環境に関する教育研究とトピックス環境に関する教育

環境・食品・産業衛生学講義について

保健学研究科 教授 中澤 港

私は、保健学科検査技術科学専攻の2年生を対象に、前期に「環境・食品・産業衛生学」という講義を行い、後期にその内容を踏まえた「公衆衛生学実習」を行っています。

本稿では、そのうち「環境・食品・産業衛生学」の講義に的を絞って説明します。第1回目の講義を「環境の概念と地域生態系」と題し、環境とは何か? 人間にとっての環境とは何か?といった本質論から始めるのが、この講義の特徴です。他の専門科目とまったく毛色が違い、臨床検査技師という専門職とは遠く感じる学生が最初は多いのですが、地球生態系、生態系の構成単位、生命が存在するための自然環境条件、体内環境の恒常性を保つことの重要性、人間が他の生物に比べて桁外れに大きい環境形成作用をもつために居住域を拡大してきたこと、その分、意図しなかった間接効果が積み重なって環境問題が起こってきたこと、という順序で話を進めることで、ヒトの健康を扱う専門職者にとっての、環境と健康の相互作用を学ぶことの重要性が自然に納得できるように工夫しています。

第2回からは各論に入って、「大気・温熱・気圧」、「騒音・振動・放射線」といった物理的環境因子が健康に与える影響を説明した後、「栄養」「食品衛生」「感染症疫学」の3回で、自然環境から食物という形で栄養をとりこまなくては生きていけない人間が、どのような形でそれを管理しているかと、生物学的環境条件の大きな要素である感染症の病原体と宿主であるヒトとの相互作用を、地域生態系の相互作用の1つと位置づけて説明しています。次に化学的環境として「化学物質の管理」「廃棄物と都市環境」について、個別の事例を出して理解しやすくするように工夫しながら、条約や法律に基づく管理の枠組みについても説明します。最後は「毒性学入門」「公害と地球環境問題」「リスク論」という3回の講義で、主として物理化学的環境条件がヒトの健康に有害作用をもつメカニズムや対策の方法について説明しています。

「環境・食品・産業衛生学」講義の詳細は、http://minato.sip21c.org/envhlth/を、他の情報については、http://minato.sip21c.org/(個人webサイト)をご覧いただければ幸いです。環境教育は机上の空論になってしまってはいけません。広くいろいろな立場の人が、現実の生活に根ざした議論をし合って利害をすりあわせることが必要です。そこで私は、14年前から、「環境自由大学青空メーリングリスト」(http://www.bluesky-ml.org/)という、メールアドレスさえあれば誰でも無料で自由に参加できる議論の場を共同運営してきました。過去の議論がすべて公開されていますので、関心のある方は、お気軽にご覧いただければと思います。

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