環境に関する教育研究とトピックス [トピックス]

河内長野市における産・官・民協働による地域防災支援拠点の検討

社会科学系教育研究府(国際協力研究科兼任)特命准教授 紅谷 昇平

2011年の東日本大震災の大きな教訓として、大災害時には、被災地の自治体や企業、市民等が協力し、それぞれの資源を活用しながら災害対応に取り組む重要性が明らかになりました。しかし、立場の違う企業や市民が力を合わせることは容易ではありません。

災害対応模擬訓練ワークショップ
災害対応模擬訓練ワークショップ

大阪府河内長野市では、地域のガス供給会社である河内長野ガス(株)が主導し、耐震性の低い旧社屋の建て替えに合わせ、産官民協働によって地域防災を推進する取組を進めています。2013年度には、行政、地域のまちづくり会議、社会福祉協議会、市民公益活動支援センターが集まり、地域の防災支援拠点のあり方や運営ルール等について勉強会を重ねてきました。私も、当初から勉強会の座長兼アドバイザーとして活動に参画し、東日本大震災の研究成果や教訓を伝えたり、災害対応を考える模擬訓練ワークショップの企画などをして参りました。

大震災が起こると、ガス会社はガス復旧が最優先となり、職員を地域防災活動に充てることはできません。そこでガス会社の新社屋1階(平時はショールーム、料理教室、駐車場等に利用)を防災支援拠点として地域に提供し、その運営は地域組織や市民公益活動団体等が担い、行政がサポートする仕組みづくりを進めています。新社屋の設計段階から地域との連携を考慮することで、敷地の高低差を活かし、道路に面した1階を「災害時地域開放ゾーン」、後背地と社屋2階以上を「ガス事業復旧業務ゾーン」にエリアを区分し、企業活動と地域防災活動の両立を図っています。

さらに新社屋はエネルギーマネジメントシステム(ISO50001)が導入され、新エネルギーが積極的に利用されています。停電・断水が心配な災害時でも、太陽光パネルやコージェネレーションによる発電、井戸水浄化による水供給の仕組みが備えられ、災害支援に活用できます。

これらの活動は、2013年度の経済産業省「事業継続等の新たなマネジメントシステム規格とその活用等による事業競争力強化モデル事業(グループ単位による事業競争力強化モデル事業)」に選定され、企業と地域が連携したユニークな地域防災活動例として新聞や雑誌にも紹介されました。

2014年5月には、防災支援拠点となる河内長野ガス新社屋が竣工しました。実際の施設を使った防災訓練の準備など産官民連携の地域防災活動をこれからも研究者の立場から支援する予定です。

河内長野ガス新社屋1F・地域防災支援拠点
河内長野ガス新社屋1F・地域防災支援拠点