環境に関する教育研究とトピックス

環境に関する保全活動

都賀川のふん便性大腸菌汚染問題を解決するための協力活動(2)

理学研究科 洲崎 敏伸・北川 円・井上 亘、環境保全推進センター 吉村 知里
保健学研究科 中澤 港・重村 克巳・入子 英幸・堀口 範奈
科学技術イノベーション研究科 北川 孝一
地域活動団体「都賀川を守ろう会」

神戸大学の4つの部局にまたがる私たちのグループでは、約4年前より灘区内の地域活動団体である「都賀川(とががわ)を守ろう会」と協力し、六甲台キャンパスの近くを流れる都賀川水系の水質保全活動を行っている。2017年にも本環境報告書に活動報告を行ったが、本稿はそれ以降の活動についての報告である。

都賀川水系は、六甲山の南斜面にその水源を持ち、神戸市灘区の市街地を流れた後に大阪湾に注ぐ、総延長約10kmの二級河川である。その上流部は六甲(ろっこう)川と杣谷(そまたに)川に分かれており、阪急鉄道の沿線で合流し、それ以南が都賀川と呼ばれている。六甲川の上流部には神戸大学六甲台キャンパスで実験用水、トイレの洗浄水、植栽用の散水として用いられるいわゆる「雑用水」の取水口も存在している。都賀川水系の下流部には親水公園があり、毎年夏の川開き後は子供たちの水遊びや散歩の場として広く神戸市民に親しまれている。

ところが近年、夏になるとふん便性大腸菌が増え、水浴に適した水質の基準値(1,000個/100mL)を超えるようになり、川開きにも支障をきたすという問題が起こった。私たちの研究グループは、「都賀川を守ろう会」から相談を受けたことが契機となって結成され、現在に至っている。

「都賀川を守ろう会」の会合で、手作りの採水道具の使用法について説明する同会理事の兵頭 博氏。

これまでの調査・研究では、いくつかの支流を含む都賀川の複数地点でほぼ毎月一回のペースで採水を行ってきた。採水は「都賀川を守ろう会」のメンバーで分担し、会が発案し手作りした採水装置(右図)を用いて行われ、得られた水サンプルは神戸大学の理学研究科と保健学研究科において、それに含まれるふん便性大腸菌群数、塩化物イオン濃度、電気伝導度についての測定を行い、水質の汚染源を特定するための解析を行った。これまでの測定結果より、原因箇所を六甲川に注ぐ支流の一つにほぼ絞り込むことができたので、現在はその支流のどの部分に汚染源があるのかを特定する作業を行っている。汚染源が特定できたならば、神戸市に働きかけることで水質改善のための下水道の整備などの改善措置が可能となるであろう。

河川の水質がふん便性大腸菌で汚染される原因の多くは、下水管の老朽化などの理由で、生活排水が河川に流入することと考えられる。私たちは、ふん便性大腸菌群数と河川水の電気伝導度との間に有意な正の相関があることを見出した。これにより、電気伝導度を測定することのみで、河川水の水質評価がある程度可能となる。この方法を用いれば、誰でも安価かつ迅速に水質の評価ができるので、「都賀川を守ろう会」ではこの方法を用いた水質の簡易評価を今後も採用し、河川汚染の早期発見に役立てていくこととなった。