、真摯に対応されていることがとても良く伝わってくると感じました。

冒頭の環境憲章で、神戸大学の環境に対する基本理念と、理念を具体化するための基本方針が掲げられています。基本理念、基本方針ともに、極めて簡潔明瞭に書かれており、学生や市民の方々も神戸大学の進もうとしている道を容易に理解できると思います。環境報告書は、この理念と方針に忠実に沿った構成・内容になっていると思います。

まず印象に残ったのは、学長のメッセージがインタビュー形式になっていることです。特に今年度は学生との対談になっており、神戸大学の環境問題への取り組みが、大学の管理組織だけでなく、学生を含めた全学的な活動であることが強くメッセージとして伝わってきます。また、「環境に関する教育研究とトピックス」では、カリキュラムとしての教育にとどまらず、学生や大学生協の活動、いろいろな研究フィールドでの成果など、非常に幅広い学内でのアクティビティが紹介されており、環境憲章基本方針の「率先垂範」を強く感じることができました。その中でも、特筆すべきことは、環境報告書を読む会です。この活動は、環境報告書を広く学生に知ってもらうために平成23年度から継続して行われていますが、その中で出てきた学生の意見が次年度の環境報告書に反映されています。このような双方向のコミュニケーションを継続した結果、現在のような大変読みやすく、親しみやすい環境報告書が出来上がっていると思います。

続いて、「神戸大学の環境パフォーマンス」では、神戸大学の環境保全に対する取り組みがわかりやすく解説されています。紙面構成やグラフは統一感があり、とても見やすく、電気やガスの削減量の表現を世帯数を使うなど、学生等が身近に感じられるような工夫が随所に施されています。ただ一点気になった個所を述べさせていただくと、CO2の排出量のグラフのみが、前年度からの削減量になっていることです。他のエネルギー使用量の推移が絶対値による比較になっているので、少し違和感を感じました。

このグラフの計算根拠には、CO2排出量のデータがあると思います。前年度からの削減量グラフに加え、CO2排出量の絶対値の推移を併記することで、神戸大学のパフォーマンスに対するより正確な理解が得られると思います。

神戸大学は、平成23~27年度のCO2排出削減目標を、平成16年度基準で15%削減という高い目標を掲げて活動されてきました。結果的には11.3%の削減となりましたが、そこには、東日本大震災等も含め、様々な要因があったと思います。目標の到達・未達ではなく、なぜ11.3%という数字になったのか、学内外の様々な要因をしっかりと解析し評価すること、そしてその結果を次世代へ残すことが、次のサイクルへの糧となります。その意味で、次年度以降の環境報告書に期待したいと思います。

最後に、本報告書は、高くかつ幅広い内容、統一感があり読みやすいデザイン、そして学生等を含めた大学としての一体感が感じられる非常にクオリティの高いものであると思います。この活動のクオリティを維持・継続することで、学生を含めた全学的な環境保全活動の先駆者として、日本全国の大学を導いていただきたいと思います。