環境に関する教育研究とトピックス

環境に関する教育

住吉川河口の環境調査体験(KUトライやる)

内海域環境教育研究センター 特命助教 朝日俊雅 准教授 林 美鶴

現在の日本では、小学校の理科から始まり、中学校、高等学校、さらには大学と、段階を踏んで高度なサイエンスの授業を受けることができます。一方で、学校で学んだサイエンスがどのように実生活に結び付くのかを理解したり体感したりすることは往々にして難しいものです。私たちの研究室では、附属中等教育学校が実施している大学研究室でのインターンシップ「KUトライやる」を継続的に受け入れています。環境問題について、学んだ知識をどう活かすのか、研究者は問題に対してどのようにアプローチしているのか、これまでの日常生活では意識することが少なかったことを職場体験を通じて理解し、あらためて環境についても考えてもらう事を目的に実施しています。

2019年は3名の生徒を受け入れ、住吉川河口の環境調査を実施しました(写真1)。彼らが通学路として接している住吉川でのフィールドワークと得られたデータの解析を使って、研究という仕事を体験してもらいました。

調査は住吉川の下流(阪神魚崎駅近傍)から河口部(住吉大橋橋脚下)の、淡水から海水に変わる汽水域周辺部で行いました。調査データの解析は深江キャンパス(海事科学部)で行いました。淡水域で水中クロロフィルa濃度は<2µg/Lでしたが、塩分2 PSU付近の河口汽水域で最大8 µg/Lとなり、住吉大橋橋脚付近の塩分12 PSU以上の河口域ではほぼ0となっていました。クロロフィルa濃度は植物プランクトン量の指標値で、植物プランクトンはカニやアサリのエサとなります。濁度も、汽水域では河川淡水域の数倍高いことが認められ、河川からの植物プランクトンや有機物が汽水域付近に溜まっている様子が観察できました。また、ゴカイやカニも確認できたことから、この水域の生物活性の高さが伺えます。より塩分が高い河口域ではオナガガモの群れが確認でき(写真2)、エサとなるカニや二枚貝などの小動物や海藻が豊富に存在していることが示唆されました。

データ解析を進める中で、河川淡水と海水の比熱、粒子やコロイドの静電気的斥力、電気伝導度と塩分など、高等学校で学習する物理・化学の話も交えた議論を行いました。このようなサイエンスの知識が日常生活や研究にどのように活用されるか理解が深まったものと思われます。


写真1 住吉川での調査風景
写真2 住吉川河口に群れるカモ。対岸は六甲アイランド