環境に関する教育研究とトピックス

トピックス

エビデンスに基づいた食品ロス削減に向けた産官学の実践的取り組み

経済学研究科 特命講師 小島 理沙(NPOごみじゃぱん理事)

2年前より環境省の受託研究として、家庭系の食品ロスの発生抑制に対する研究を、RCT実験等を通じて行ってきた。それらの結果をふまえて、2020年度は普及にむけた取り組みを行っている。

家庭系食品ロスは、食べられるものを捨てるという行為自体が「もったいない」だけでなく、ごみの減量を政策目標としている自治体にとっても重大な課題であり、全国の自治体がそれぞれ様々な方法で取り組みを展開している。ただ、これまでは各家庭に「もったいないので食品ロスが出ないよう注意しましょう」といった普及啓発や使い切りレシピなどの提案が多く、各家庭の創意工夫と意識に委ねる方法となり実際どの程度効果があるのか計り知れない点が課題でもあった。そういった中で、食品ロスダイアリーを記録することで家庭から排出される食品ロスが減少していく効果が実証され、気軽にかつコストも抑えながら実践できる食品ロスダイアリーアプリの有用性を全国の自治体の政策として活用してもらうために、自治体プラットフォームをつくり、政策支援をしていく取り組みを行っている。

また、事業系の食品ロスに対する取り組みも行っている。東京の大手町・丸の内・有楽町(大丸有エリア)は日本を代表する数多くの企業が集積しており、企業の枠を超えて連携し、持続可能なまちづくりを推進しようというプロジェクト、「大丸有SDGs ACT5」が実施されている。このプロジェクトの中の1つに、食品ロスへの取り組みがあり、ごみじゃぱんは、食品ロス対策の専門チームとして参加を予定している。具体的な取り組みとして、外食店のオーナーや有名シェフへのインタビュー調査、三菱地所様や農林中央金庫様の社食の食品ロス実態調査を行いながら、実際の削減に向けた取り組みを企業と連携しながら推進する想定である。さらに、環境省をはじめとする省庁との連携も組み込み、産官学での事業系食品ロスの取り組みを全国的な取り組みへと進化させていきたいと考えている。

食品ロスダイアリーアプリのトップ画面(左)と社食での食品ロス対策の取り組みの様子